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#連載小説
【連載小説】発砲美人は嫌われたくない_7
騒ぎは加速度的に大きくなり、いよいよこれはただごとじゃない、と思うようになった。
ただごとじゃない、といえば体を密着させたミサキさんもそうだ。煙のせいで視界不良も甚だしいが、人間の体温はわかる。
「一度、出口のほうに行きませんか?」
ミサキさんの提案には賛成だが、出口がどこなのかわからない。他の人たちも同じようで、バタバタと動き回っている様子はない。何も見えないのは不安だけど、動くほうがもっ
【連載小説】発砲美人は嫌われたくない_6
僕は腹ばいになったまま、あたりの様子を探った。
先ほどの破裂音は尋常ではなかった。が、あいにく僕はこのところ尋常ではないこと続きでなにが尋常かわからなくなっている。こういうときこそ頭をリフレッシュするための休暇が欲しいと思うのが人情だが、この世は無常。トラブルと修羅場は立て続けにやってくるものと相場が決まっている。
「ど、どうしましょうか」
ミサキ、と名乗られたのが名前なのか名字なのかもわか
【連載小説】発砲美人は嫌われたくない_5
スエヒロくん、と鱒沢さんの声が飛んできて、僕の背中が上下動した。
「ごめん、驚かせたかな」
いえ、と曖昧に返事をしてパソコンの画面をチェックする。大丈夫、変なブラウザは立ち上がっていない。
「出張に行ってほしいんだけど」
「出張ですか?」このご時世に、とい言葉を吐き出す寸前で噛み砕く。「オンラインではダメなんですか?」
「クライアントがその手の機械に疎いらしくてね。使い方を覚えてくださいとも、
【連載小説】発砲美人は嫌われたくない_2
ぱしん、ぱしん、と残業つづきの体にムチを打つ。隅をホチキス止めした資料を抱えた僕は、やっとの思いで会社の非常階段を上り終えた。
といっても、資料はものの6人分で、上った階段はたったの3階だ。
どちらもそう多くない。問題はそれが定時を過ぎてから与えられたタスクであることと、そういう仕事の振られ方が常態化して、僕の体がこってり疲れ切っていることにある。
ひとつひとつの仕事は小さいが、終わったそ