2020/俳優の現在地

2020年5月~7月。主に劇団に所属し、地域を拠点に継続的に創作活動をしている俳優たち20名に電話でインタビューを行った。これはその記録である。 インタビューアー/大堀久美子(編集者・ライター) 企画/永山智行(劇団こふく劇場)

2020/俳優の現在地

2020年5月~7月。主に劇団に所属し、地域を拠点に継続的に創作活動をしている俳優たち20名に電話でインタビューを行った。これはその記録である。 インタビューアー/大堀久美子(編集者・ライター) 企画/永山智行(劇団こふく劇場)

    最近の記事

    冊子「2020/俳優の現在地」発売

     noteで連載してきました「2020/俳優の現在地」の冊子版を発売することにしました。  内容はnoteと同じですが、ウフラボの平野由記さんによる装丁で、手にとっていただくことで、じっくり読んでいただける素敵な冊子になりました。  ぜひお読みいただければと思います。    「2020/俳優の現在地」  企画/永山智行   インタビューアー・執筆/大堀久美子  装丁/平野由記(ウフラボ)  A5サイズ全67ページ  1,000円 【ご注文はこちらから】  注文を受けてか

      • あとがき

         大学を卒業して出版社に勤め、4年3か月で退社。その後、どこにも所属することなく個人で、いろいろなものごとや人を取材させていただき、編んだり書いたりの仕事を続けて来た。数えてみると今年が25年目だ。  学生時代は舞台照明を主に、舞台の仕事をするサークルで活動しており、個人になってからの仕事の主題も自ずと舞台芸術が中心に。一つの契機は今企画の文中にも登場する、青森の劇団弘前劇場との出会い。以来、国内各地の劇集団や舞台芸術に強く惹かれるようになり、方々に出掛けては頼まれもしない取

        • 2020年5月/11月 西藤将人

          手放すことで身を軽くし、先へと手を伸ばす。 西藤将人 劇団ハタチ族(島根県雲南市)  この取材以前に、西藤将人と直接の接点があったのは二度。最初は仙台の演劇祭のクロージングイベントの場で、次は京都に国内各地の民間小劇場の関係者が集まるミーティングだった。そこで交わした言葉から受けたもの、周囲の人々の語る彼の印象は「驚くべきエネルギーのある人」「アツい」「がむしゃら」など多々あるが、電話インタビューを通して筆者が強く感じたのは、西藤の「問題意識の高さ」だった。 「2011

          • 2020年7月 広田ゆうみ

            (撮影:西岡真一) 「小さなもうひとつの場所」への通路になる。 広田ゆうみ このしたやみ 広田ゆうみ+二口大学 (京都府京都市) 「中学生の頃、別役実さんの童話を読んだのがすべての始まり。当時は言語化できませんでしたが、“ここには世界の成り立ちが書かれている。私はこういう物語を探していた!”と叫びたくなるような感覚だったのだと思います。どの物語も淋しくてヘンテコで面白くて、そしてとても美しい。あの頃の私は世界とあまり仲良くできず、日々淋しくて恐ろしいと感じながら過ごして

            2020年6月 柴田智之

            演劇とは、 僕という可能性の中にある「星」を繋ぐこと。 柴田智之 Atelier柴田山(北海道札幌市)  初めて観た作品の、あまりの要素の多さに圧倒された。音楽、ダンスと身体表現、人形とその仲間たち、オブジェというか美術作品、強い言葉と衝動、そして感情。それらが混然一体となった小宇宙の中で白塗りの柴田智之の顔が、声が、生身が躍動する。そこに宿るのはアングラの稚気と知性、美術の技法、舞踏の哲学、時々医科学。間違いなく舞台芸術なのだが、演劇でも舞踏でもない、柴田作品だけの新し

            2020年6月 木内里美

            演劇を通して たくさんのお客様に「笑い」を届けたい。 木内里美 The ちゃぶ台(熊本県大津町) 「外出が難しい期間中は、結構過去をあれこれ振り返ったりもしたんです。東京で所属していた、かもねぎショットの代表・高見亮子から本を紹介するバトンリレーが回って来て。“コレは断れん”と、Facebookに投稿なんてしたこともなかったのに必死に送って(笑)。その時に高見と話したことで、回顧的な感覚になっていろいろ思い出したんでしょうね」  取材開始から10数分、木内里美との会話の

            2020年7月 松本 恵

            演劇の表と裏、両面の「要」を担う言動一致の人 松本 恵 F‘s Company(長崎県長崎市)  演劇作品を世に送り出すまでには膨大な仕事があり、各種専門家もいるが、小さな劇集団では俳優や劇作・演出家が職域以外も兼務することが多い。中でも最も広域かつ重要な仕事を担うのが制作部門。創作から上演まで全体の流れを把握・調整しながら、劇団の内外を繋ぎ、観客を心地よく迎え、送り出すため心を砕く。経理や書類作成も担当する場合が多く、間違いなく劇団にとっての女将や番頭と呼ぶべき「要」の

            2020年7月 小菅紘史

            美しい雲の流れに思考が180度転換してしまった。 小菅紘史 第七劇場(三重県津市美里町)  インタビューという対話は、その過程で取材者と被取材者共に、話す前までは持ち得なかった考えや、言動の理由に気づかせてくれることがある。小菅紘史が過去を遡る過程で何度か発した「あぁ、繋がって来た」という呟きは、足場を確かめつつルート取りする“記憶の登山家”のようだった。  建築士と美術教師の両親からアートやアウトドア体験を存分に与えてもらった幼少期。シャイで常にクラスを傍観し、グループ

