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#詩のようなもの

蒼き花束

蒼き花束

何度雨に降られようとも、何度運命に見放されようとも、それでもずっと音楽は続いた、それでもずっと、私たちの生活は続いてきた。

さよならの数だけ出会いがあった。
サヨナラだけが人生だけど、そこにはそれだけの出逢いがあった、サヨナラだけが、出逢いだけが、それでも音楽は続いてゆく、私たちの生活は続いてゆく、もう逢えない人、逢わない人、その数だけ私は年を重ねてきた、その数を数えている時間だけが私の今に意味

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揺らぎの狭間で

揺らぎの狭間で

“きみ”と“彼”とでは解像度が違う、その揺らぎの狭間で恋をしていたい。空気は冷たいのに春の匂いがするし、北風も心なしか少しだけやわらかくなった気がする。2月の冷たい春風、明日までの払込票、どれだけ探しても片方しか見つからないイヤリングと靴下、結局いつもお気に入りのセーターしか着ないからずっとクローゼットの奥に仕舞われたままの冬服たち、折り合い、妥協、いつまでも出しっぱなしの扇風機、30℃の冷房、蠢

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透明な屍体

透明な屍体

飛行機に乗った時、私はかみさまになれた気がした。
上空から眺めるあの街の灯りひとつひとつに生活があり命があり、私もこの灯りのひとつであるのだと思うと自分が普段見ている世界がどれだけちっぽけなものであるのかということに気付いちゃったんだ。同時にこの広い世界の中で君に出会えたことがどれだけ奇跡であるかということにも気付いてしまったんだ。人が一生のうちで誰かと出会う確率は0.0004%とか誰かが言うから

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夜に溶けるわたしの身体、きみの欠片

夜に溶けるわたしの身体、きみの欠片

眠りにつく前の朦朧とした意識の中で思考がぼやけて浮遊してゆく感じがすき、わたしときみの言葉がだんだん絡まり合って溶け合って、最後にはnの音しか出せなくなっちゃうくらいにまで知能が低下してゆく感じがすき。夜だけは、融解と昇華が許される気がする。わたしがこの星に固体として存在していなくても誰にも責められない気がする。
AM2:00、街は海に沈む。わたしをまるごと飲み込む水が、わたしの耳を塞いで、わたし

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透明な冬を白く染め上げ、

透明な冬を白く染め上げ、

冬、気温と体温の差異で白く染まる息を見るたびに生きていることをつよく実感させられる季節。この季節になると私はよく生死について考える。冬はどの季節よりもひとりひとりが地に立って生きているような気がする。一人一人というよりは、独り独りという感じだし、生きているというよりは、みんな必死に生き延びているという感じで。人々が生に全うしていて、ひとの帯びる熱と生命力を感じるこの季節が好き。
空気の冷たさの中に

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