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透明無題日常劇場

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これは日記。すなわち、透明無題の日常を綴る一個の人間の、魂の軌跡、生命の神秘、宇宙的エロスの三文芝居。
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2024年8月の記事一覧

透明日記「あれこれ読んで散歩する」 2024/08/30

透明日記「あれこれ読んで散歩する」 2024/08/30

朝、晴れてる。健やかに晴れてる。楽しくなる。ベランダの物干しに掛け布団を干し、ベランダに影をつくる。影でタバコ。影を抜ける風が秋の感触。台風は秋を運んでいるらしい。

小説を読み終える。まだよく分からんが、すごい濃密な小説だった。知ってる言葉が知らない顔で出てくる。スラスラとは読み進めない。身体がことばに持っていかれる。深い読後感で部屋に倒れる。

むむむと天井を見ていた。リビングから、台風による

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透明日記「風が強くて自然が広い」 2024/08/29

透明日記「風が強くて自然が広い」 2024/08/29

朝、坂口尚の短編集を読む。絵の中に光と風が描き込まれていた。草の感触や匂いまで伝わり、自然に深々とおかされるような気持ちがする。絵も言葉も堪らない。三冊読んで昼過ぎになる。

パンを食う。豚肉と卵を焼いたもの、きゅうり、トマトを挟む。豚肉は微妙だったので、二枚食べようとしたパンを一枚で止めた。

台風のニュースがテレビに流れる。連日、台風情報を目にする。台風とこんなにも関わり合いを持つようになると

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透明日記「ポテトチップスの品評会」 2024/08/28

透明日記「ポテトチップスの品評会」 2024/08/28

種類を問わず、うすしおのポテトチップスが好きだった。ポテトチップスはスナックの王様、王様のすることは何もかもが立派。そう思っていた。いつしか、たまに食べるぐらいの存在になり、いつからか、ポテトチップスの種類が豊富になり、わけが分からなくなった。味、形状、厚み。国産じゃがいも、岩塩、無添加などの文言。

昨日イオンでポテトチップスを三袋買った。豊富なポテトチップスの陳列を前にすると、どれがどうという

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透明日記「見た夢とか近代都市とか」 2024/08/27

透明日記「見た夢とか近代都市とか」 2024/08/27

夢で地図を見た。大阪の難波はどの辺にあるのだろうと、アプリで調べていた。愛知県の下の方の右端に難波はあった。大阪からずいぶんと遠い。愛知県は和歌山の南にある。難波は海沿いの、本州最南端という感じのところにあるらしい。意外と海が近いのかと驚いた。電車で二時間ぐらい掛かりそうだなと思うと、目が覚めた。

起きてしばらく、遠い思い出に浸っていた。思い出は舟で沖に出ているような感じ。揺れている。遠いのに、

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透明日記「恐竜の交尾を想う」 2024/08/26

透明日記「恐竜の交尾を想う」 2024/08/26

朝目が覚めて、まず、たこ焼き屋の行く末を憂うる。

近所の小さなたこ焼き屋は軒並みなくなった。小学生のとき、友達のオカンがたこ焼き屋を始めたが、だいぶ前に店を畳んだ。家に遊びに行くと、たこ焼きの余りを持たされて帰ることが多かった。べちょっとした大きなたこ焼きで、それほど好みではなかったが、ないよりかはいいので、喜んで持って帰っていた。

一つ上の先輩のばあちゃんがやってた10個で100円の、こんま

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透明日記「空がピカピカ、役所に行く」 2024/08/25

透明日記「空がピカピカ、役所に行く」 2024/08/25

空がゴロゴロピカピカ光っててな。これはヤバいことになったなって思うたから、役所に駆けつけたんや。役所は日曜やし夜やしで閉まっとった。しゃあないから、コンビニで缶ビール買うて役所の入り口で飲んどったんや。

役所の砂利をあてに飲んでたらやな、役所を監視してる奴ってのがおんねんな。そいつが来よった。メガネの肥えたおっさんや。「ここで飲むな」「砂利を食うな」とか言いよる。お前じゃ話にならんって、怒鳴った

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透明日記「ただそこに在るものが眩しくて愛おしくて泣く」 2024/08/24

透明日記「ただそこに在るものが眩しくて愛おしくて泣く」 2024/08/24

クーラーを切って寝ると暑くて暑くて目が冷めるけれど、クーラーを点けて服を着込んで寝ると快眠だった。起きたときにいっぱい寝たような感じで、甘い泥に浮かぶように気持ちがいい。泥の快楽。朝のこのまどろみの中に半日を過ごしていたいなあと思う。こんな日にゴミ屋は来るので、生ごみを捨てに行く。

