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ロバート・ムーア『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』(岩崎晋也訳、エイアンドエフ)を読んで

ロバート・ムーア『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』(岩崎晋也訳、エイアンドエフ)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 タイトルのとおり、『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』を読みましたので、感想を書いていきます。

 私は歩くのが好きなんですよね。これまで歩くことに少なからぬ回数救われてきたし、今もまいにち実践していることだし、歩くことについて考えてもいます。私は『Tarzan』という雑誌をけっこう読むのですが、『Tarzan』では1年に1回ほどの頻度でウォーキングについての特集

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ラッセル・A・ポルドラック『習慣と脳の科学』(神谷之康監訳、児島修訳、みすず書房)を読んで

ラッセル・A・ポルドラック『習慣と脳の科学』(神谷之康監訳、児島修訳、みすず書房)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 タイトルのとおり、『習慣と脳の科学』を読みましたので、感想を書いていこうと思います。

 本書を読もうと思ったのは、副題にある「どうしても変えられないのはなぜか」という問いが私にとってちょっとしたテーマになっていたからです。先月『依存症と人類』という本を読んだのですが、それを読んだのと同じような関心からです。私は、なにかを始めるよりも、やめることのほうがよっぽどむず

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『銀河英雄伝説』の言葉

『銀河英雄伝説』の言葉

 こんにちは。柚子瀬です。

 先日、『銀河英雄伝説』(以下『銀英伝』という)正伝・外伝をひととおり読み終えました。『銀英伝』に出会ってからまだ日が浅いですが、この作品には並々ならぬ思い入れがあります。原作からではなくアニメから入ったのですが、110話もあるアニメの正伝は気づいたらもう4,5回はみてます。だからなのか、個人的に今はアニメの印象がけっこう強いです。原作をひととおり読んで、アニメの良さ

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白紙の名言集③

白紙の名言集③

 こんにちは。柚子瀬です。

 今回は「架見崎」シリーズほか、河野裕さんの作品を中心に、私がこれまで読んだ本の中で心に残っている言葉を紹介しようと思います。メモが散逸してしまったりしているため、ここで紹介する以外にも少なくない数心に残っている言葉があります。そのところをあらかじめ留意していただけますと幸いです。

河野裕『さよならの言い方なんて知らない。』(新潮文庫nex,2019)

河野裕『さ

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白紙の名言集②

白紙の名言集②

 「階段島」の心に残っている言葉をみたら、「サクラダリセット」のも気になってしまいまったので、引き続き更新します。こちらは「階段島」と比べると数は少ないです。おそらく心に残っている言葉はたくさんあるのに、メモし忘れているのかもしれません。気づき次第、追記するつもりです。

河野裕『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』(角川文庫,2016)

河野裕『魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラ

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白紙の名言集①

白紙の名言集①

 こんにちは。柚子瀬です。

 私が「階段島」「サクラダリセット」で心に残っている言葉を紹介しようと思います。単に私が見返したいだけっていうのもあるのですが、それはナイショでよろしくお願いします。

 今回は「階段島」シリーズから。

河野裕『いなくなれ、群青』(新潮文庫nex,2014)

河野裕『その白さえ嘘だとしても』(新潮文庫nex,2015)

河野裕『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』(新潮文庫

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國分功一郎『近代政治哲学』(ちくま新書)を読んで

國分功一郎『近代政治哲学』(ちくま新書)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 先日、國分功一郎さんの『近代政治哲学』(ちくま新書)を読み終えたので、その感想を書いていこうと思います。今年はX(ツイッター)に簡単な感想──伝えられる情報量が限られているのでもはや読書報告といえるかもしれない──を投稿するだけでなくて、なるたけnoteにきちんとした感想を投稿していけたらいいなと考えています。

 まず、なぜ本書を読もうと思ったかというと、第一に國

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内田樹『そのうちなんとかなるだろう』(マガジンハウス)を読んで

