転生者よ、ハーレムを作っている場合ではない！！｜『スパイダーマン』（3）

2020年2月28日 18:01

テーマ発表！！

　第1回、第2回に引き続き、映画「スパイダーマン」をベースに新しい物語を妄想します。

※「スパイダーマン」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。

妄想開始！

嘉村　「スパイダーマン」は、特別な「力」を授かったヒーローが、「力」を持つがゆえの「責任」を理解し、それを果たそうとする物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは？」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう！

三葉　承知しました。

嘉村　前回ご紹介したのは、「『スパイダーマン』　～『不良たちの甲子園』編」でした。

案②

嘉村　それでは「案②」にまいりましょう！

三葉　はい。「案②」は、「『スパイダーマン』～『ハーレムを失った転生者』編」です。

嘉村　ハーレムを失った……？

三葉　詳細をご説明する前に、「スパイダーマン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを振り返っておきましょう。

三葉　……ですね（より詳しくは第1回の記事で）。

嘉村　ふむふむ。

三葉　それでは、「案②」のストーリーをご紹介しましょう。舞台は異世界、そして主人公は転生者です。

嘉村　つまり、「異世界転生もの」ですね。

三葉　主人公は、元の世界では冴えないオッサンでしたが……転生後の世界では、それはどうでもいいことです。重要なのは、転生時にどのような能力を授かったか。

嘉村　確かに。

三葉　主人公の場合は……コングラチュレーション！信じがたいほどの「耐久力」と「学習能力」を授かりました。

嘉村　「学習能力」と言うのは……。

三葉　「物覚えが異常なほど速い」という能力です。例えば、一般的には「実戦で役立つレベルに到達するには、剣を1万回素振りする必要がある」としましょう。ところが主人公の場合はわずか3回で十分！……なんて具合ですね。

嘉村　なるほど。

三葉　つまり本人のやる気次第では、とんでもないスピードで剣聖やら大魔術師やらに成長することができるチート能力を得たわけですが……。

嘉村　ふむふむ。

三葉　主人公は、剣聖にも大魔術師にもなりませんでした。

嘉村　ほぉ……。

三葉　それでは、我らが主人公は何をしたか？……彼はスキル「男性的魅力」を限界まで高め、ハーレムを作りました。そして街外れの田園地帯に屋敷を構えると、12人のかわいらしい幼女に囲まれて、のんびりと暮らし始めたのでした。

嘉村　うーむ……「異世界スローライフ」というヤツですね。まぁ、気持ちはわからなくもありませんが……せっかくのチート能力が宝の持ち腐れという気がしますねぇ。

三葉　さて、ここで改めて「スパイダーマン」のストーリー構造を振り返っておきましょう。

嘉村　えーと……主人公が転生し、チート能力を得たのが上図の【1】ですよね。彼は「力」を得た。

三葉　はい。

嘉村　しかし、その「力」を私欲（ハーレム、スローライフ）のために使っている。これが【2】。つまり次に来るのは……。

三葉　ええ、「罰」ですね。ということである日、主人公らの暮らす屋敷にドラゴンが襲来します。

嘉村　ドラゴン！

三葉　おそろしく強く、そして攻撃的なヤツです。あっという間に屋敷は破壊され……ドラゴンは去った。間もなく、ガレキの下から主人公が這い出してくる。彼は無傷です。神懸った「耐久力」を持っていますからね。

嘉村　ふむふむ。

三葉　しかし、彼がかわいがっていた女の子たちはそうはいきません。可憐も花穂も衛も咲耶も雛子も鞠絵も白雪も鈴凛も千影も春歌も四葉も、そして亞里亞も……みな死んだ！

嘉村　……あー、なるほど。主人公は「シスタープリンセス」のファンだったんですね。だから、幼女を集めてハーレムを作ったわけだ。

三葉　主人公は慟哭する。彼が愛した幼女たちの声が蘇る。「お兄ちゃん」「お兄ちゃま」「あにぃ」「お兄様」「おにいたま」「兄上様」「にいさま」「アニキ」「兄くん」「兄君さま」「兄チャマ」「兄や」。「ウォー！オレのせいだ！オレがみんなを殺したんだ！オレが、戦闘用スキルを身につけていればみんなを守れたのに！」。

