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引っ張りたい足!!|『アメリカン・ビューティー』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「アメリカン・ビューティー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「アメリカン・ビューティー」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「アメリカン・ビューティー」は、人生に絶望した中年男が、娘の友人に一目惚れしたことをきっかけに自分の欲望のままにふるまうようになり、やがて「制裁」を受ける物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『アメリカン・ビューティー』 ~『アイドルの結婚』編」、「『アメリカン・ビューティー』 ~『高校デビュー』編」の2案でした。


案③


嘉村 それでは「案③」にまいりましょう!

三葉 はい。「案③」は、「『アメリカン・ビューティー』 ~『異世界転生』編」です。


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嘉村 異世界転生!

三葉 詳細をご説明する前に、「アメリカン・ビューティー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。[


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて……「案③」!「アメリカン・ビューティー」と比較すると以下のようになります。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は異世界、そして主人公は転生者。つまりこれは、「異世界転生もの」です。


嘉村 なるほど。

三葉 主人公が転生してから、およそ1年が経とうとしていた。残念ながら、転生時に特別な能力を授かることはありませんでしたが……主人公はいまの生活に満足していました。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公は街に住み、昼は建築現場で働いています。そして、夜は酒場で飲み明かす。街には多くの知人がいる。友人もできた。彼は、毎日面白おかしく暮らしていました。

嘉村 ふーむ。「この素晴らしい世界に祝福を!」みたいですね。


三葉 そんなある日のことです。主人公らの住む街に、とある勇者パーティがやってきた。

嘉村 ほぉ。

三葉 彼らは魔王討伐の旅の途中であり、2~3日体を休めたいと言う。物見高い人びとが集まって、歓迎の宴が開かれました。主人公も友人と共に参加し、勇者らの冒険譚に耳を傾ける。「さすがは勇者様!すげぇなぁ」と感心していると……ふいに勇者が言った「じつは私、転生者でして」。主人公は胸騒ぎがする。聴衆が問う「あなたは、転生時にどんな能力を授かったのですか?」。勇者は苦笑した「じつは、私は何ももらっていないんですよ」。聴衆がどよめく。

嘉村 あー……。

三葉 勇者は恥ずかしそうに、「転生したからには、勇者になってドラゴンやら魔王やらを討伐したいと思っていましたからね。自分が無能力者だと知った時には、そりゃあ落ち込みました。夢を諦めようと思ったこともあります。しかし、やはり諦めきれぬ。1年ほど必死に修行を積んで、まぁいまのような剣技やら魔法を習得した次第で」。聴衆は感心する。一方、主人公の顔は……真っ青でした。

嘉村 ふむふむ。

三葉 じつは……主人公もまた、転生当初は勇者を夢見ていたのです。しかし無能力者だと判明するや否や、無難な人生を選んだ。「オレは諦めた。しかし、彼は諦めずに努力を重ね、勇者になった……」。主人公は腹を決めました「オレだって勇者になってやる!」。

嘉村 なるほど。

三葉 かくして、主人公は猛特訓を開始。ボロ頭巾のようになりながらも、血のにじむ努力を重ね……1年後。堂々たる勇者に成長した。

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公の友人は、当初冷笑的でした。口には出さぬ者の、誰もが「あの勇者様は特別さ。お前には無理だよ」と思っていた。しかし、主人公は成長した!友人たちは仰天する「マジか!ついに夢を叶えやがった!」。そして、彼らも奮起します「そういえば、オレにだって夢の1つや2つはあったっけ……。よっしゃ!オレだってやるぞ!」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 かくして、ある者は鍛冶屋を目指して修行を始めました。また別の者は、「オレはエルフと結婚したいんだ!」と言って森に入っていった。さらに別の者は、サキュバス専門の風俗店を開業した。

嘉村 ははぁ……。

三葉 とまぁこうして一同夢に向かって突き進むわけですが……誰も彼もが上手くいくはずもない。多くの者は金を失い、心をすり減らし、挫折していった。

嘉村 ふーむ。

三葉 そんな彼らは何を想うでしょうか?そう、主人公に対する「嫉妬」、「妬み」、「『なぜアイツだけが!』という不公平感」です。彼らは主人公を逆恨みし、そして殺してしまった。……これが「案③」のアイデアです。

嘉村 なるほど。

三葉 つまり、「夢を叶えた主人公が、夢を叶え損なった連中から『制裁』を受ける物語」というわけです。


案④


嘉村 続いて、「案④」にまいりましょう。

三葉 はい。「案④」は、「『アメリカン・ビューティー』 ~『アイドルオタク』編」です。


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嘉村 今度はアイドルオタク!

三葉 まずは、「アメリカン・ビューティー」との比較表をご覧ください。


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三葉 基本的なストーリー構造は「案③」同様です。すなわち……主人公はアイドルオタクの青年。彼は非リア充で、仕事もいまいち、プライベートもいまいち。でっぷり太っており、お世辞にも清潔感はない。

嘉村 ははぁ……。

三葉 ある日、そんな彼に転機が訪れた!とある新人アイドルを一目見たその瞬間……全身に電流が走ったのです。体がガタガタ震え出し、「ああっ……ああっ……ああっ……」と喉から奇妙な声が漏れる。隣にいたオタク仲間が問う「どうしたのかな、○○殿?」。彼は掠れ声で返事をする「気分が悪いから今日は帰るでござる……」。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公は、寝ても覚めてもあの子を忘れられない。彼女のことを考えると、心臓が早鐘を打つ。食欲は失せ、夜も寝つけない。元々低かった勤労意欲は、限りなくゼロに近づいた。……一体自分はどうしてしまったのか!彼は心療内科を訪れ、事情を説明する。医師は一通り話を聞いてからニコッと微笑んだ「それは恋ですよ。おめでとう」。主人公はここに至ってようやく気づいた「……恋か!」。

嘉村 ふーむ。

三葉 かくして主人公は、彼女に相応しい男になるべく大変身を遂げます。すなわち、ダイエットをした上で、筋肉をつける。ファッションを整える。髪も整える。眉だって整える。大人の男としてのマナーを身につける。会話術も身につける。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしてライブに通う内に……嗚呼、幸甚の至りである!彼女が顔を覚えてくれた!握手会では、「いつもありがとう。○○さんだよね。今日のシャツ、素敵だね♡」なんて言ってくれるようになる。さらに次の握手会では、彼女がそっとメモを差し出した。そこには……嗚呼、彼女の電話番号が書いてあった!

嘉村 ほぉ!

三葉 とまぁ、こうして主人公の努力は実りました。そしてそれを傍で見ていた彼のオタク仲間が刺激を受ける。「ぎょっ、仰天でござる!よーし、拙者だって……!」ということで、ある者は自分もアイドルと付き合おうとしてストーカー紛いのことを始める。また別の者は、密かに好意を寄せていた会社の同僚に告白する。……が、2人とも撃沈。1人は警察に捕まってこっぴどく説教を食らい、もう1人は「ハァ?キモいんですけど!死ね!」と罵倒された。彼らは主人公を逆恨みして……。

嘉村 殺す、と。

三葉 ええ、その通りです。

嘉村 なるほど……。まったく逆恨みというのは、恐ろしいものですねぇ。

三葉 以上、「『アメリカン・ビューティー』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「アメリカン・ビューティー」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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