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エッセイ

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#夏

投げやりな朝を煮詰めてできた珈琲を飲めるのは大人になったあなただけ

投げやりな朝を煮詰めてできた珈琲を飲めるのは大人になったあなただけ

始業式に出ずに過ごしたことが何度かあった。
当然ながら始業式の時は先生も生徒も端から端まで体育館に集められるので、普段過ごす校舎は空っぽになる。
始業式をサボった私は嬉々として空っぽになった学び舎を見学する。

曖昧な幽霊になったように廊下を走ってみる。
校舎中のトイレットペーパーの先を三つ編みにして回る。
北校舎の一階の角、3番目のトイレに書き残された名無しの誰かの詩とその返歌を読む。
足音の

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食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

少しでも涼しければ、隙を見て出てくるらしかった。
猛暑の今年は油断していたが少し気温が低いと思えば飛んでいる。
友人が仕留める。
横の動きで叩くと逃げられやすいが縦の動きだと仕留めやすいのだと言う。
潰した手に黒くはりついて、血はついていなかった。
払うとへろへろと地面に落ちて、何事もなくなった。

「この間は1日に3件も起きて、ひどかったな」
鉄道会社勤めの友人が呟いた。
「あれって、どういう人

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