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職場の「心理的安全性」を考える

 すでに何年前かも覚えていないが、職場に関して「心理的安全性」という言葉を初めて聞いたのは、世界的に活躍しているというビジネスパーソンが、どこかの壇上で話している時だった。

 ビジネスに関連して聞いたのは、それまで記憶になかったが、心理的安全性という言葉はイメージしやすく、そのビジネスパーソンが、つぶやくように言った内容とともに記憶に残った。

 日本は世界でも、会社組織の中での心理的安全性が、すごく低いのではないか。

 驚くというよりは、それを聞いた時に、納得感とともに、ああやっぱり、と思っていた。

会社の経験

 自分自身は短い会社員経験しかない。
 3年で2社に勤めて、あとはフリーになり10年以上働いて、外側から組織を見ている時間の方が長かったと思う。介護で無職の時代が10年以上のあとに、再び働き始めたのは、資格をとってからだけど、それでも、どこかの組織に常勤として属することもないままだ。

 それは年齢もあるし、最初から無理とはいえ、それでも、正社員として働きませんか?と言われたら、最初に怖さがたつと思う。今の貧乏な状態で、偉そうなことは言えないし、不安はもちろん強いけど、複数の場所で、基本的にフリーとして働き続けたいと考えている。

会社という組織で気をつけること

 どうしてかといえば、会社という組織で、一番気をつけなくてはいけないことを、昔の自分は徹底できなかったし、今の自分も、とてもできないと思っているからだ。

 何人かの会話の中で、不用意なことを言うと、それが差しさわりのある内容であっても(というよりも、あったほうが)、そこで、「誰にも言わないでください」というような前提があったとしても、いつのまにか、みんなが知っていたりする。

 そのうちに、会社という組織に関係する場所では、思ったことを言ってはいけない。少なくとも、上層部の批判(それが正当なものであっても)を発言することは、かなりリスクの高いことだと思うようになる。

 働いている時間の緊張感や不安や薄い恐怖は、そのことによって、より高まってしまうが、会社という組織の中で生きていくには、「思ったことを言わない」が、一番気をつけるべきことだと思うようになった。

 それと並行するように、「上」の人に、会社のためと思って、「この人がこんなことを言っていました」と、秘かに伝えている人がいるらしいと聞いたり、どこまで本当か分からないが、そういう行為をしている人のほうが出世すると、これまで、あちこちで聞いた記憶もあるし、たぶん、今でも、そういう組織は多いのではないか、と思っている。

会社が嫌い

 それでも、自分の経験値は少ないし、あくまで個人的な印象に過ぎないし、会社が、そういうリスクに満ちていると断言できるようなデータもエビデンスもないとしても、それを推測させるような統計は存在することを知った。

 「会社に反感をもっている」「コミットしていない」と答えた人が33%と他国よりはるかに多かった。実に、日本のサラリーマンの3分の1が「反乱分子」という異常事態。9%が必死に船をこぐ中で、33%が転覆させようとしているようなものだ。

 たぶん、今でも、私が少ない経験や見聞で感じたことが変わっていないか、もしくは悪化しているから、こんなに会社嫌いな人が多いのではないか、とも思った。

 この分析では「反乱分子」というような表現がされていて、それは、専門家の分析であるから、こちらが分からない視点を持っているのかもしれないが、個人的な感触だと「反乱分子」というよりは、「不満分子」に近く、とにかく本当は「会社」に関わりたくないといったニュアンスで「会社が嫌い」ということなのではないか、とも思う。

そして、このことと生産性の低さは、無縁とは思えない。


心理的安全性

 心理的安全性とは、(中略)チームのメンバー一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指します。

 こうした要素が会社の生産性を高める、といったことをグーグルが伝えているというが、それは、自分の弱いところも、失敗も見せて平気、みたいなことも含めての「心理的安全性」と知ると、もし、そんな会社があるのだったら、私のような人間でも、一度は勤めてみたいと思わせる。

 そして、そういう組織があるのだったら、やはり生産性が高いのではないか、と素直に感じる。

心理的安全性を高めるために

 会社という組織だけでなく、自分自身は、経営に関しても素人なのだけど、心理的安全性が低いと聞いて、最初に思ったのは、冒頭で書いたように、社内での発言が、筒抜けになってしまうような出来事だった。

 言葉は悪いのだけど、密告文化みたいなものがあると、当然だけど、心理的安全性は低くなると思う。とするならば、それがなくなるだけでも、居心地はよくなるはずだけど、人からみたら「密告」であっても、本人は善意だし、会社のためを思ってといった動機だから、やめましょうと言っても、たぶん、なくなることはない。

