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今ならYoutubeで観れる!Jホラーの最高傑作「リング」(1998)

よもや、この作品のレビューを書くことになるとは思わなかった。

今やネタにされがちな貞子ですが、第一作の恐怖は絶対的。
紛れもなく和製ホラー映画の最高傑作です。

2023年11月29日現在、なんとYoutubeで全編無料配信中。これを機に、本作のレビューを書いてみようと思います。

ジワジワ来る恐怖こそが、Jホラーの最高到達点

この作品が他のJホラーに比べて何が優れているかって、なんと言ってもジワジワ来る恐怖感。これに尽きます。

Jホラーの傑作といえばこの「リング」以外に「呪怨」シリーズがありますが、あっちは言わば映画版お化け屋敷なんですよ。
溜めて溜めて、女や子供の幽霊が音ともに飛び出てくる。
確かに怖いは怖いんですけど、あれは『反射』だろって部分もある。
誰だって、怖い顔した幽霊が効果音とともに飛び出してきたらそりゃ怖いですよ。

ところが、この「リング」はそんな映画とは一線を画した恐怖感を持っている。ワンカットワンカットのカメラアングル、画質、演出。なんか、全てがイヤな感じなんです。

この作品の恐怖シーンって、実は大きく分けると2つぐらいしかありません。
一つは有名な後半の貞子がテレビから出てくるシーン、もう一つは始まって1/3辺りにある押入れから女子高生の死体が出てくるシーンです。
この2つ以外、怖いものが急に出てきてワーッ!みたいなシーンはほとんどない。

にも関わらず、本作は1時間35分の間ずっと怖い。
これが、本当にすごいことなんですよ。


シンプルにストーリーが面白い

もう一つ、本作と他のホラー映画には大きな違いがあります。
それが、ストーリーの面白さです。

僕は原作小説も読んでいるんですが、そもそもそれが滅茶苦茶面白い。
原作小説はホラー要素薄めで、サスペンスとして面白いんですよね。
前述の貞子がテレビから這い出るシーンのような、露骨な心霊描写はないんですね。シンプルに『呪いのビデオ』の秘密や呪いを解く方法に迫っていく訳です。

『呪いのビデオ』とは何なのか、これを作り出した山村貞子とは何者なのか…紐解かれていく秘密。
そして、その根底に漂う恐ろしいまでの怨嗟の念。

おそらくほとんどの人が知っていると思うのでネタバレしますが、呪いを解く方法は『呪いのビデオをダビングして、別の人間に観せること』

この設定がめちゃくちゃ怖い。
要は、貞子の呪いを拡散させるのに協力した人間だけが許されるということですから。

呪いを解いた人間も貞子の共犯者であり、複雑な気持ちを抱いたまま生きていくことになることが容易に想像できる。この設定が、物語に深みを生み出しています。

途中まではサスペンスやミステリー的な面白さに惹きつけられるけど、最後は強烈な人間の悪意による恐怖感が漂う。
このバランス感が素晴らしいんですね。

映画ならではの味付けもお見事

この面白い原作に、映像的な面白さを付与した映画版のアレンジも上手い。

原作からの大きな変更点の一つは、主人公の性別を変えたこと。
実は、原作は主人公である男性と友人が貞子の呪いの秘密を紐解いていく。メインは男性2人組なんですよ。

映画版は主人公を女性に変更し、2人の関係性も元夫婦ということになっています。これがうまかった。

原作版も渋さがあって素敵なんですが、やっぱ男が恐怖に慄く様子ばかりでは画が保たない。笑
洋画のホラー映画も女性が主役のものが多いですが、要は華やかさが欲しいわけですよね。

主人公に当時人気が鰻登りだった松嶋菜々子を起用し、ドロドロとした暗い物語に陽の要素を付与。
特殊な能力を持ち、やや浮世離れした魅力を放つ元夫には、演技派の真田広之。
この二人、年齢も身長差も夫婦としてはどこか歪なのに、やけにハマっています。これぞキャスティングの妙。
主人公コンビの関係性を夫婦にしたことで、二人の息子が呪いのビデオを観てしまうことの悲壮感もレベルアップ。
映像作品としてのメリハリがつけやすい設定改変が施されています。

前述の通り、テレビから這い出てくる貞子も映画オリジナルのシーン。
当時死ぬほどパロられたシーン
ですけど、当時この場面を観た時のインパクトは計り知れませんでした。
当時8歳の僕的にはめちゃくちゃ怖かったし、観た後しばらく一人で寝れなかったですもんね。

実は、このシーンの貞子の不気味な動きは実際の動きを逆再生にしたもの。
つまり、撮影時は貞子が這いながらバックでテレビに戻っていくのを撮っていた、ってことですね。そう考えるとシュール。

で、その後に写る貞子の目のシーンのアップ(これが怖い)は、まつげを全部抜いた助監督の目だという。この話が一番ホラーだろ。

しかしながら、この作品をホラーとして昇華するためにはこのシーンに絶大なインパクトが必要。

そんか大事な場面を、逆再生やらまつ毛を抜いた目やら工夫を凝らして名シーンに仕上げたスタッフには本当に頭が下がる。
やっぱ、映画作りってアイデアなんだなぁ。


今では実現不可能な豪華キャストも見所

前述の通り、主演には当時人気絶頂だった松嶋菜々子。
今見ても、圧倒的にデカいのに圧倒的にかわいい。どう見ても母親設定には若過ぎるけど、かわいのでオールOK。ホラーの主役なんて、綺麗で演技が下手じゃなければそれで良いのだ。

相手役の真田広之は、重みのある演技で作品にオーラを付与。
作品全体を一段上に押しやる役割を果たしつつ、最後しっかり貞子にやられる役も務め上げる。
このシーン、彼の芸達者ぶりを感じられて好きなんですよ。
死の恐怖に慄きながらも、頭の良い人物らしくどこか冷静。ただ絶叫して這い回るだけではない、リアリティのある演技でした。

真田広之演じる高山竜司を慕う女性として起用されているのは中谷美紀。
正真正銘人間の役
なんですけど、何処か耽美な存在感を放っていました。

そして、本編では最初に貞子に呪い殺される女子高生を演じたのが竹内結子。
そして、物語冒頭に少しだけ登場する端役に松重豊、柳ユーレイ。

これだけの豪華キャスト、今揃えるのは難しいでしょう。そういった意味でも見所のある作品です。

というわけで、書き始めると思った以上に力の入ったレビューになりました。
邦画史上に残る傑作だと思いますので、映画好きな人はぜひ観てみてね。
…思ったより怖かった、というクレームは受け付けません。

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