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本について

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本について書いたものをまとめました。
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記事一覧

読書日記(2024年4月)

読書日記(2024年4月)

めずらしく初読の本(しかも小説)の割合が高い4月。

薔薇の中の蛇|恩田 陸大好きなシリーズなのに、3冊目があるのを知らなかった!
最近本に対するアンテナが本当に鈍っているな。
英国アッパー層のお家騒動、霧の中の猟奇殺人、カルト宗教の気配、美しくミステリアスな女。満腹。恩田陸の書く「異国」はなぜだかヨーロッパ圏であってほしい、しかもフランスというよりはイギリスであってほしい……。
前半の耽美さに期

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読書日記(2024年3月)

読書日記(2024年3月)

なんだかよくわからないうちに過ぎていった大阪最後の月。
本を読んだ記憶があまりないのだけれど、振り返るとまぁいつも通り読んでいた。なんか新潮文庫が多い。

大阪の自宅に置いてきた本もあり、背表紙の写真と本文の引用は省略。今後も大阪と東京を行き来することになるので、このあたりどうしようかな、と少し思案しています。

焼き餃子と名画座平松 洋子佐久間ゆいさんと一緒に北浜であなごを食べたとき(おいしかっ

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読書日記(2024年2月)

読書日記(2024年2月)

異動の内示に迫りくる年度末にと心身ともにあわただしくて、読み終わったときにあかるい気分になるような本ばかり、選んで読んだ2月だった。

起きられない朝のための短歌入門|我妻 俊樹・平岡 直子はやぶささんのレビューをきっかけに手に取った本。
おもしろすぎて読んだ直後に個別で感想を書いた。

短歌というもの自体の魅力に引き込まれた話は上の記事でさんざんしたのだけれど、たとえ短歌に興味が持てなかったとし

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つまみ読みの楽しみ

つまみ読みの楽しみ

私、ほとんど本を通読してない。

noteで読書日記をつけ始めて、気づいたことである。
読書日記というのは、毎月、印象深かった本を記録している記事のこと。本を読むたびに感想をnoteの下書きにメモしておいて、月が終わったらまとめて清書している。
読んだ本は本棚の一箇所に固めておいて、月末になったらそのエリアの写真を撮り、アイキャッチにする仕組み。記事を開かなくても、自分がいつ何を読んだか大体わかっ

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ことばの形をした彫刻|『起きられない朝のための短歌入門』を読む

ことばの形をした彫刻|『起きられない朝のための短歌入門』を読む

はやぶささんの感想文で俄然読んでみたくなった『起きられない朝のための短歌入門』、とても面白かった!

入門と名がついてはいるけれど、用語や技法について直接的に説明されるというものではない。本の中ではふたりの歌人が「短歌」と、それを作るということについてひたすら話し込んでいる。もちろんその対話は読者の目を想定してはいるのだろうけれど、そうとは思えないほど自然に、例えば酒場のカウンターや喫茶店で話し込

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読書日記(2024年1月)

読書日記(2024年1月)

さらさら読める再読本や、口当たりのいいエッセイばかりを読んだひと月だった。
仕事が忙しすぎて……ということでは全然なく、バルダーズゲート3にドはまりしているせいである。探索やゲーム内の書籍を読むのが楽しすぎて、年始から100時間以上プレイしているのにクリアまでまだだいぶ遠い。助けて。いや、やっぱ助けないで。

置かれた場所であばれたい潮井 エムコnoteでフォローしている潮井エムコさんのエッセイ集

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#名刺代わりの小説10選 いまむかし

#名刺代わりの小説10選 いまむかし

大好きなタグ「#名刺代わりの小説10選」、高校生~大学生~現在の私3人分をお届けいたします。
なんでそんなことやってんの? という経緯はこちらから。

予想以上に好みだったり、その時大事にしているものだったりの変遷が見えて、面白かった。今後も定期的にリストをメンテナンスすると、振り返るのが楽しそう。

以下、題名のみのリスト。
その下の段落から1冊1冊コメントを付けている(とても長い)ので、もしお

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「#名刺代わりの小説10選」タグの唯一無二さを語りたい

「#名刺代わりの小説10選」タグの唯一無二さを語りたい

「#名刺代わりの小説10選」というタグをご存知だろうか。
主にTwitterの、読書や本について発信しているアカウントで見ることの多いハッシュタグだ。

私はこれが好きで、ときどき辿って見る。挙げている本からその人の人となりが垣間見える気がして楽しいし、次に読みたい本を見つけるヒントにもなる。noteでも、これをテーマに書かれた記事をときどき読みに行く。

