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失恋、その後……!!|『カサブランカ』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「カサブランカ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「カサブランカ」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「カサブランカ」は、失恋で心に傷を負い、「もう他人と関わりたくない……」と思っていた男が復活を遂げる物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「カサブランカ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『カサブランカ』 ~『ヤクザ』編」です。


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嘉村 ヤクザ!

三葉 「カサブランカ」と比較すると以下のようになります。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公はヤクザです。

嘉村 ふむ。

三葉 一口にヤクザと言っても様々ですが、主人公はヤクザ映画の主演を張るようないいヤクザ。お節介焼きで、困っている人を放っておくことができない。自分のことよりも、他人を優先する。情に厚く、義理堅い。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公が属するのは日本最大にして最強の暴力団ですが……そんな男ですからね。組長や幹部からかわいがられ、若くして相応の地位に就いています。カタギ衆からも、「親切なお兄さん」「粋なお兄さん」と頼られている。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、そんな主人公には素敵な恋人(以下、Aさん)がいました。2人は間もなく結婚するものだと、誰もがそう思っていた。ところが……Aさんはふいに姿をくらましてしまう。彼女の部屋には、「ごめんなさい。私のことは忘れてください。さようなら」という置き手紙と、主人公がプレゼントした指輪が残されていた。

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公は強いショックを受けます。なぜだ!?あんなに仲よくやっていたのに……ずっと一緒にいようと誓い合ったのに……嗚呼、何ということだ!

嘉村 ふーむ。

三葉 そしてこれを機に、主人公は別人のように変わってしまいます。すなわち、他人を避けるようになったのです。誰かに相談を持ちかけられても、「悪ぃが、オレは力になれねぇよ」と首を振るだけ。「オレを頼るのは止せよ」と、子分ですら遠ざけようとする始末。主人公のあまりの変貌っぷりに一同驚き、心配する。組長はさすがに人間心理に長けており、「Aさんがいなくなって、余程傷ついたようだな。他人と深く関われば、いつまた裏切られるとも知れねぇ。ヤツは裏切られるのが怖くて、他人と付き合えなくなってるんだろうよ」

嘉村 なるほどねぇ。

三葉 幹部が嘆息する「ヤツは将来、この組を背負って立つ男だと思っていたんですがねぇ」。組長は酒をあおって「まぁ、放っておいてやれ。外野がヤイヤイ言ってもどうしようもねぇよ」。

嘉村 ふむ。

三葉 そんなこんなでAさんが失踪してからおよそ1年経ったある日の深夜、主人公が自宅で1人酒を飲んでいると……突如Aさんがやってきた。主人公は息を飲む。Aさんはじっと主人公を見つめて「……突然ごめんなさい。あの日、急にあなたの前から姿を消した理由を説明したいの」。主人公は、Aさんの顔をボーっと見つめる。少し痩せたようだ。苦労しているのだろうか?随分と地味な服を着ている。もう少し派手好みだったはずだが……なんて悠長に観察している場合ではない!主人公は「何か言わねば」と焦る。そして口から飛び出したのは、「ケッ!どのツラ下げて来やがった!よくもまぁ、オレの前にのこのこと顔を出せたもんだぜ。余程ツラの皮が厚いと見える。恥知らずのクソ女め!」。後で考えれば、よくぞこんなにひどい言葉がポンポンと飛び出したものだと我ながら呆れてしまいますが、何しろ突然の訪問に動揺していたのです。しかも酔っ払っていた。Aさんの瞳からぽろっと涙がこぼれる「本当にごめんなさい……」。彼女は去った。

嘉村 うーむ……。

三葉 翌朝酔いが醒め、いくら何でも言い過ぎたと後悔していると、再び来客。やってきたのはAさんと……見知らぬ男(以下、B氏)です。訊くまでもありません。Aさんの現在の恋人でしょう。「冗談じゃないぜ。このアバズレが!」と思いつつも、主人公がそれでもまずは2人の話を聞いてみようと思ったのは、昨夜のことを反省していたからです。

嘉村 なるほど。

三葉 B氏が話し始めました。曰く……B氏は、とある地方都市を縄張りとするちっぽけな暴力団の組員。老いぼれた組長と数人の組員しかいないものの、伝統ある組織ということで、周囲の暴力団とは友好関係を築いていました。ところがある日……ロシアンマフィアが侵攻してきた!

