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もし、ビールのコマーシャルがなくなったら。

 まだテレビを毎日、見ている。

 録画して見ることが多くなっていると、コマーシャルを飛ばしてしまうが、うまく飛ばなくて、番組自体も進みすぎてしまうこともあり、それは、CMを見せるための、何かしらの、視聴者が知らない工夫がされているのかと疑うこともある。

 そうすると、改めて思うのが、ビールのコマーシャルの多さだった。

ビールのCM

 最も警戒するタイプは、いわゆる名優と言っていい俳優が出てきて、ビールを飲んで、「うまい」と言うだけではなく、ものすごくおいしそうに飲むCMだ。

 とても屈折した見方なのかもしれないが、そのビールが仮にうまくないとしても、とても美味しそうに飲める能力を持っているのが名優であるのだから、もしかしたら、味に自信がないメーカーほど、「いい役者」を使うのではないか、と疑ってしまう。

 だから、1人だけではなく、2人も3人も、演技が上手いとされる役者が次々と出てきて、おいしそうに飲み干す姿を見ていると、心の中で「ほんとか?」と言っている。

 それに、大量のコマーシャルと、これだけの俳優を起用しているということは、その金額も、ビールに上乗せされているのではないか、と思うと、なんだか、その映像が楽しそうにすればするほど、疑惑がふくらんでいく。

 ただ、そんなことを思っている私は、今はアルコールを全く飲まなくなっている。

制限

 あまり考えもなく、録画されたテレビ番組を見ていたり、夜になってテレビを見ていたりすると、やたらとビールのコマーシャルをやっている、というイメージを抱いていたのだけど、それでも、以前と比べると、そこにさまざまな制限がかけられているのを知った。

「ビール酒造組合などアルコール関連の業界9団体で構成される『飲酒に関する連絡協議会』は、'16年にアルコール関連の広告の基準を自主的に強化。テレビ広告でのど元を通る“ゴクゴク”等の効果音は使用しない、お酒を飲むシーンについてのど元のアップはしないという規制を設けました。

 かつては20歳のタレントがアルコールのCMに起用されることは多々ありましたが、この時の新規制によって“25歳未満はNG”となりました。それぞれ内閣府の指摘を受け、業界団体がそれを受け入れた形です。

また、これも協議会の自主基準としてアルコール商品は“朝5時から18時までテレビ広告は行わない”とされています。

 だから、以前に比べると、表現はソフトになっているはずだし、時間も制限ができているから、広告の量も減っているはずだけど、今も、視聴者としては、大量のビールのCMを放送している、という印象のままだった。

タバコのCM

 いま、不思議に思えるのが、「日本たばこ」のCMだった。

 ひと休み、するというか、一服する、という表現をしていて、どう考えても、ここでタバコを吸う瞬間なのに、吸わない、という時間が続く。

 気がついたら、タバコそのもののCM自体がテレビでは見られなくなっている。

 三浦友和さんや高倉健さん、鹿賀丈史さん、豊川悦司さん――。テレビでは90年代まで、時々のスターが紫煙をくゆらせ、直接的にたばこを宣伝するCMが放送されていました。

 しかし現在、たばこ会社が提供するテレビCMは、JTの「ひとのとき​を、想う。」のような抽象的な「イメージ広告」や、喫煙マナー向上を訴える「マナー広告」に限られます。

 公衆衛生上の大きな問題として、WHOはたばこによる健康被害の防止に努めています。
 これを受け、日本の所管省庁である財務省が2004年に告示「製造たばこに係る広告を行う際の指針」(2019年改正)を発表しました。
 この指針は「未成年者の喫煙防止及び製造たばこの消費と健康との関係に配慮するとともに、たばこ広告を過度にわたらないように行うこと」を目的にしています。

 そのため、現在では、タバコのCMが放送されていない。

 依存性が高いと言われるタバコは、その習慣がある人にとっては、自然にやめるのは難しく、だから、CMの目的があるとしたら、おそらくは、新規参入者向けのはずだった。

 だから、「三浦友和さんや高倉健さん、鹿賀丈史さん、豊川悦司さん――。テレビでは90年代まで、時々のスターが紫煙をくゆらせ」(withnews)る映像が流され、その人たちの共通点は、当時の若い男性にとって、あこがれの存在でもあって、その人たちが「かっこよく」吸う姿を見せることで、タバコを吸い始める人も少なくなかったと思われる。

 そうした映像が流れなくなったことで、時間をかけて、タバコ喫煙者を減少させることに貢献しているように思う。

(「最新たばこ情報」成人喫煙率)
https://www.health-net.or.jp/tobacco/statistics/kokumin_kenkou_eiyou_report.html

現在習慣的に喫煙している者の割合は、16.7%であり、男女別にみると男性 27.1%、女性 7.6%である。この10年間でみると、いずれも有意に減少している。 年齢階級別にみると、30~60歳代男性ではその割合が高く、約3割が習慣的に喫煙している。