            2020年6月 安部聡子

            (撮影:片山達貴) 一度、多くを抱えてから投げ出して“空っぽ”になる。 安部聡子 地点(京都府京都市)  地点の、作品の佳境であろう場面。安部聡子が膨大な台詞を、驚異的な速度と正確さで舞台上に放つ。そこから想起されるのは、「生きた楽器」のイメージだ。奏でるものと鳴り響くものが一体となり、舞台に根づいて遥か高みに言葉と音色を強く穿ち、同時にそれらは観客の耳目にも刻みつけられる。自身を、虚と実を結ぶ一本の管とするその強靭な在り様に、客席で圧倒されたのは一度や二度のことではな

            2020年5月 赤澤里瑛

            演劇は折々の自分と仕事や環境を繋げるために 必要なもの。 赤澤里瑛 世界劇団(愛媛県東温市)  赤澤里瑛が所属する「世界劇団」は、愛媛大学医学部の演劇部OB・OGを中心とした医師と医学生からなる劇団だ。赤澤は精神科の、発達に偏りがある子どもたちに関わる「児童精神」を専門とする医師であり大学院生でもある。感染症拡大のため、2月末から4月後半までに行うはずだった、劇団初の4都市ツアー公演は延期に。医師としては、学校などに行けずストレスを募らせる子どもたちのケアに当たっている

            2020年6月 阪本麻紀

            (撮影:松原 豊) 堅牢な層を成す葛藤、苦悩、決断、決別を基盤に 阪本麻紀 烏丸ストロークロック(京都府京都市)  ほぼ「はじめまして」の方から格別のおつきあいまで、今シリーズに協力いただいた俳優陣との距離感は、それぞれに異なる。その中にあって阪本麻紀は作品を観た数も、取材やそれ以外で言葉を交わした時間もかなり長く多い。と思っていたのだが、いざ話し出すとザクザクと初耳エピソードが飛び出して来て驚かされた。  幼い頃にピアノを習い始めて音楽で身を立てようと思っていた頃の

            2020年6月 小濱昭博

            (撮影:岩渕 隆 重力/Note「LOVE JUNKIES」より) 始まりは目の前の人を「ちゃんと見る」こと 小濱昭博  短距離男道ミサイル チェルノゼム(宮城県仙台市)  小濱昭博は憂いている。いや、腹を立てていると言うべきだろうか。予期せぬ感染症の流布で明るみに出た、自身も身を置く演劇や舞台芸術業界の脆弱さに。それを率いる上の世代の鈍感さに。ひいてはこの国と人との中で渦巻く大きな歪みに。けれど、その憂いや憤りに倍加する熱量で、自身が関わる近しい人たちを労わり、繋が

            2020年6月 齊藤頼陽

            鳥取に来たことで演劇が生業として認めてもらえた 齊藤頼陽 鳥の劇場(鳥取県鳥取市)  立て板に水、とはこういうことか。  国内各地の地域演劇を牽引する俳優にインタビューするこの企画では、現状に加えて過去に遡っての出会い、意志や決断の話を訊く時間が多い。しかも齊藤頼陽とは言葉を交わすこと自体初めて。緊張はむしろ取材者が勝っていた気がするが、こちらの最初の問いに答え、演劇を始めた大学時代から後に「鳥の劇場」芸術監督となる中島諒人との出会い、東京から鳥取に拠点を移すまでを淀みな

            2020年6月 佐藤隆太

            テーマは「いかに自分をなくすか」 佐藤隆太  シア・トリエ ロメオパラディッソ(福島県福島市)  佐藤隆太の観劇初体験は、母が見せてくれた劇団飛行船のマスクプレイ(ぬいぐるみ)ミュージカル。そこで舞台や演技の楽しさを知った彼は、音読の授業で棒読みする同級生の芝居心のなさに苛立ちを感じ、中学3年時には音楽の授業から派生した文化祭の出し物・ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』に出演。トラップ大佐役で華々しい初舞台を飾った。 「親父のスーツを借り、当時から老け顔だった僕

            2020年5月 森岡 光

            (撮影:藤井真宏写真事務所) 多くの「心」と「手」が結び合い演劇をつくる 森岡 光 不思議少年(熊本県熊本市)  小動物、ただし肉食系。妙齢の女優をつかまえてなんだが、愛称ピッピこと森岡 光に対する(個人的な)印象を一言で表すとこうなる。すばしっこく動く身体、くるくる変わる表情、声も役ごとに様々な色彩を帯び、何より目に宿る強い光が観客の視線を強く惹きつける。そうして彼女を見つめるうち、「食われる!」と思う瞬間が筆者にはあるのだ。ヘビに睨まれたカエル、的な? もちろん、そ

            2020年5月 貴島 豪

            (撮影:加藤孝) 「舞台上で生きる」ことに集中するため準備する 貴島 豪 SPAC 静岡県舞台芸術センター(静岡県静岡市)  毎年GW時期に、貴島豪の所属するSPAC 静岡県舞台芸術センターは、静岡芸術劇場や舞台芸術公園、駿府城公園なども会場にする「ふじのくに⇄せかい演劇祭」を主催している。だが今年は新型コロナウイルスの拡大を受けて実施を断念。映像やトークの配信メインのプログラムに急遽全面改訂した「くものうえ⇅せかい演劇祭2020」を敢行。芸術監督・宮城聰の決断&企画力