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(主人公といえども)悪を為した者には罰を与えよ!!|【第9話(5):気持ちだよ】「みなみけ」を三幕構成で分析する

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分析対象


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三幕構成


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【ポイント1-1】本話は、なぜこれほどまでに面白いのか?


本話は、一体全体なぜこれほどまでに面白いのでしょうか?

一言で言うならば、ズバリ【意外性】ゆえでしょう。


物語冒頭、夏奈は欲望を抱く。そして<邪悪なるアイデア>を思いつき、実行に移すのですが……ところが!2つの誤算によって思いがけない結果に至る。

この<思いがけなさ>に、私たち鑑賞者は「おー!」と感嘆したり、思わず噴き出してしまったりするのです。


以下、詳しくご説明します。


【ポイント1-2】まずは邪悪なるアイデア


第1幕~第2幕前半では、物語は以下の通り進行します。

・Step 1:夏奈が欲望を抱く「パイを食べたい!」

Step 2:夏奈がその欲望を満たすための<邪悪なるアイデア>を閃く

Step 3:夏奈が口八丁で千秋を口説く「上手く作れなくてもいい。大切なのは気持ちさ」

Step 4:千秋がその気になり……夏奈はニヤリと笑った


【ポイント1-3】第1の誤算


<1>

事態は夏奈の思惑通りに進んでいるように見えたのですが……さて。ミッドポイント以降、2つの<誤算>が生じます。


<2>

当初夏奈は、

・Step 1:千秋にパイを作ってもらおう。どうせ失敗するだろうが、問題ない!

・Step 2:その失敗作をダシにして、春香に素晴らしいパイを作ってもらおう!

……と企んでいました。


ところが!千秋が予想外に見事なパイを作った!

これが第1の誤算です。


<3>

夏奈はその出来栄えにギョッとします。

えっ。もう春香に作ってもらう必要ないじゃん。これを食べればいいじゃん。っていうか、食べたい!我慢できない!


かくして夏奈は、千秋の自信作を食べてしまいます。


【ポイント1-4】第2の誤算


<1>

パイを食べてしまった夏奈。

当然、彼女は怒られることを覚悟していたでしょう。


ところが……春香は怒らなかった。それどころか、怒り狂う千秋をなだめ、とりなす。かくして夏奈は衝撃を受ける!

これが第2の誤算です。


<2>

ここでご注目いただきたいのは、春香の「気持ちだけで十分だから」というセリフ

そう!これ、第1幕の夏奈のセリフ「大切なのは気持ちさ」とそっくりなんですよ。


一見同じようなことを言っているが、実際には春香はまるで菩薩。一方、自分は悪党。……嗚呼、私はなんと嫌なヤツなのか!

夏奈は自己嫌悪に陥り、号泣してしまいます。


この、

・1:似たような発言をしたからこそ、

・2:春香と夏奈の差異が際立ち、

・3:夏奈の醜さが顕著になる。

・4:ゆえに、夏奈は強いショックを受ける。

……という展開が巧いですよねぇ!

「あー、こりゃ夏奈が号泣するのも無理ないわ」という説得力があります。


もしこの展開を欠いていたら、「夏奈が号泣って……ちょっと違くない?夏奈はそんなキャラだっけ?」「号泣するほどのことかな?」「ん?夏奈は嘘泣きしているの?」と、鑑賞者の不満や誤解を招いたと思うんですよね。


【ポイント2】勧善懲悪だからいい!


<1>

それにしても……物語冒頭で夏奈が抱く欲望は「パイを食べたい」。じつにかわいらしいですね♥

そしてその欲望を満たすために<邪悪なアイデア>を閃き、千秋を騙すに至る。普段はアホな子だというのに、夏奈はこういう時には頭が冴えるんですよね。この<己の欲望に忠実なところ>が夏奈の魅力です♥


<2>

……が、しかし。

夏奈がどれほどプリティだろうと、あるいは彼女の抱いた欲望がどれほどキュートなものだろうと、悪は悪!


そう、本話の夏奈は悪なのです。


<3>

そして悪である以上、罰を受けねばなりません。

それが夏奈のためです。


だって、私たちの多くは<悪は断罪されるべし>という価値観を持っている。そして<勧善懲悪>を望んでいる。

したがって、もしも夏奈が罰を受けなかったら……「何だよ、こいつ!」「ムカつくなぁ!」「千秋がかわいそうだ!」なんて具合に、私たち鑑賞者は夏奈を嫌いになっていたと思うんですよ。

つまり、それがどれほど魅力的なキャラであろうとも、どれほど人気があろうとも、悪を為したら罰を受ける必要があるのです。


その点、本話は完璧です!

中途半端なところでは幕を引かず、きっちり夏奈を号泣させ、そして反省する様を見せる。

ゆえに、私たち鑑賞者は彼女にヘイトを感じない


【ポイント3】言い間違い


<1>

本作で夏奈が「食べたい」と願い、千秋が見事に作ってみせたのは<チーズレモンカスタードシフォンパイ>なる菓子……なのですが。

夏奈と千秋がこれを言い間違えるシーンがあるんですよ。


<2>

まず、第1幕。

夏奈は、ここではしっかりと<チーズレモンカスタードシフォンパイ>と言っています。


<3>

ところが、ピンチ2。

春香が帰宅し、千秋が満面の笑みで出迎えた。この時千秋は「春香姉さまが食べたがっていたチーズレフォンカスタードシモンパイを作りました」と言う。


チーズレフォンカスタードシモンパイ!


<4>

さらに、セカンドターニング・ポイント。

空になった皿を見て、千秋が仰天した「何だこれ!?」。対する夏奈は「ターズレフォンカスチードシフォンパイ……」と言います。


ターズレフォンカスチードシフォンパイ!


<5>

ご覧の通り、夏奈と千秋は言い間違える。

まぁ、舌を噛みそうな長ったらしい名前ですからね。間違えるのも無理ありませんよね。

……というところで考察を終えてもいいのですが、ここではもう1歩踏み込んで考えてみましょう。


すなわち、2人の言い間違えにはそれなりの理由があるに違いない!

・千秋:「春香姉さまが帰ってきた!よーし、会心の出来栄えのパイで喜んでもらうぞ♥」とはしゃいでいる。だから言い間違えた。

・夏奈:「あー……食べちゃった。まずいなぁ、怒られるよなぁ」と動揺している。だから言い間違えた。


<6>

上記のように考えると、本話はより一段と面白くなるはずです。


特に千秋。

普段クールでクレバーな千秋が言い間違えるほどに高揚していると考えると……嗚呼、堪らない♥

最高にかわいいですね♥


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(担当:三葉)

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