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男性は約7割が600万円以下──男女別・年齢別平均賃金を調べてみた

このブログでは、働く人の給与について何回か書いています。
大きな反響があったのは、「日本人の年収、中央値は423万円」という記事でした。

そこで今回は、男女別・年齢別の平均賃金と賃金分布を調べてみました。


年齢で給与が上がるのは男性正社員だけ

まずは男女別、年齢別、正社員か非正規かで分けた賃金です。

出典:令和4年賃金構造基本統計調査(厚労省)

こうして見ると、年齢に応じて給料が上がっていくのは男性の正社員のみで、女性は正社員であっても、30歳代後半以降ほとんど給料が変わらないのがわかります。
こちらの記事「女性【正社員】の賃金は、男性【正社員】の約7割」で触れた通りですね。

給料が高いのは産業別に、
・電気・ガス・熱供給・水道業(男女正社員平均412万円)
・学術研究,専門・技術サービス業(男女正社員平均394万円)
・教育,学習支援業(男女正社員平均393万円)

で、逆に給料が安いのは産業別に、

・宿泊業,飲食サービス業(男女正社員平均285万円)
・運輸業,郵便業(男女正社員平均294万円)
でした。

宿泊業・飲食サービス業、運輸業・郵便業は、正社員と非正規社員との給与格差が比較的大きい産業でもあります。

私はライターとして飲食店や宿泊施設の取材に行くこともあるのですが、現場の最前線で働いているのは非正規の女性スタッフであることも多く、全般的にもっと待遇が良くなればいいのにといつも思います。

婚活女性「希望年収は500万円以上」は妥当?

それでは、男性の賃金分布を見てみましょう。

男性の賃金分布

出典:令和4年民間給与実態統計調査(国税庁)

これを見ると、実に男性の給与所得者の約7割が600万円以下だということがわかります。シングルインカムで500〜600だと、子どもを私立に通わせるのはちょっときついなという感じでしょうか。

ちなみに、最近の婚活女性は「(男性の)希望年収は500万円以上」というのが定番らしい(?)のですが、私がアラサーの頃はもっと高かった記憶があります。
ここ10年で世の中の相場が下がったのかもしれません。

それでも結構ハードルが高いですね。

女性の賃金を見てみましょう。

女性の賃金分布

出典:令和4年民間給与実態統計調査(国税庁)

女性は、5割強が年収300万円以下です。
女性の半数は非正規労働者。短時間労働だけでなく、派遣社員として1日8時間働いたとしても、一般事務ならば250万円前後。
非正規で年収300万円を超えるのは、本当に一部だと思います。

ついでに、自営業・個人事業主の年収も見てみましょう。

自営業の賃金分布

出典:令和3年申告所得税標本調査(国税庁)

これは「各種所得の金額のうち事業所得の金額が他の各種所得の金額の合計額より大きい」所得なので、不動産収入などは入っていません。
また、会社員として給与をもらっていて、副業で月に数万円ほど稼いでいます、というパターンも含まれていません。

自営業は約7割が500万円以下なので、会社員よりもキツいですね。一方でものすごく稼いでいる人もいます。

給料が低いのは自己責任なのか?

このグラフを通して伝えたいのは、
「給料が低いのは自己責任なのか?」ということ。

ここまで多くの人の給料が低いのは、社会の仕組みに大きな原因があるからではないでしょうか。

日本人の給料が安いままになっている「仕組み」はさまざまですが、「給料が低いのは自分の努力が足りないからだ」という自己責任論について一言申し上げたい。

・学生時代に勉強しなかったのが悪い
・就活で頑張らなかったのが悪い
・いい会社を選ばなかったのが悪い
・いい会社に転職しないのが悪い
・スキルを身につけないのが悪い

これは本当でしょうか?

別の記事で書く予定ですが、日本は大企業と中小企業では平均賃金に150万円以上の差があります。
そして、日本の企業のうち99.7%が中小企業。

日本は他の国のように、中小企業から大企業への転職が容易ではありません。
大企業に就職するチャンスは、「新卒」のゴールドバッジがあるときが最大なのですが、そこで重視されるのは専門性や資格ではなく、雑な学歴フィルターと「コミュニケーション能力」です。

日本はスキルと給与が相関関係にない

そして、日本は資格(国家資格を除く)やスキルが給料アップに結びつきにくいと思いませんか?
本当の意味で「食える」スキルって何だろう? といつも悩みます。

例えば英語。

これは語学を勉強している人ならば頷いてくれると思うのですが、英語を身につけたとしても、増えるのは給料ではなく仕事です。

外資系に転職できるなら、まあ少し年収アップを狙えるかな…という感じですが、日本企業では英語能力が求められるポストでも、それほど給料が高くない。
また英語ができる主婦がパートで働こうとした場合、英語力必須の仕事でもせいぜい時給1,200〜1,300円程度です。

※「英語はできる人が多いからじゃない?」という人がいるかもしれませんが、TOEIC900点ホルダーは、約200万人いるTOEIC受験者の上位5%程度なんですよ。日本人全体からしたらとっても少ないです

こういう社会で、「食えないのはお前が悪い」とは言えないと思います。

そして、すべての人が給料だけのために働いているわけではない。
自分のやりたいこと、やれること、自分の強み・弱みと相談しつつ、給料含めて納得できる場所を選ぶという人がとても多い。

ならば、多くの人が「トータルで考えて、この給料ならまあいいだろう」「家族を養えるかな」と感じる給与水準になるよう、社会全体が変わらなければならないのではないでしょうか。

大企業だけでなく、中小企業に勤めている人がそう思えるように、です。

こういう議論がなぜ大手新聞やテレビでされないのか? と疑問なのですが、新聞記者とかTV局の社員の給料は軽く1,000万円を超えているので…。

「ふつう」の感覚からかけ離れてしまっているのかなと思います。



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