 ただ、ここから先は、本当に邪推というか、根拠のない推測に近いのだけど、やはり、こうした企業文化が変わらないとすれば、そうした「密告」的なものを、上司なり、経営者なりが、肯定的に受け止めている可能性はないだろうか。

 私自身は経営者も、上司すら経験がないが、もし、自分が経営側にいたとしたら、社員が何を考えているのか、は理解したいことだと思う。それこそ、「反乱分子」が30%を超える、といった統計を、経営者が知った場合、誰が、そういう要素を持っているのか?を知りたくなるのは、自然な気持ちではないだろうか。

 だからといって、「ご注進」みたいな「密告」を密かに喜んだり、推奨したり、黙認という形で認めてしまうような言動を、経営者側がとっていたら、職場の心理的安全性は日に日に低くなっていき、同時に生産性も下がっていくと言われているのだから、そこは、「知りたい」といった欲望を抑えて、方向転換をしたほうがいいと思う。

 この記事を、経営者や、さらには会社という組織の中である程度以上の力を持っている人が読んでくれる可能性も低そうだけど、もし、読んでいたら、(ほぼ根拠はなくて、すみませんが)明日からでも、試してみてほしいことがある。

 「密告」でも「ご注進」でも、社内で少人数で非公式に話されたことを言ってくる人がいたら、まず取り合わないでほしい。それを黙認という形で、認めてしまうから「密告」や「ご注進」は減らない。

 かといって、その「ご注進」をしてきた人を追い込んだり、罰したりはしないほうがいい。だけど、もし本気で社内の生産性をあげたいのであれば、「その行為は、職場の心理的安全性を下げます。次回から謹んでください」と静かに言い続けるだけで、たぶん、「密告文化」は劇的に減っていくと思う。

組織の一員として心理的安全性を上げるために

 ここからの内容は、さらに、説得力が下がるかもしれないし、組織に無知な人間の、いわゆる「お花畑」と言われそうな話になってしまうけれど、この30年以上、日本がずっと下降し続けていた理由の一つは、「仕事は厳しいもの」「会社は戦いの場だから、敵ばかり」といったことばかりが言われ過ぎて、それを前提に考えすぎていたから、だと思う。

 つまり会社組織を「変わらない」ものと見すぎたせいで、実際に「変わらない」ことに拍車をかけていたようにさえ感じる。

 こうした↑調べ尽くされ、考え抜いたと思われる資料があるので、これを読めば、自分が書いてきた、ここまでのことも、これからのことも無意味だと思ったりもするし、ここにも「個人として、心理的安全性を高めること」も具体的にあげられている。実行することができれば、たぶん本当に変わるようにも思う。


 それでも、未熟ながら、少し付け足したいこともある。たぶん、日本独自と思われるような、ドメスティックな要素を考えたいのだと思う。

 最初に、会社の心理的安全性は個人でも高めることが可能と思い、そのために、自分の言動を少しずつ変えることを決めて、実際にやってみることを覚悟する。

 次に、会社の中に「密告文化」があるとすれば、距離をとる。

 心理的安全性を高めるのは自分のためでもあるが、真に会社のためであるということを、発言を求められるような機会に言ってみる。

 少しずつでも試して、もし、興味を持ってくれた人がいたら、協力してもらい、その行動をオープンにしながらすすめる。

 自分の身の安全が、この行動によって脅かされたら、いったん中止し、何が悪かったのかを検討し、時期を見て、再開させる。

 こうしたことをいったん試みたら、そういう人、と思われるので、元に戻ることはできない、と思う。一回試みて、完全にやめたら、そのあとに「いじめ」られる気がする。始めたら、休みながらでも、やめないほうが、逆に自分の安全性は高まるのではないか。


 以上のことは、組織をロクに知らない人間の戯言かもしれないし、その自覚もある。それでも、何もしないよりは、少しはマシだと思うし、働きながらだと負担は大きいとはいえ、こうしたことを少しでも始めると、社内全体のことも考えるようになり、自分自身も変われるように思う。

 今の日本の社会には、「何も変わらない」と諦めさせる空気が満ちているように思う。それは、コロナ禍で加速しているから、その中で、何かを始めるのは、さらにしんどくなるから、申し訳ないと思いつつも、こういう混乱の時期だから、「変えられる」可能性もあるかもしれない、と考えた。

 だから、未熟と思いつつも、不完全でも考えを形にすることで、読んでくれた、もっと優秀な人が、これを踏み台にして「心理的安全性」が高い組織を作ってくれることを願いながら、この記事を書きました。



(他にもいろいろと書いています↓。読んでもらえたら、うれしく思います)。


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