2020/俳優の現在地

2020年5月~7月。主に劇団に所属し、地域を拠点に継続的に創作活動をしている俳優たち…

2020/俳優の現在地

2020年5月~7月。主に劇団に所属し、地域を拠点に継続的に創作活動をしている俳優たち20名に電話でインタビューを行った。これはその記録である。 インタビューアー/大堀久美子(編集者・ライター) 企画/永山智行(劇団こふく劇場)

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冊子「2020/俳優の現在地」発売

 noteで連載してきました「2020/俳優の現在地」の冊子版を発売することにしました。  内容はnoteと同じですが、ウフラボの平野由記さんによる装丁で、手にとっていただ…

あとがき

 大学を卒業して出版社に勤め、4年3か月で退社。その後、どこにも所属することなく個人で、いろいろなものごとや人を取材させていただき、編んだり書いたりの仕事を続けて…

2020年5月/11月 西藤将人

手放すことで身を軽くし、先へと手を伸ばす。 西藤将人 劇団ハタチ族(島根県雲南市)  この取材以前に、西藤将人と直接の接点があったのは二度。最初は仙台の演劇祭…

2020年7月 広田ゆうみ

(撮影:西岡真一) 「小さなもうひとつの場所」への通路になる。 広田ゆうみ このしたやみ 広田ゆうみ+二口大学 (京都府京都市) 「中学生の頃、別役実さんの童話…

2020年6月 柴田智之

演劇とは、 僕という可能性の中にある「星」を繋ぐこと。 柴田智之 Atelier柴田山(北海道札幌市)  初めて観た作品の、あまりの要素の多さに圧倒された。音楽、ダンス…

2020年6月 木内里美

演劇を通して たくさんのお客様に「笑い」を届けたい。 木内里美 The ちゃぶ台(熊本県大津町) 「外出が難しい期間中は、結構過去をあれこれ振り返ったりもしたんです…

2020年7月 松本 恵

演劇の表と裏、両面の「要」を担う言動一致の人 松本 恵 F‘s Company(長崎県長崎市)  演劇作品を世に送り出すまでには膨大な仕事があり、各種専門家もいるが、小さ…

2020年7月 小菅紘史

美しい雲の流れに思考が180度転換してしまった。 小菅紘史 第七劇場(三重県津市美里町)  インタビューという対話は、その過程で取材者と被取材者共に、話す前までは…

2020年6月 安部聡子

(撮影:片山達貴) 一度、多くを抱えてから投げ出して“空っぽ”になる。 安部聡子 地点(京都府京都市)  地点の、作品の佳境であろう場面。安部聡子が膨大な台詞を…

2020年5月 赤澤里瑛

演劇は折々の自分と仕事や環境を繋げるために 必要なもの。 赤澤里瑛 世界劇団(愛媛県東温市)  赤澤里瑛が所属する「世界劇団」は、愛媛大学医学部の演劇部OB・OGを…

2020年6月 阪本麻紀

(撮影:松原 豊) 堅牢な層を成す葛藤、苦悩、決断、決別を基盤に 阪本麻紀 烏丸ストロークロック(京都府京都市)  ほぼ「はじめまして」の方から格別のおつきあい…

2020年6月 小濱昭博

(撮影:岩渕 隆 重力/Note「LOVE JUNKIES」より) 始まりは目の前の人を「ちゃんと見る」こと 小濱昭博  短距離男道ミサイル チェルノゼム(宮城県仙台市)  小…

2020年6月 齊藤頼陽

鳥取に来たことで演劇が生業として認めてもらえた 齊藤頼陽 鳥の劇場(鳥取県鳥取市)  立て板に水、とはこういうことか。  国内各地の地域演劇を牽引する俳優にイン…

2020年6月 佐藤隆太

テーマは「いかに自分をなくすか」 佐藤隆太  シア・トリエ ロメオパラディッソ(福島県福島市)  佐藤隆太の観劇初体験は、母が見せてくれた劇団飛行船のマスクプレ…

2020年5月 森岡 光

(撮影:藤井真宏写真事務所) 多くの「心」と「手」が結び合い演劇をつくる 森岡 光 不思議少年(熊本県熊本市)  小動物、ただし肉食系。妙齢の女優をつかまえてな…

2020年5月 貴島 豪

(撮影:加藤孝) 「舞台上で生きる」ことに集中するため準備する 貴島 豪 SPAC 静岡県舞台芸術センター(静岡県静岡市)  毎年GW時期に、貴島豪の所属するSPAC 静岡県…

