アニメ「Kanon」第7話を5つの視点から分析する👀
引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第7話。第6話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【ポイント①】<日常>の終わり
<1>
第1話以来、「Kanon」には何が描かれてきたか?
ずばり、<日常>である。<かわいいヒロインたちと共に、騒がしくも楽しい毎日を過ごす祐一の姿>である。
<2>
前話までにもいろいろと奇妙な点、不気味な点はあった。
・例1:なぜか記憶を失っている祐一、あゆ、真琴
・例2:魔物(?)と戦っている舞
・例3:体調不良で学校を休んでいる栞
「Kanon」が単なるハッピーな物語でないことは明らかだろう。
しかしそれでも!それでも、前話まではあくまでも<楽しい日常の物語 + 所々に奇妙なシーンや不気味な演出>だった。
<3>
ところが本話では……さぁ、物語が動き出した!
何よりもご注目いただきたいのは、真琴の<真琴らしからぬ言動>の数々である。
▶ 歩道橋の上では
・1:「(猫は)放っておけばいいじゃない。動物なんて、いらなくなったらポイでしょ?」「なまじ人に飼われて平和な暮らしをするより、このまま野に帰してやるべきよ」
・2:猫を歩道橋から落とす
・3:「元々向こうが勝手に懐いてきただけじゃない!」
▶ ものみの丘では
・4:猫を抱きしめる「私たち、一緒だね。邪魔者で、どこへも行けない」
▶ 帰宅後
・5:<温かな家族団欒>を目の当たりにして、呆然とする
<4>
本話に描かれているのは、もう<日常>ではない。明らかに<日常>の範囲を越えている。
だって、本話のストーリーを大雑把にまとめてみると……
・Step 0:祐一や秋子は、最初から真琴に優しく接していた。しかし、真琴はそれを意識していなかった
・Step 1:真琴が家出。祐一や秋子から離れ、強い孤独感に襲われる
・Step 2:真琴が戻ってくる。祐一や秋子は、笑顔で真琴を受け入れてくれる。そして「真琴は家族だ」と言ってくれる。真琴はいま、祐一や秋子の温かさを初めて理解した。彼女は呆然とする
つまりは、【真琴は<日常>の価値に気づいていない → <日常>を離れる → <日常>に戻ってくる。一度離れたからこそ、それまで当たり前だと思っていた<日常>の素晴らしさを理解できた】というわけだ。
一度<日常>を離れ、<日常>の価値を理解する……そう、これはもう<日常>の物語ではない。
【ポイント②】前話とはあれもこれも違う
<1>
物語には<お約束>というものがある。
のび太が0点を取り、ジャイアンやスネ夫にいじめられ、ママに説教される。これが「ドラえもん」の<お約束>だ。
「Kanon」にもいくつかの<お約束>がある……いや、あった。本話では<お約束>が破られているのだ。
・お約束1:第1話以来、毎話冒頭には<奇妙な夢のシーン>が挿入されていた。あゆの声で「夢。夢を見ている……」といったモノローグが流れるあのシーンだ。しかし、本話にはそれがない!
・お約束2:第4話以来、<真琴が復讐を試みる → あえなく失敗し、祐一に逆襲される>というシーンがくり返し描かれてきた。しかし本話では、どうだろう。真琴の<復讐>はある意味成功したと言えるだろう。ついに成功してしまった!
<2>
また、あゆや栞、舞、佐祐理といったヒロインたちの出番が極端に少ないのも本話の特徴だ。
前話までと比べて、明らかに扱いが軽い。何しろ彼女らは、登場したかと思いきや、祐一と二言三言話しただけですぐに退場してしまうのだ。
<3>
はて、<お約束>が無視されたのはなぜか?あゆらの扱いが軽いのはなぜか?
理由は明白だ。
上述の通り、前話までと本話とではストーリーのタイプが違う。
・前話まで:<日常>の物語
・本話:真琴が<日常>を離れる物語/祐一らの<日常>が侵される物語
だから本話は、前話までとはあれもこれも異なっていて当然なのだ。
【ポイント③】香里と北川が久々に登場した理由
<1>
本話には、香里と北川が久々に登場する。
すなわち……
・Step 1:登校中、祐一と名雪は猫に遭遇した。名雪は猫アレルギーを持っている。だが大の猫好きだ。かくして彼女は猫に駆け寄った
・Step 2:そのせいで、アレルギーが発症。涙が止まらない
・Step 3:教室。名雪が涙を流していると、香里と北川がやってきた。そして心配してくれる
<2>
ごく短いシーンながら久々の登場となったわけだが……さて。ここで考えたいのは、なぜこの2人が登場したのかということだ。
ストーリーの進行上、名雪が猫アレルギーであることを明確にしておく必要がある(そうでないと、後の歩道橋のシーンが意味不明になってしまう)。
しかし、だ。
それなら単に【名雪が涙を流し、祐一が心配する】というシーンを描けば十分だったはず。香里と北川を登場させる必要はない。
<3>
制作者が、香里と北川を登場させたのはなぜだろう?