そんなわけで、実は先日「名前を変えた」と

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読書日記(2023年12月)

読書日記(2023年12月)

年の瀬の忙しさにふわふわと心も急いて、本を一冊読み通す、ということがなかなか難しかった12月。
仕事や家事の合間にエッセイや短編集をちょこちょこつまみ読みすることがいつにもまして多くて、それはそれで楽しかったな。

道化むさぼる揚羽の夢の|金子 薫ディストピア小説という触れ込みと、まさしく夢見るような美しい題名のギャップに惹かれて手に取った。
強制労働の現場を命がけのユーモアで乗り切ろうとする、と

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年末のご挨拶と、出会ってよかった本5冊

年末のご挨拶と、出会ってよかった本5冊

帰省中の新幹線のなかでこれを書いています。
みなさま、今年も大変お世話になりました。note2年目、大変たのしく書けました。

まる2年書くなかで自分の性質がちょっと変わってきたな、ということがあって、「新しいことをやってみる」ということへの抵抗が薄れてきた気がしています。仲良くしてくださるかたと実際にお会いしてみたり、メンバーシップに入ってみたり、コンテストや企画に参加してみたり。一年目の、どこ

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つめたいバターを舌に乗せ|柚木 麻子『BUTTER』からの連想

つめたいバターを舌に乗せ|柚木 麻子『BUTTER』からの連想

柚木 麻子『BUTTER』を読み返したら、冷蔵庫から出したてのバターをひとすくい、そのまま舌に乗せたくなった。

愛人業の果てに複数人の男たちの殺害容疑を掛けられた「若くも美しくもない」女――記憶に新しい実在の事件をモチーフにして、容疑者と週刊誌記者、その友人という三人の女を軸に物語が進んでいく。

作品の中で頻繁に引かれる『ちびくろさんぼ』の結末が示唆するとおり、この小説のキーワードは「変容」だ

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読書日記(2023年11月)

読書日記(2023年11月)

読んだ本の厚みがだいたい一緒で、背表紙の並んだ様子がなんだかころころかわいい11月の読書日記。
すずめがもこもこ丸くなる季節になりましたね。皆さんの推しの「冬毛の動物」はなんですか(ほんもののライチョウをいちど見てみたい)。

BUTTER|柚木 麻子寒いし何か高カロリーなものが読みたい、と思って手に取った1冊。4回くらい読み返しているけれど今回がいちばんおもしろかった(これだから再読はやめられな

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読書日記(2023年10月)

読書日記(2023年10月)

読書の秋、食欲の秋にあやかったように、小説とフードエッセイに片寄った10月の読書記録。
いつもより冊数が多めなのは、何度も読み返した本(サクサク読める)が多いから。新しく読んだ本は2冊しかなかったな。

おいしいごはんが食べられますように|高瀬 隼子芦川さんみたいな人っているよね、とうなずきながら、具体的な顔がなにひとつ思い浮かばないのはなぜなんだろう、と読み返すたびに思う。私が今まで感じてきた「

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読書日記(2023年9月)

読書日記(2023年9月)

これの翌日の記事が読書日記って正気か? という感じですがいつも通り記録していきます。投稿のタイミングを見誤ったわね。

現代「ますように」考3|天狗ノ国文フリ大阪で買った本。
清姫特集、どんな感じなのかしら、と思っていたら清姫が「草履を脱いではだしになった瞬間」にフォーカスしていて笑う。癖がつよすぎる。
「なんでそこ!?」という目の付け所から、履物というモチーフが持つ意味合いについて鮮やかに接続さ

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