今日は朝から、歴史の本を読んでいた。軍隊の変容と崩壊。これまで、東條英機がリーダーだと、なんとなく思っていたけれど

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透明日記「悩み相談・覚え書き」 2024/08/23

透明日記「悩み相談・覚え書き」 2024/08/23

(耳かきに関する悩み)

「最近、耳の穴の奥の方に、お父さんみたいな人が住んでいると思うと、心おきなく耳かきができません。せっかくの耳かきの才能を活かしきれていないからか、人生に漠然とした不安があります。思う存分に耳かきをするには、どうすればいいのでしょうか。ちなみに、お父さんは存命です。」

「悩ましい相談ですね。耳の中に住むのがお父さんなら、実際のお父さんに言えば済みそうですが、お父さんみたい

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透明日記「洗濯物に生まれ変わるとしたら」 2024/08/22

透明日記「洗濯物に生まれ変わるとしたら」 2024/08/22

夕方の風に洗濯物が揺れている。靴下は小刻みに揺れ、わちゃわちゃとして楽しそうだ。洗濯物に生まれ変わるとしたら、靴下がいい。

洗濯物のネットなんかは最悪だな。義務感で揺れている。バスタオルは大学生みたいに揺れるし、タコ足に仲良く回るタオルは小学生みたいだし。シャツやズボンは社会人。ズボンは責任感を持って揺れている。下着は揺れを楽しんでいないな、アレは。周りに合わせて揺れているけど、楽しくなさそうだ

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透明日記「動物図鑑が家に来た」 2024/08/21

透明日記「動物図鑑が家に来た」 2024/08/21

朝、窓を開けて過ごす。しばらくすると、小学生の頃の夏のような空気が部屋に匂い立つ。リビングはクーラーが点いている。その涼しさがどことなく、小学生の頃の夏だった。部屋が過去みたい。

部屋はむかし、地黒の少年ありけり。日光にまじりて肌を焼きつつ、ことさら黒くなりけり。名をば、コナンの犯人となんいいける。

それはさておき、朝から文章を書くことに気持ちが向いて、長々と、しょぼい食事を挟んで書いていた。

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透明日記「呪文」 2024/08/21

透明日記「呪文」 2024/08/21

浮かれている。暗い飲み屋で、呪文をもらった。

ごくごく短い、七文字の呪文だ。呪文を唱えると、胸のなかに淡い光が込み上げ、顔がゆるむ。ゆるんだ顔から、意識がぽっと抜けていく。

抜けた意識のわずかな隙間を、とてもいい匂いの女が通り抜ける。女は走り抜けるようでもあるし、天女のように宙を飛んで過ぎるようでもある。かと言って、女の姿をはっきりと見るのではない。女のような雰囲気が、頭の中をサッと通り抜ける

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透明日記「月明かりに浴す」 2024/08/20

透明日記「月明かりに浴す」 2024/08/20

曇り空。身体が冷える。クーラーを切る。朝はパーカーとスウェットで過ごしていた。汗ばむぐらいが体調にいいような気がした。

打楽器を振ったり、英単語帳を読んだりして過ごす。他の記憶がない。打楽器と英語でそんなに時間が潰れるものかと、不思議に思う。ご飯は食べていたが、気がつくと昼が過ぎ、三時ごろになっていた。

近代史の本を少し読み、散歩に出かけた。曇りで風はあるが、やや蒸し暑い。しばらく歩くと汗が出

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透明日記「音楽・イライラ・頭の整理」 2024/08/18〜08/19

透明日記「音楽・イライラ・頭の整理」 2024/08/18〜08/19

8/18
昼前に起きた。雲が風にかすれていた。朝食に昨日のたこ焼きを食べ、シスコーンを食べる。ぼやぼや、昨日の日記を書き足したり、タバコを吸ったりする。

朝食を食べて間もないが、パンを主食にベーコンと目玉焼き、昨日の焼き鮭を食べる。人工的な時間感覚。遅起きをなかったことにするかのよう。

絵を描いたりし、日中を過ごしていた。昔に描いた模様に色を付ける。ペラペラの紙に描いていた絵の裏側をB5鉛筆で

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透明日記「園児のように過ごす」 2024/08/17

透明日記「園児のように過ごす」 2024/08/17

昨日の日記。

金曜は飲みに出掛けていた。家に帰り、床に就くと、目が冴えて眠れない。かと言って頭が回るわけでもない。起きようかとも思ったけれど、起きてもすることがない。暗い部屋の布団の上で、黒い靄のように過ごしていた。

何も考えていないようで、ふと何かを思い出し、小さなことで笑い出したり、小さなことを後悔したりする。夜のうちに何度か、口から勝手に歌が漏れ、驚くこともあった。そのうち、起きているの

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