嘉村　まぁ……確かに迂闊ですよね。チート能力「学習能力」を持つ彼なら、剣技でも魔法でも身につけることができたわけですから。

三葉　主人公は悔いる。胸が張り裂けそうだ。苦しみのあまり、大酒を飲む。ドラッグをやる。生活は荒れ果てていく。もう死んでしまいたい！……と、そんな時です。夢の中に幼女たちが現れた「お兄様、同じ過ちを繰り返さないで。私、お兄様を信じています」。主人公は目を覚ます。「同じ過ち」……？彼はハッとする。「オレはなんてバカなんだ！せっかく授かったチート能力を、またも無駄にするところだった」。かくして彼は立ち上がった。

嘉村　ふむ。

三葉　チート能力を活かして何をするのか？……決まっている。人助けだ！諸国を漫遊し、困っている人を助けるのだ！ドラゴンやらゴブリンやら、そして魔王やらも討伐してやろう！

嘉村　水戸黄門みたいですね。

三葉　まぁ、似たようなものですよ。

嘉村　なるほど。

三葉　主人公はまず、チート能力「学習能力」を活かして、様々なスキルを獲得しました。そして旅に出る。こうして彼は「力」を善用するようになったわけですが……様々なトラブルが降りかかります。

嘉村　ほぉ。

三葉　第1に、誰1人として彼に相談を持ちかけてこないのです。

嘉村　……ん？

三葉　街に到着すると、主人公は広場や酒場など人が集まっている場所へ向かう。そして「お困りの方はいらっしゃいませんか？」「お力になりますよ」「オニイサン、いかがです？」「あの……オネエサン」と声をかける。だが、ことごとく無視されてしまう。

嘉村　いや……メッチャクチャ怪しいですもん。

三葉　仕方ありませんよ。だって、元の世界では人付き合いが苦手なオッサンだったんですよ。転生しようとも、コミュニケーション能力は低いままなのです。

嘉村　ははぁ……。

三葉　「じつは私は転生者なのです！」「お任せください！チート能力持ちですよ！」と名乗ってみても、みな胡乱な目を向けるばかり。

嘉村　うーむ……。

三葉　しまいにはナンパやスリと勘違いされ、賞金首になってしまう。

嘉村　……。

三葉　主人公の心が折れかける。が、再び幼女たちが夢に現れて励ましてくれる「お兄様、七転び八起きですよ」。

嘉村　……幼女で、かつ死人だというのに、出番が多くて大変ですね。

三葉　主人公は立ち上がる「クソ！諦めないぞ！オレのチート能力を絶対に有効活用してみせる！」。彼は旅を続ける。次第に人付き合いが上手くなる。相談を持ちかけられるようになる。そして……嗚呼！ついにやった！魔王軍四天王の1人を倒すに至りました。

嘉村　おー！

三葉　さて……「スパイダーマン」のストーリー構造を再びチェックしてみましょう。

嘉村　ふむふむ。幼女らを失ったのが【3】。人助けを開始したのが【4】ですよね。なかなか上手くいかずに苦心するものの、やがて大きな成果を上げるに至る。これが【5】と【6】。

三葉　ええ、その通りです。

嘉村　つまり、次が最後のエピソードですね。

三葉　はい。魔王軍四天王の1人を倒した後のことです。主人公のもとに、1人の幼女が駆け寄ってきました「あんちゃん、カッコよかったよ♡」。四天王に捕まり、奴隷として酷使されていた幼女です。彼女は主人公に抱きついた「あんちゃんは私の王子様だね♡」。主人公がうめく「ううっ！」。

嘉村　……シスコンめ。

三葉　主人公の心の中の悪魔が囁く「お前はもう十分頑張ったじゃないか。何しろ、四天王の1人を倒したんだ。ここらでスローライフを再開したって、バチは当たらねぇだろうよ。人生楽しんだ者勝ちだぜ」。

嘉村　あー……。

三葉　しかし……主人公は悪魔に打ち勝ちます。「世界は、まだまだオレのチート能力を必要としているはずだ」。主人公は幼女に別れを告げ、旅立った。

嘉村　ふむふむ。

三葉　正義のためには個人的な幸福を犠牲にすることも厭わない。……主人公はまさにヒーローになったと言えるでしょう。

嘉村　なるほど。

三葉　以上、「『スパイダーマン』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました！

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　「スパイダーマン」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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