「世界を救ったヒーロー」はなぜ破滅するのか?|『レイジング・ブル』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「レイジング・ブル」をベースに新しい物語を妄想します。
※「レイジング・ブル」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「レイジング・ブル」は、「ボクシングの世界王者を目指す男が、夢を叶えるべく『代償』を支払うが、その『代償』ゆえに破滅する物語」ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「レイジング・ブル」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『レイジング・ブル』 ~『戦闘ロボットのパイロット』編(1)」です。
嘉村 戦闘ロボットのパイロット!
三葉 「レイジング・ブル」と比較すると以下のようになります。
三葉 最初に、「案①」の世界観を2つご説明させてください。すなわち……【1】「パイロットが搭乗するタイプの巨大戦闘ロボット」が実用化されている、【2】人類はその戦闘ロボットを使って何者かと戦っている(人類同士の戦い、外敵との戦い etc.)。
嘉村 ふむ。
三葉 大雑把に言って、「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」のような世界だとご認識ください。……まぁ、両作品に登場するのは厳密には「モビルスーツ」と「汎用人型決戦兵器」ですが、ここではざっくり「ロボット」ということで。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さてそんな世界で……主人公は、女性23歳。夫と2人暮らし。結婚してまだ半年のラブラブカップルです。彼女は大学卒業後、戦闘ロボットを擁する軍事組織(「ガンダム」で言うところの「地球連邦軍」、「エヴァンゲリオン」で言うところの「NERV」)に入隊。1年ほど研修を受けて……そして今日、辞令が下った「おめでとう。きみはパイロットに選ばれた」。
嘉村 ほぉ。
三葉 戦闘ロボットは最重要兵器です。つまり人類の未来は、そのパイロットの双肩にかかっていると言っていい。そう、戦闘ロボットのパイロットとはまさにヒーローなのです!多くの子どもが夢見る職業です。主人公も例外ではない。いつか私も……と願ってきた。その夢が叶ったのだ!主人公は大喜びです。無論、夫も喜んでくれる。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そしてパイロットとしての生活が始まりますが……何しろ、人類の明日を担っているわけですからね。万一のことがあってはならない。彼女は、規則正しい生活を心がけるようになります。
嘉村 ほぉ……と言うと?
三葉 例えば、睡眠時間はきっかり8時間。早寝早起きを厳守。緊急出動に備えて、酒は一切断つ。栄養バランスを考え、外食はできるだけ控える。
嘉村 なるほど。
三葉 その結果、主人公はパイロットとして大活躍します。先輩らに劣らぬ働きを見せる。
嘉村 ふむ。
三葉 ところがその一方で、夫と過ごす時間が減ってくる。夫は一般的な会社員ですからね。残業することだってある。しかし主人公は、定時に眠ってしまう。また、一緒に酒を飲んだり、外出したりすることもなくなる。さらに「ごめん。疲れを残したくないから……」ということでセックスの頻度も激減。
嘉村 ははぁ……。
三葉 夫は少し寂しそうですが、愛する妻のためです。致し方がない。受け入れる。問題は主人公の方で……夫との関わりが減る中で、彼女は欲求不満に陥っていく。
嘉村 あー……まぁ、新婚ですもんね。
三葉 ええ、そうです。その上、「夫だって欲求不満に違いないわ。まさかあの人、浮気してないわよね……」と不安になってくる。そしてその結果、「夫への独占欲」や「『浮気しているのでは?』という猜疑心」、そして「夫の周りの女性への嫉妬心」を抱くに至る。
嘉村 ふむふむ。
三葉 「最近、随分残業が多いのね。その割にはあまり疲れてないようだけれど……一体何をしているのかしら!」と嫌味を言ったり、たまにデートに出かければ「いま、あの女の胸を見たでしょ!止めてよ、嫌らしい!」とヒステリックに叫んだり、さらには「見たわよ!今朝ゴミを出す時、お隣の奥さんと楽しそうに話していたでしょ!浮気しているに違いないわ!」と妄想めいたことを言い出す始末。
嘉村 ふーむ……。
三葉 当初は「重責だ。無理もない。ストレスが溜まっているのだろう」と寛大だった夫も、次第にうんざりしてくる。そしていよいよ耐えかね、離婚届を残して家を出てしまう。主人公はどんどん不安定になっていく。夜眠れず、睡眠薬を常習する。太る。肌が荒れる。メイクやファッションはいい加減になっていく。
嘉村 あー……。
三葉 それでもパイロットとしての任務だけはしっかりこなしていたのですが……やがて、上司から呼び出される「……少し休みをとりたまえ」。主人公は食い下がる「いえ、大丈夫です!私は戦えます!」。上官が主人公の肩を叩く「ハッキリ言おう。いまのきみに人類の未来を託すことはできぬ。これは命令だ。内勤に戻ることを命じる」。主人公はショックを受ける。夫を失い、平穏な日常を失った彼女には、最早戦闘ロボットしかなかったのです。「人類のために戦っている」ということだけが、彼女の誇りだったのです。しかしいま、それすら失った。間もなく彼女は軍事組織を辞め、どこかへ旅立って行きました。彼女のその後を知る者はいない。……で、物語は幕を閉じます。
嘉村 なるほど。
三葉 つまり主人公は、「夫と過ごす時間やセックスを制限する」という「代償」を支払うことでヒーローになりましたが……その「代償」ゆえに強烈な「独占欲・猜疑心・嫉妬心」を抱き、それが原因でやがて破滅に至ったのでした。
案②
嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。
三葉 はい。「案②」は、「『レイジング・ブル』 ~『戦闘ロボットのパイロット』編(2)」です。
嘉村 ほぉ!
三葉 まずは、「レイジング・ブル」との比較表をご覧ください。
三葉 世界観は「案①」同様です。すなわち、戦闘ロボットが実用化されており……そして、主人公はそのパイロットです。
嘉村 ふむ。
三葉 彼は勇猛果敢に戦い、そして活躍する。誰もが、彼を賞賛する。「いつか世界を救うヒーローになりたい」という彼の夢は実現したのだ!
嘉村 ふむふむ。
三葉 ところが……次第に歯車が狂い始める。すなわち、自分ばかりが命がけで戦っていることに不満を感じるようになるのです。……なぜオレだけが?なぜ他の連中は安全なところにいて、オレに文句ばかり言うんだ?なぜちょっとミスをしただけで、嫌味を言われなければならないんだ?何もできぬ腰抜けどものくせに!
嘉村 なるほど……。
三葉 かくして主人公は、周囲の人にきつく当たるようになります。戦闘をサポートする内勤スタッフに対して、「おい!さっきのあの指示は何だ!オレを殺す気か!テメェをぶち殺すぞ!」と詰め寄ったり。
嘉村 ふーむ。
三葉 また、酒やドラッグに溺れたり。
嘉村 ははぁ……。
三葉 間もなく彼は傷害事件を起こし、逮捕・収監される。無論、パイロットのライセンスは剥奪。こうして彼はすべてを失ったのでした。
嘉村 ふむふむ。
三葉 つまり、主人公は「命がけで戦う」という「代償」を支払うことでヒーローになりましたが……その「代償」ゆえに、強烈な不満や怒りを感じ、やがて破滅に至ったというわけです。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『レイジング・ブル』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
続きはこちら!!
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(担当:三葉)
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