私はこれ、真琴の<孤独>を強調するためだと思う。
つまり、【祐一はたくさんのヒロイン(あゆ、栞、舞、佐祐理)に囲まれている。一方、名雪には友だち(香里、北川)がいる。では、真琴は?彼女は……孤独だ!】という構図を描くために、わざわざ香里と北川を登場させたのではなかろうか。
<4>
ちなみに……本話には真琴の<孤独>がたびたび描かれている。
・例1:真琴はゲームセンターの前に佇み、少女たちが友だち同士でプリクラを撮るのを見つめる
・例2:真琴は、ものみの丘で猫に語りかける「私たち、一緒だね。邪魔者で、どこへも行けない」
【ポイント④】本話のキーワードは?
<1>
本話のキーワードは、【後追い】である。
後追いとは、①後ろから追いかけること、②人を真似ることだ。
<2>
本話には、<後追いシーン、後追いエピソード>が散りばめられている。
例えば……
・例1:冒頭、真琴が祐一のノートで紙飛行機を折る。祐一はショックを受ける「何てことするんだよ!明日提出の宿題だぞ、これは!」「名雪のやつを写したんだ!」。
つまり、祐一は名雪の宿題を後追い(真似)していたわけだ。
・例2:商店街、祐一と真琴がばったり遭遇。祐一は「一緒に帰ろうぜ」。しかし真琴は、「あんたなんかと一緒に帰りたくないわよ!」とどこかへ行ってしまう。……が、すぐに戻ってきて祐一の後をこっそり尾行し始めた(彼女は寂しがり屋で、その上ひねくれ者なのだ)。祐一はそれに気づいて呆れる。
そう、真琴は祐一を後追いしている(後から追いかけてくる)。
・例3:祐一と真琴は猫に遭遇。祐一が肉まんを買ってやると、真琴は猫と奪い合いを始めた。真琴は「肉まん、返してよ~!」と猫を追いかけ回す。
真琴は猫の後を追う。これも後追いである。
<2>
はて、本話で【後追い】がフィーチャーされているのはなぜだろう?
ずばり、<真琴 = 後追いキャラ>だからだと思う。
本話ではまだ明かされていないことだが……真琴は、祐一を後追いして人間になった(彼女は元々人間ではない)。
また本話最大の謎、<なぜ真琴は猫を歩道橋から落としたのか?なぜそんな残酷なことをしてしまったのか?>の答えも後追いにある。じつは彼女は、かつて自分がされたことを後追い(真似)したのだ。
要するに、制作者は私たち鑑賞者に <真琴 = 後追いキャラ>と示唆すべく、【後追い】をフィーチャーしたのだろう。
【ポイント⑤】秋子の魅力、「Kanon」の魅力
最後に、私が好きなシーンをご紹介したい。
・Step 1:真琴は夜になっても帰宅しない。名雪が心配する「きっとお腹すかせてるね……」
・Step 2:一方、祐一はイラついている「同情することなんかないぞ!」「生き物の命を粗末にするような奴は、1人で反省すればいいんだ!」
・Step 3:ところがその直後、祐一は席を立った「ちょっと出てきます」。そして真琴を探しに出かけた
ご注目いただきたいのは、<言葉とは裏腹に真琴を探しに行く祐一。ツンデレかよ(笑)いい奴だなぁ~>……ではない!
いや、確かに祐一はいい奴だ。見ていて心が和む。
しかし本当に魅力的なのは……秋子である♥
<2>
じつは祐一が席を立つシーン、画面の端の方で秋子が微笑んでいる。
秋子は「祐一さん、真琴を探してきてあげて」とは言わない。もちろん「放っておけばいいのよ」とも言わない。
ただ静かに、祐一の判断を待つ。そして祐一が善なる決断を下した時には、そっと微笑むのだ。
嗚呼、このママっぽさよ!
<3>
なおこの時、秋子の顔は祐一の陰になり、半分くらいしか画面に映っていない。だから見逃してしまった鑑賞者も少なくないと思う。しかし、秋子は確かに微笑んでいる……!
こうした<パッと見では見落としてしまいかねない細かな表情もしっかり描かれている>のが、「Kanon」の魅力ですよねぇ!すごい!!
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