内田樹『そのうちなんとかなるだろう』(マガジンハウス)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 タイトルのとおり、内田樹さんの『そのうちなんとかなるだろう』を読み終えたので、感想を書いていこうと思います。

 思い返してみると、内田樹さんの著作に触れ始めたのは昨年のことです。昨年は大学を卒業したのに、進学が決まっていた大学院への進学を断念せざるをえなかったり、4年間続けていたアルバイトを辞めたりと個人的になかなかタフな年でした。時間の流れというのは不思議なもの

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川上未映子『愛の夢とか』(講談社文庫)を読んで

川上未映子『愛の夢とか』(講談社文庫)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 これまで本の感想はツイッターに載せていたのですが、今回離れることになって「さて、本の感想をどうしようか」ということになったんですね。ツイッターに感想を載せる前は読書ノートをつけていたので、今回もう一度つけ始めるというのもありだったのですが、まずはnoteに書いてみるのも悪くないなと思い書き始めた次第です。ツイッターよりハードルは高いので続くかはわかりませんが、とりあ

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山本文緒『自転しながら公転する』(新潮文庫)を読んで

山本文緒『自転しながら公転する』(新潮文庫)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。

 本日、山本文緒さんの『自転しながら公転する』を読み終えました。読んでいていろいろ思うところがあったので、文章を書いていこうと思います。本書は解説をあわせて664頁もあります。けっこうボリューミーですよね。文庫の小説は300頁前後のが多い印象なので、その倍はあります。私が持っているほかの文庫の小説でいうと、中公文庫の『高慢と偏見』が頁数は近いです。比較的長大な物語のた

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私に優しさの美しさと悲しさを教えてくれた物語:「サクラダリセット」シリーズについて②

私に優しさの美しさと悲しさを教えてくれた物語:「サクラダリセット」シリーズについて②

 私が「優しさ」という視座から「サクラダリセット」をみるのはきっと、「優しさ」のような抽象的な言葉には辞書的な意味だけをみるのでは切り取られてしまう方にその本質があるように映るからだと思います。「優しさ」に限らず、「愛」「信頼」「幸せ」等々、私たちが人生を通して選び取る価値の中には辞書で引けばその一義的な意味がわかるものの方が少ないでしょう。「優しさ」とはなにか? これは相当に難しい問題です。

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私に優しさの美しさと悲しさを教えてくれた物語:「サクラダリセット」シリーズについて①

私に優しさの美しさと悲しさを教えてくれた物語:「サクラダリセット」シリーズについて①

 河野裕『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』(角川文庫)から始まる「サクラダリセット」シリーズについて語ることは、私自身について語ることとそう大差ないように思います。noteで便宜的に「自己紹介」を最初に書きましたが、他者を知るのにはその人が大切にしている本を教えてもらい、読んだ方がよっぽど雄弁に物語っているでしょう。そういう意味では、自分が自分について語る「自己紹介」は直接的な方法であ

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「十二国記」を読んで

「十二国記」を読んで

 昨日、『白銀の墟 玄の月』を読み終え、今出ている「十二国記」は一通り読んだことになる。正確にいうと、まだ『魔性の子』は読んでいないので全部とはいえない。ただ『魔性の子』はEpisode 0に位置付けられており、「十二国記」の話自体は『月の影 影の海」から『白銀の墟 玄の月』までなのだと思う。手元にある『「十二国記」30周年記念ガイドブック』をみると、『魔性の子』は「十二国記」からみた蓬莱(日本)

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中村隆之『第二世界のカルトグラフィ』(共和国)を読んで

中村隆之『第二世界のカルトグラフィ』(共和国)を読んで

 人と出会うことで触発されるように、本との出会いも一人の人間の人生を大きく変えることがある。本との出会いの場は種々ある。書店に足を運べばそこには数えきれないほどの書物に圧倒されることだろう。インターネットが発達した今日では、自分の興味に適うジャンルのおすすめ作品をみつけるのも容易い。あるいは、友人に本を薦めてもらうこともあるだろう。

 私が『第二世界のカルトグラフィ』を手に取ったのは、ひとえに著

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