マガジンのカバー画像

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話

41
息子が急性散在性脳脊髄炎を患い倒れた急性期から完治を目指している現在までの経過をまとめています
運営しているクリエイター

#子育て

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後5

退院後初めての減薬の日がきた。

入院中に3食後から朝夕食後へ減らした服薬を、朝食後だけにする、というものだ。

退院日に医師から『退院からこの日まで健康状態に問題が無ければその予定で進めるように』と指示を受けた。

今長男が元気に過ごしているのは、薬によって自分の免疫を抑え込めているからで、薬を減らせば途端にまた脳や脊髄に炎症が出来てしまうのでは無いか…。

当時は薬を減らすと言われる度にそんな

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

再び保育園に通い始めて2週間。

その間も体調に変化はなく、穏やかに日々がすぎていった。

この日は長男が出たがっていた発表会の当日だった。

本当だったら誰よりも見に行きたかったのだが、今年は感染症拡大防止の為、参加出来るのは保護者一名のみとなっていた。

さらにタイミングが上手くいかず、寝る時だけはママがいないとダメな次男が、発表会開始直前にお昼寝を始めてしまった。

直前までどちらが行くか悩

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

長男が倒れてから21日目。

この日、主治医やリハビリ担当の医師等からの診察を受け、翌日の退院許可が出た。

長男は前日に母親との面会を満喫した為、この日は父親に目一杯甘えて過ごしたとのことだった。

私と次男も穏やかに2人きりの時間を楽しみ、翌日まで何事もありませんように、と心の中で祈った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

長男が倒れて22日目。

夜中に急変の電話がくるのでは

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

長男が倒れて19日目。

前日に脳波計測を行い、炎症があった脳の右側はまだ痙攣と思われる怪しい波が計測された。

しかし、現在服薬している薬で症状は抑えられている為、影響が出たら服薬量を戻すという前提のもと、予定通りこの日の朝の服薬分から減薬を開始した。

前日、保育園の園長先生からお見舞いを頂いた。

そこには絵本が大好きな長男のためにたくさんの絵本と、長男のクラスのみんなと担任の先生からのメッ

もっとみる

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話31

遡ること10日程前。

長男が目覚め、まだ寝たきりで食事は取れないけれど、少し会話が出来るようになったころのこと。

PICUのベッドサイドで長男に絵本を読んでいると、主治医の先生が来てくれた。

「お母さん、ちょっとお話したいことがありまして。」

少し改まった雰囲気で会話が始まった。

「実は、ADEM(急性散在性脳脊髄炎の略称)を含めたいくつかの疾患で、再発しやすい抗体というものが発見されて

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が倒れて16日目。

この日、やっと主治医の先生に会うことが出来た。

この頃になると私も夫も仕事に復帰しており、一日おきで面会に行っていた。

加えて面会時間は限られており、外来や急患対応もある主治医の先生と会って会話が出来るタイミングはあまり多くは無かった。

それでも、先生は出来る限り時間を取って病棟に顔を出してくれ、長男に声をかけてくれていた。

「長男くんわがままも言わないし、すごく

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が倒れてから15日目。

面会に行くと、理学療法士の先生がきてくれた。

熱は変わらず37度5分と高めだったが、本人は元気そうだった為、病棟外に出る許可を得た。

敷地内に公園のような屋外のリハビリ施設があり、そこで遊びながら動きを見せて欲しいと言われた。

長男は入院して以来初めての外の空気だった。

冬の寒い風が吹き始めた頃だったが、まだ日差しは暖かく、カーディガンと心拍計測器を入れたポシ

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が倒れてから14日目。

この日は最初に夫が面会し、私は次男と病院近くの公園で遊びながら待っていた。

その後交代の連絡を受け、夫とバトンタッチ。

面会に行くと、昨日まで長男が使用していた個室には別の患者さんが居た。

前日に私が帰宅したあと、大部屋へ移動になったらしい。

大部屋は4人部屋で、長男ともう1人、長男より1歳か2歳年上と思われる少年が居た。

よろしくお願いしますと挨拶をして、

もっとみる

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話27

息子が倒れてから13日目。

一般病棟に来てから初めての土曜日だった。

看護師さんの人数も少なく、今まで毎日組まれていたリハビリや検査も無かった。

そんな静かな午前中を過ごした長男は、私が面会に訪れると同時に「寂しい」と訴えた。

長男が倒れてから約2週間。

1週間前の土曜日はやっと目覚めたばかりの長男の様子に気を取られ、病院内の雰囲気を見る余裕は無かった。

この日の病棟内は確かに静かで、

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話26

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話26

息子が倒れて11日目。

この日夫が面会に行くと、数人の大人に囲まれて、身体の動きを見てもらっている長男がいた。

廊下を歩いたり、室内で出来る検査をしていたようだった。

歩いている長男の様子は、確かに左脚のほうが弱っていて、ぴょこんぴょこんと左脚を引きずるような動きだったそうだ。

それでも、少しずつ動きたいという気持ちが出てきたのか、走ろうとしていたとのことだった。

その後はフルフラットに

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話25

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話25

『麻痺が残るかもしれない』

この言葉にショックを受けなかったとは正直言えない。

けれど、目が覚めなかった頃に感じていた不安に比べれば、目標が明確に思えた。

幸い会話に問題は無く、食事も取れるようになってきている。

顔面への麻痺は感じられなかったし、排泄も、ベッドの上ではあったが、オムツでは無く自分のタイミングできちんと出来ていた。

もちろん本人からすれば、今まで出来たことが突然できなくな

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話24

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話24

病棟に入ると、ナースステーションからほど近い個室を案内された。

そこにはベビーベッドを大きくしたような、柵で囲われた金属製のベッドに入った長男が居た。

ひどく不安気な長男の様子に、あえて明るく声をかける。

「長男!ママきたよ!長男がいっぱい頑張って元気になってきたから、今日から一般病棟に来られたんだって。やったねぇ!」

私の顔を見ると、ホッとしたのか仏頂面がみるみる泣き顔に変わっていった。

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話23

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話23

長男が倒れて10日目の朝。

突然電話が鳴った。

長男の入院している病院からだった。

胸が痛いと思うほどの鼓動を感じながら、急いで電話に出る。

『おはようございます。

昨日からの様子を見て、問題無さそうでしたので、本日一般病棟に移ることになりました。

お立ち会い頂きたいのですが、よろしいでしょうか?』

長男の体調になにかあったのかと思い電話に出た為、真逆の内容に頭がうまく働かなかった。

もっとみる
息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話22

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話22

カウンセリングを終えて、帰路につく。

あの後、不安に感じていた部分を話し終えると、

入院患者本人へのケアももちろん必要であることや、治療の合間を見ながら本人の気持ちを吐き出す時間を作る予定だと説明してくれた。

ただ、一番安心出来るのはやはり家族との時間だということ、両親からも同じように時間を取ってあげるようアドバイスを受けた。

帰宅後、家族に長男の様子を伝える。

少しずつ、着実に回復して

もっとみる