冊子「2020/俳優の現在地」発売

 noteで連載してきました「2020/俳優の現在地」の冊子版を発売することにしました。
 内容はnoteと同じですが、ウフラボの平野由記さんによる装丁で、手にとっていただくことで、じっくり読んでいただける素敵な冊子になりました。
 ぜひお読みいただければと思います。
 
 「2020/俳優の現在地」
 企画/永山智行 
 インタビューアー・執筆/大堀久美子
 装丁/平野由記(ウフラボ)
 A5サ

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あとがき

 大学を卒業して出版社に勤め、4年3か月で退社。その後、どこにも所属することなく個人で、いろいろなものごとや人を取材させていただき、編んだり書いたりの仕事を続けて来た。数えてみると今年が25年目だ。
 学生時代は舞台照明を主に、舞台の仕事をするサークルで活動しており、個人になってからの仕事の主題も自ずと舞台芸術が中心に。一つの契機は今企画の文中にも登場する、青森の劇団弘前劇場との出会い。以来、国内

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2020年5月/11月 西藤将人



手放すことで身を軽くし、先へと手を伸ばす。
西藤将人 劇団ハタチ族(島根県雲南市)

 この取材以前に、西藤将人と直接の接点があったのは二度。最初は仙台の演劇祭のクロージングイベントの場で、次は京都に国内各地の民間小劇場の関係者が集まるミーティングだった。そこで交わした言葉から受けたもの、周囲の人々の語る彼の印象は「驚くべきエネルギーのある人」「アツい」「がむしゃら」など多々あるが、電話インタ

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2020年7月 広田ゆうみ



(撮影:西岡真一)

「小さなもうひとつの場所」への通路になる。
広田ゆうみ このしたやみ 広田ゆうみ+二口大学
(京都府京都市)
「中学生の頃、別役実さんの童話を読んだのがすべての始まり。当時は言語化できませんでしたが、“ここには世界の成り立ちが書かれている。私はこういう物語を探していた!”と叫びたくなるような感覚だったのだと思います。どの物語も淋しくてヘンテコで面白くて、そしてとても美しい

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2020年6月 柴田智之



演劇とは、
僕という可能性の中にある「星」を繋ぐこと。
柴田智之 Atelier柴田山(北海道札幌市)
 初めて観た作品の、あまりの要素の多さに圧倒された。音楽、ダンスと身体表現、人形とその仲間たち、オブジェというか美術作品、強い言葉と衝動、そして感情。それらが混然一体となった小宇宙の中で白塗りの柴田智之の顔が、声が、生身が躍動する。そこに宿るのはアングラの稚気と知性、美術の技法、舞踏の哲学、

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2020年6月 木内里美



演劇を通して
たくさんのお客様に「笑い」を届けたい。
木内里美 The ちゃぶ台(熊本県大津町)

「外出が難しい期間中は、結構過去をあれこれ振り返ったりもしたんです。東京で所属していた、かもねぎショットの代表・高見亮子から本を紹介するバトンリレーが回って来て。“コレは断れん”と、Facebookに投稿なんてしたこともなかったのに必死に送って(笑)。その時に高見と話したことで、回顧的な感覚にな

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2020年7月 松本 恵



演劇の表と裏、両面の「要」を担う言動一致の人
松本 恵 F‘s Company(長崎県長崎市)
 演劇作品を世に送り出すまでには膨大な仕事があり、各種専門家もいるが、小さな劇集団では俳優や劇作・演出家が職域以外も兼務することが多い。中でも最も広域かつ重要な仕事を担うのが制作部門。創作から上演まで全体の流れを把握・調整しながら、劇団の内外を繋ぎ、観客を心地よく迎え、送り出すため心を砕く。経理や書

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2020年7月 小菅紘史



美しい雲の流れに思考が180度転換してしまった。
小菅紘史 第七劇場(三重県津市美里町)
 インタビューという対話は、その過程で取材者と被取材者共に、話す前までは持ち得なかった考えや、言動の理由に気づかせてくれることがある。小菅紘史が過去を遡る過程で何度か発した「あぁ、繋がって来た」という呟きは、足場を確かめつつルート取りする“記憶の登山家”のようだった。
 建築士と美術教師の両親からアートや

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2020年6月 安部聡子



(撮影:片山達貴)