嘉村 ロシアンマフィア!

三葉 彼らは平穏な街に、金と暴力とドラッグを持ち込み、あっという間に勢力を拡大。B氏の属する組には、挑発行為を繰り返した。しかし敵は強大。B氏らが喧嘩を買ったところで、勝ち目はない。彼らはグッと堪えた。ところが間もなく、大事件が発生!すなわち……組長が誘拐され、ボコボコにリンチされた挙句、殺されたのです。

嘉村 恐ろしい……。

三葉 組長と言えば、親も同然。今度という今度は黙っていられません。B氏らは、敵討ちを決意する。しかし、彼我の戦力差はあまりにも大きい。象と蟻です。復讐も何もない。あっさり皆殺しにされて終わりだ。そこで……。

嘉村 あー、主人公に助っ人を求めてきたというわけですね。

三葉 ええ、その通りです。B氏が言う「勝手な頼みだということは重々承知しております!しかし、どうぞお力添えを!○○組に助太刀していただけるならば、これほど心強いことはありません!」。Aさんもすがる「あなたしか頼れる人がいないの!お願い!」。……主人公は思う。このBという男には、命がけで復讐をする覚悟があるようだ。名なり功なりのために形ばかりの敵討ちをしようという手合いが多い昨今、こういう昔気質のヤクザを見ると嬉しくなってくる。応援してやりてぇ。しかし……冗談じゃねぇぜ!なぜ、オレを裏切った女と、その女の情夫のためにオレが一肌脱がにゃならんのだ!オレをナメるなよ、この野郎!

嘉村 まぁ、そうですよねぇ……。

三葉 主人公は拒否。2人はすごすごと引き上げる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかしその日の夜、再びAさんが1人でやってきた「あなたのもとから姿を消した理由を説明させて!」。主人公は、今夜はシラフです。黙って話を聞く。Aさん曰く……AさんとB氏とは元々恋人同士でした。2人は学生時代からの付き合いで、将来を誓い合った仲。ところが2年前、B氏はとある抗争に参加し、姿を消した。敵にとっつかまり、海に沈められたという噂が広まった。Aさんは強いショックを受けた。彼女はあまりの悲しみに故郷を離れ、都会に出た。そこで……そう!主人公と出会ったのです。2人は間もなく惹かれ合い、恋に落ちた。だがあの日、Aさんが主人公の前から姿を消したあの日……Aさんのもとにふいに連絡が入ったのです。B氏は生きていた!敵に監禁され、激しい拷問を受けていたが、彼は生きていた!Aさんの心は千々に乱れる。彼女は主人公を愛していた。だが……B氏のことも愛している!結局のところ、彼女はB氏を放っておくことができず、主人公のもとを去ったのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 Aさんの頬を涙が流れる。「私、固く誓っていたのに……ダメな女ね。こうしてあなたに会うと……」。彼女は、主人公に熱っぽい視線を送る。主人公も見つめ返す。そう、2人はいまも愛し合っているのです。彼らはキスをする。そして……主人公は腹を決めた。

嘉村 ほぉ……と言うと?

