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  • 処方師のシンフォニア

    ただの妄想、虚言な噺 処方師の私と時々君と

  • メラニウムの嘘

    これは、私の最初の盗作

記事一覧

初めましてに思えなかった

広い美術室の大きな窓の近く、太陽の光が眩しすぎるほど差し込んでくる窓際の通路。 そこがあの子の特等席。 名前は知らない。正直、大きなキャンバスと逆光のせいで顔を…

零鵺
1年前
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恋愛対象彼女の独白①

「わたし、恋愛向いてないんですよ」 中学生の時、友達だと思ってた子に告白されたことあるんですけどね わたし、ノリで言ってるんだろうって思って流しちゃって ある日、…

零鵺
3年前
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メラニウムの嘘

初めてその作品を見た時、 本能的に、ただ、本当に 「あぁ、作品にしたい」 そう思った。 おかしな話 だってそうでしょう? もう作品として存在しているそれを 私がどうして…

零鵺
3年前

最初のお客様③

「しょほーしさん、お待たせ!ご要望の夢霧3瓶」 カランコチンと瓶の音をたてながら駆け足で戻って来たアリスの腕には、3つの瓶とハートの箱。 「 …と、これオマケね!」…

零鵺
3年前
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最初のお客様②

ザザァァァァ 勢いよく流れてきたのは大量の水 「あぁ〜これはこれはまた盛大な」軀に持ち上げてもらっていなければ恐らく飲み込まれていただろうその波を素早くカバンか…

零鵺
4年前
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第1話 最初のお客様

「…暇だねぇ…なぁ、軀?」「クルルルル…」 ここは常世と現世の狭間 中界街の32丁目 幽寂 の7番地 中界街には人もそうでないものも受け入れる店がいくつもある。ウチもその…

零鵺
4年前
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処方師のシンフォニア

プロローグ この世には色々な人がいる。 背の高い人、低い人 明るい世界にいる人、暗い世界から出られない人 自分に自信のない人、自分が好きな人 声…

零鵺
4年前
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初めましてに思えなかった

初めましてに思えなかった

広い美術室の大きな窓の近く、太陽の光が眩しすぎるほど差し込んでくる窓際の通路。
そこがあの子の特等席。

名前は知らない。正直、大きなキャンバスと逆光のせいで顔をまともに見たのも数回のその子のことを私は誰より知っていた。
白を基準に淡い色をまるで混ぜ込むように入れて、それを濁すように強い意志の色をのせていく彼女の絵。
どこかいつも儚くて、それでいて悲しくなるほど強いその絵が初めて見た時から離れなく

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恋愛対象彼女の独白①

恋愛対象彼女の独白①

「わたし、恋愛向いてないんですよ」

中学生の時、友達だと思ってた子に告白されたことあるんですけどね

わたし、ノリで言ってるんだろうって思って流しちゃって

ある日、友達に連絡するつもりでケータイみたら

piririririririri!!!

って知らない番号からの電話がかかってきて

えぇ、ソイツでしたよ
その後すぐにメールで告白されまして、
ご丁寧に3通もね、なんで好きになったかとか

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メラニウムの嘘

メラニウムの嘘

初めてその作品を見た時、
本能的に、ただ、本当に
「あぁ、作品にしたい」
そう思った。

おかしな話
だってそうでしょう?
もう作品として存在しているそれを
私がどうして作品にするというのだろう。
でも、私の手でもう1つ作り出したかった
“非公式”の ホ ン モ ノ を。

元々、“そういうの”が好きだった。
モチーフで何かを作りあげたり、
頭の中の世界をただそのまんま形にしたり、
綺麗だと思った

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最初のお客様③

最初のお客様③

「しょほーしさん、お待たせ!ご要望の夢霧3瓶」
カランコチンと瓶の音をたてながら駆け足で戻って来たアリスの腕には、3つの瓶とハートの箱。

「 …と、これオマケね!」
「あぁ、ありがとう…これは何のクッキーだい?」
「それはいつも通り、食べてからのお楽しみ!」
「“お楽しみ”…か。」
アリスはここに来る度にクッキーやカップケーキを持たせてくれる。あまり人が来ない此処は、お菓子作りが好きな彼女にとっ

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最初のお客様②

最初のお客様②

ザザァァァァ

勢いよく流れてきたのは大量の水
「あぁ〜これはこれはまた盛大な」軀に持ち上げてもらっていなければ恐らく飲み込まれていただろうその波を素早くカバンから取り出したビンに入れていく。いっこうにいっぱいにならないビンを見て我ながら流石、なんて感嘆しながら顔を上げると見覚えのある顔と目が合った。
「あ、しょほーしさん!」

「やぁ、アリス来てそうそうすまないね」軽く挨拶すれば声の主は至って何

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第1話  最初のお客様

第1話 最初のお客様

「…暇だねぇ…なぁ、軀?」「クルルルル…」
ここは常世と現世の狭間
中界街の32丁目 幽寂 の7番地
中界街には人もそうでないものも受け入れる店がいくつもある。ウチもその一つ…ただ、客は私が選ぶから何時も閑古鳥が鳴いているけれど。

壁の時計に目をやると、針は既に真上を指していた
「おや、もうこんな時間か」さてと、と立ち上がり準備を始める。毎日のルーティーンだ
「軀!庭の木から幾つか桃を取って

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処方師のシンフォニア

処方師のシンフォニア

プロローグ

この世には色々な人がいる。

背の高い人、低い人

明るい世界にいる人、暗い世界から出られない人

自分に自信のない人、自分が好きな人

声が高い人、低い人

健康な人、病気持ちの人

生きている人、死んだ人

生きたい人、手放したい人

「金持ちだろうが 貧乏人だろうが 欲しいというなら与えてやる。老若男女は関係ない。」

「それが

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