一度、多くを抱えてから投げ出して“空っぽ”になる。
安部聡子 地点(京都府京都市)
 地点の、作品の佳境であろう場面。安部聡子が膨大な台詞を、驚異的な速度と正確さで舞台上に放つ。そこから想起されるのは、「生きた楽器」のイメージだ。奏でるものと鳴り響くものが一体となり、舞台に根づいて遥か高みに言葉と音色を強く穿ち、同時にそれらは観客の耳目にも刻みつけられる。自身を、虚と実を

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2020年5月 赤澤里瑛



演劇は折々の自分と仕事や環境を繋げるために
必要なもの。
赤澤里瑛 世界劇団(愛媛県東温市)

 赤澤里瑛が所属する「世界劇団」は、愛媛大学医学部の演劇部OB・OGを中心とした医師と医学生からなる劇団だ。赤澤は精神科の、発達に偏りがある子どもたちに関わる「児童精神」を専門とする医師であり大学院生でもある。感染症拡大のため、2月末から4月後半までに行うはずだった、劇団初の4都市ツアー公演は延期に

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2020年6月 阪本麻紀



(撮影:松原 豊)

堅牢な層を成す葛藤、苦悩、決断、決別を基盤に
阪本麻紀 烏丸ストロークロック(京都府京都市)

 ほぼ「はじめまして」の方から格別のおつきあいまで、今シリーズに協力いただいた俳優陣との距離感は、それぞれに異なる。その中にあって阪本麻紀は作品を観た数も、取材やそれ以外で言葉を交わした時間もかなり長く多い。と思っていたのだが、いざ話し出すとザクザクと初耳エピソードが飛び出して

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2020年6月 小濱昭博



(撮影:岩渕 隆 重力/Note「LOVE JUNKIES」より)

始まりは目の前の人を「ちゃんと見る」こと
小濱昭博 
短距離男道ミサイル チェルノゼム(宮城県仙台市)

 小濱昭博は憂いている。いや、腹を立てていると言うべきだろうか。予期せぬ感染症の流布で明るみに出た、自身も身を置く演劇や舞台芸術業界の脆弱さに。それを率いる上の世代の鈍感さに。ひいてはこの国と人との中で渦巻く大きな歪みに

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2020年6月 齊藤頼陽



鳥取に来たことで演劇が生業として認めてもらえた
齊藤頼陽 鳥の劇場(鳥取県鳥取市)
 立て板に水、とはこういうことか。
 国内各地の地域演劇を牽引する俳優にインタビューするこの企画では、現状に加えて過去に遡っての出会い、意志や決断の話を訊く時間が多い。しかも齊藤頼陽とは言葉を交わすこと自体初めて。緊張はむしろ取材者が勝っていた気がするが、こちらの最初の問いに答え、演劇を始めた大学時代から後に「

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2020年6月 佐藤隆太



テーマは「いかに自分をなくすか」
佐藤隆太 
シア・トリエ ロメオパラディッソ(福島県福島市)
 佐藤隆太の観劇初体験は、母が見せてくれた劇団飛行船のマスクプレイ(ぬいぐるみ)ミュージカル。そこで舞台や演技の楽しさを知った彼は、音読の授業で棒読みする同級生の芝居心のなさに苛立ちを感じ、中学3年時には音楽の授業から派生した文化祭の出し物・ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』に出演。トラッ

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2020年5月 森岡 光



(撮影:藤井真宏写真事務所)

多くの「心」と「手」が結び合い演劇をつくる
森岡 光 不思議少年(熊本県熊本市)
 小動物、ただし肉食系。妙齢の女優をつかまえてなんだが、愛称ピッピこと森岡 光に対する(個人的な)印象を一言で表すとこうなる。すばしっこく動く身体、くるくる変わる表情、声も役ごとに様々な色彩を帯び、何より目に宿る強い光が観客の視線を強く惹きつける。そうして彼女を見つめるうち、「食わ

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2020年5月 貴島 豪



(撮影:加藤孝)

「舞台上で生きる」ことに集中するため準備する
貴島 豪
SPAC 静岡県舞台芸術センター(静岡県静岡市)
 毎年GW時期に、貴島豪の所属するSPAC 静岡県舞台芸術センターは、静岡芸術劇場や舞台芸術公園、駿府城公園なども会場にする「ふじのくに⇄せかい演劇祭」を主催している。だが今年は新型コロナウイルスの拡大を受けて実施を断念。映像やトークの配信メインのプログラムに急遽全面改

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