三葉 翌日、主人公はB氏を訪問。B氏が喜ぶ。しかし、主人公は苦笑する「勘違いするなよな。糠喜びさせて申し訳ねぇがな、うちの組は関係ねぇ。オレはいま、○○組を抜けてきた」。B氏が目を丸くする。「オヤジたちには迷惑をかけられねぇからな。つまりだ……オレが個人として、お前の助っ人に立つぜ」。B氏は感謝を述べる。Aさんは涙を流す。主人公は再び苦笑する「泣くんじゃねぇよ。2人の阿呆が、阿保なりに筋を通そうとしているんだ。しっかり見送ってくれよな」。かくして主人公は、B氏らと共にロシアンマフィアに戦いを挑むことになったのでした。

嘉村 ふむふむ。

三葉 「カサブランカ」では、主人公は「愛する女の幸福」と「正義(第2次世界大戦における勝利)」のために、自らの幸福を犠牲にします。彼は個人的な幸福よりも、他人のことを優先できる男に戻ったわけですが……。

嘉村 ええ。

三葉 「案①」の主人公は、「男の美学(頼りにされたら命がけで報いる)」に殉じる覚悟です。つまり彼は、「『困っている人を見過ごせぬ男』に戻った」というわけです。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「『カサブランカ』 ~『ヤクザの妹』編」です。


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嘉村 ヤクザの妹!

三葉 さて、本記事では「『カサブランカ』をリスペクトした物語」を妄想しているわけですが……「『カサブランカ』風物語」を作る際に、最も気を配るべきポイントはどこだと思いますか?

嘉村 気を配るポイント……。

三葉 ええ。私は、「ヒロインが元の男と離れる理由」と、「その後、主人公を捨ててヨリを戻す理由」こそが肝心だと思います。

嘉村 ほぉ……「案①」で言えば、「AさんがB氏と離れた理由」、そして「その後、主人公を捨ててB氏とヨリを戻した理由」ですね。

三葉 その通りです。ここが曖昧だったり、あるいは強引だったりすると、鑑賞者はヒロインに反感を抱くことになるでしょう。「男2人を弄ぶ売女が!」「どれだけ自己中心的なんだよ!」なんて具合ですね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして、そんなクズなヒロインに恋する主人公やB氏はただの阿保にしか見えなくなる。つまり、ちっとも共感できぬ物語になってしまうというわけです。

嘉村 なるほど。

三葉 では、「カサブランカ」や「案①」ではどうなっていたでしょうか?

嘉村 えーと……「ヒロイン(イルザ、Aさん)」は、「元の男(ラズロ、B氏)」が死んだと誤解し、「新しい男(リック、主人公)」と恋に落ちた。しかし、やがて「元の男」が生きていたと知り、ヨリを戻す。

三葉 はい、その通りです。そして……いかがでしょう?「『元の男』が死んだと誤解していたなら、まぁ、『新しい男』とくっついても致し方ないかな」「『元の男』が生きていたとなれば、まぁ、元鞘に収まるのも理解できるかな」という感じがしますよね?

嘉村 うーむ……確かに納得感がありますね。「この売女が!」という感じはしません。

三葉 そこで、「他にどんな理由なら納得感があるだろう?」と考えてみたんですよ。

嘉村 ふむ。

三葉 例えば、こんなのはいかがでしょうか。すなわち、AさんとB氏は恋仲だった。しかしある日、Aさんが離れる。なぜならば……2人が実の兄妹だったと判明したから!

嘉村 兄妹!

三葉 幼くして両親が離婚したため、2人は別々に育ちました。血のつながった兄妹だなんて知らずに出会い、恋に落ちた。しかしある時、Aさんが、B氏を両親に紹介したことで、2人の「禁断の関係」が発覚したのです。2人は衝撃を受ける。嗚呼、近親愛!このままではいけない。しかし、だからといって離れがたい!……致し方がない。Aさんはそっと地元を離れ、都会に出た。B氏を忘れようとした。そして主人公と出会う!

嘉村 ふむふむ。

三葉 だが、ひょんなことからAさんとB氏が再会。嗚呼、蘇る恋心!燃え上がる愛!禁断でも構わぬ!AさんはB氏とヨリを戻し、主人公のもとを離れた。……いかがでしょう?ヒロイン(Aさん)の行動に一定の納得感があると思いません?

嘉村 うーむ……確かに。

三葉 以上、「『カサブランカ』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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