僕の真っ白な本棚。



「僕は、本を読むのが苦手だ。」



どのくらい苦手かと言うと、夏休みの宿題で「読書感想文」が最後の最後まで残るくらい苦手だ。

「自由研究」の「自由」っていう括りくらい苦手だ。



ひともじ、ひともじ。
見落とさないように、読み零しのないように。

言葉を拾う。



頭の中にフワフワと浮かぶ言葉を、意味に変えて、前に拾った言葉と繋げて。

ああ、この人。名前何て読むんだっけ?
このセリフ。誰が話しているんだろう?

さっきの言葉は、ここに繋がっている言葉なのかな?

……いい匂いだな。今日の夕飯は何かな?



………あれ?今どこ読んでいたっけ?



こんな調子で、ちっとも前に進まない。
だから苦手なんだ。



「苦手だったんだ。」



僕の部屋には真っ白な本棚がある。

本棚と言っても、「本棚」として売っていたワケではない、底板がたわむような、軟弱で真っ白な本棚だ。

真っ白な本棚に、真っ白な本が積まれている。



『早く読んで!早く早く!』



何にも書いてないはずの背表紙から、薄っすら透けて見えるのは、そんな言葉かもしれない。

言葉なんか無くても、そこに想いがあるから。きっと、そう見えるのかもしれない。



「僕は、本を読むのが苦手だ。でも…。」



僕を救ってくれたのは、いつか読んだ本だ。
嫌々読んだ、あの本だ。



あの、読むのを諦めなかった本が、今、僕を救ってくれている。

だから。

今、背を向けて寝そべっている本が、僕をいつか救うんだと想う。



なにひとつ、やり遂げられなかった僕は。
「本を読む」って事が、「別の誰かのモノ」だった僕は。

気が付くのが、少し。
遅かっただけで。



もっと「すき」と想えることが、きっとたくさんあったはずの僕だった。


ただ、それだけなんだね。







「僕は、本を読むのが『すき』だ。」










いいなと思ったら応援しよう!

Q_nine
「自分らしく」自立をするため奮闘中です。 気が向いたら応援してくれると嬉しいです(o^^o)♪ ☆☆☆ サポートのつかい道 ☆☆☆ ☆彡 イラスト・動画作成に必要なソフト等の購入費用 ☆彡 作業時間確保 ☆彡 創作の糧になる「体験」や「活動」

この記事が参加している募集