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揺らぎの狭間で

“きみ”と“彼”とでは解像度が違う、その揺らぎの狭間で恋をしていたい。空気は冷たいのに春の匂いがするし、北風も心なしか少しだけやわらかくなった気がする。2月の冷たい春風、明日までの払込票、どれだけ探しても片方しか見つからないイヤリングと靴下、結局いつもお気に入りのセーターしか着ないからずっとクローゼットの奥に仕舞われたままの冬服たち、折り合い、妥協、いつまでも出しっぱなしの扇風機、30℃の冷房、蠢く先で死滅、生命の匂いと歌われているソレは死の匂い。友人のやわらかい文章が好き。言葉のうみの中で解像度が上がったり下がったり、浮かんだり沈んだりするその感じが、春の中で緩やかに押しては返す平穏と不穏の波の具合に似ているなと思った、なんとなく。その波の、その揺らぎの狭間で、わたしたちは息をし、歌い、泣いては笑って生きている。

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