飲酒パターン

 自分がアルコールを飲まなくなってくると、勝手なものだけど、「飲酒業界」の変化などにかなり関心が薄くなってくる。

 ただ、この20年間、平均賃金が上がらないという厳しい状況を象徴するように、「第三のビール」が登場したり、安く酔えると言われている9%の缶チューハイが話題になっている。

 どれも、少しでも安く飲みたい。飲まないではやっていられない。そんな空気の反映のように思えるし、銀色の缶チューハイの空き缶は、なぜか、電車の中に置いてあることが多い印象がある。

(1) 第3のビール等の低価格(≒低課税額)酒類の増加、(2)低アルコール飲料の増大とウィスキー、清酒等の高アルコール飲料の大幅な減少がみられています(図1)[1]。一方で、この統計には表れていませんが、アルコール度数9%の缶チューハイのヒット、価格の高いクラフトビール人気などの減少といった逆の動きもみられ、二極分化が進んでいることを示唆しています。

 それは、収入の格差が広がっていることと関係あるのかもしれない。

また他の変化としては、女性の飲酒者の増大もあげられます。厚生労働省の調査[2][3]では、週に3回以上飲酒する習慣飲酒者は、男性では、平成元(1989)年の51.5%に比べ、令和元(2019)年では33.9%に大きく減少していますが、女性では同期間で6.3%から8.8%と逆に増加しています。年代別でみても男性では同期間で全ての年代で減少していますが、女性では30代から70代まで幅広い年齢層で習慣飲酒率が増大しています

 これは、女性の貧困層の増加、という社会的な問題と、本当に無関係なのだろうか。

アルコール依存症が疑われるものが(AUDIT20点以上)112万人、国際的な診断基準(ICD-10)による厳密な診断基準でも現在有病者数が57万人となっていますが[4]、その一方で問題飲酒者として治療を受けている患者数は厚生労働省の患者調査によると、年間4万3千人から6万人程度であり、ほとんどの患者さんが専門的な治療を受けられていません。またコストの面でも2013年の全国調査で労働損失が約2兆5千億円、医療費が約4千億円など全体で3兆7千億円に上ると報告されており[5]、過量飲酒は大きな社会問題となっています。

 こうした調査報告を読むと、アルコールの習慣は、すでに健康を害する恐れが確実に存在するのだから、タバコほどの急速な変化ではないかもしれないけれど、そのうち、アルコールのCMなどに関しては、さらに制限が強くなっていく可能性がある。

もし、ビールのコマーシャルがなくなったら

 だから、近未来には、アルコール飲料のテレビCMなどは一切禁止されるかもしれない。そして、もしも、これだけ放送されているビールのコマーシャルがなくなってしまったら、どうなるのだろうか。

 タバコの喫煙率が時間をかけて、減少傾向が定着してきたように、ビールの消費量も、少しずつ下り坂になっていくような気がする。

 もうアルコールを飲まなくなった人間にとっても、ビールのコマーシャルを見るたびに、俳優が「うまい」と言うごとに、疑いの目を向けているとはいっても、もしも、自分が、今もビールを飲み続けていたとしたら、そうした映像を見て、「ああ、ビール飲みたいな」と思ってしまいそうに見えるし、逆に言えば、そうした欲望を刺激するような映像に触れる機会が減ったら、飲みたい気持ちも、かなり減るのではないだろうか。

 そういえば、今のCM映像に出演している俳優の人たちは、演技に定評がある、という部分だけに、もう若くなくなった自分は注目しがちだけど、考えたら、人気俳優という側面もあるのだから、そのうまそうにビールを飲む姿を見て、「あの人が飲んでいるから、飲みたい」という気持ちをかき立てる目的もあって、それは、これからビールを飲んでくれる新規参入者を増やすためだろうから、こうしたCMが一切なくなったとすれば、若い層の飲酒習慣を持つ人が、さらに減っていくのだと思う。

 それは、アルコールを製造販売しているメーカーからすれば、人口減少の未来のため、それだけで確実に消費量の減少が予測されるのだから、より避けたい事態のはずで、そうであれば、様々な意味での企業努力(サッカーに関連するサポートなど)もあって、ビールのCMがなくなることは、意外と先になるかもしれない。

 ただ、もしかしたら、私のように飲酒習慣がなくなり、我慢しているような感覚でもなくなった人間にとっては、あまり関係なくなったから、ビールのCMに対して、またやっている、と選挙カーのような気持ちになって、だから、その数が気になるだけで、ビールを日常的に飲む習慣がある人にとっては、もっと好ましい映像として映っている可能性はある。

 それに、ビールのテレビCMが一切なくなったら、民放テレビの収入源が減って、テレビ業界が、さらに衰退することにつながる可能性もある。

 そう考えると、ビールのコマーシャルがなくなる未来は、やっぱり、意外と遠いのかもしれない。


(こうした書籍↓も、飲みたくなる刺激になるのだろうか)




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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