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エッセイ:大ちゃんは○○である60

新しい道として僕が選んだのは介護の仕事だった。
では、なぜ介護業界だったのか?
それには二つの理由がある。
正社員で働いたことのない僕にとって、
『正社員』というハードルは高かった。
これといった資格を持っていたわけでもなく、持っていた資格といえば普通免許ぐらい。
スキルがあるわけでもない。経験があるわけでもない。
だからといって何でもいいというわけでもない。
興味のある職種で正社員採用のあるところを探してみたところ
出てきたのが『介護』の仕事だったのだ。
無資格でもOKという求人が多かったのも魅力で、
僕が介護業界の扉をノックしてみようと思った一つ目の理由がこれだ。
自分の中の選択肢がとても少なかったことと、
間口が広かったことが合致していたということだろうか。
二つ目の理由は、「臭いこと言ってんなあ」と思われてしまいそうだが、
『人が好き』『おじいちゃん・おばあちゃん』が好きということだった。
祖父母と一緒に暮らしたことはなかったが、
幼い頃からとても可愛がってくれた祖父母のことは大好きだったし、尊敬もしていた。
そんな祖父母に重ね合わせて、
戦前から戦後の日本をたくましく生きてきた高齢者の支えや力になれればという思いが少なからずあったのかもしれない。
人は生まれ、必ず死ぬ。
命あるものには必ず終わりがくる。
多種多様な人生を送ってきた人達が、いわゆる老後というものを迎え、
最期に『楽しかった』という思い出を携えて向こうへ行くことができたなら。
縁あってその老後のほんのひとときでも共に過ごし、笑顔を共有することができたなら。
こんな素敵なことはないかもしれないと思った。

つづく

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