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優雨
2023年7月8日 12:42
あなたの目は驚くほど綺麗だった。星空をうつしたような、雲ひとつない夜空のような、そんな目をしたあなたのことを、もう随分と忘れられないでいる。あなたに出会ったのは、去年の春先のこと。深夜まで開いているカフェに入ったときだった。夜になれば通常のメニューに加えてアルコールが飲めるようになるからと、私が孤独に任せて足を踏み入れた店。時間とともに酔いが回り、ぼんやりとテーブルの木目を眺めていた時にあなた
2023年7月7日 23:38
拝啓この手紙を見つけてくださったあなたへ私が生きている間にあなたに出会いたかったと、心の底から思っています。もしあなたが見つけてくれていたら、私の未来も何か変わっていたでしょうから。何がつらかったの、とあなたは訊くかもしれません。私にもよく分からないのです。どうしてつらいのか。どうして苦しいのか。そもそも、いつからこうなったのかさえ分からないのですから、全体が見えていないのも仕方のない
2023年3月30日 22:40
拝啓突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。あなたに伝えたい言葉が募って止まらなくなってしまったのです。あなたに出会ったのは、桜が散り始めた頃でした。花を寿命、風を時間に見立てた人が、花を散らす風を“春泥棒”と書いていたように覚えています。時が流れて花が終わるのを命に喩えているんだと。あぁ、すみません。話が逸れてしまいました。そう、いちばん最初の話をしていたのでしたよね。私は一冊の
2023年3月16日 23:17
夜に考え事をしてはいけない、というのはよく聞く話だと思う。これは夜の考え事の合間に読んでほしい文章だ。夜中のコーヒーは目が覚めてしまうから、温めた牛乳に蜂蜜でも溶かしながら、のんびりと。夜はいつも、考え込む人に味方をしてくれない。どれだけ部屋を明るくしていても、窓の外はインクを流したように暗いから。長い一日を終えた身体が「いい加減にしてくれ」と声高に叫び始めるから。考えなくて良いと言われた
2023年3月26日 21:55
私は、あなたの居場所を全く知りません。あなたが普段どんな生活をしているのかも知りません。知っているのは、あなたの優しい声と少年のような笑い方だけ。だって、あなたはいつだって画面の向こうにいたから。だから、雑踏の中であなたを探す手がかりは、あなたの声しかないんです。会いたくて仕方がない人を探すのに声しか頼りにならないって、あまりに残酷じゃありませんか。一度でいいから、あなたに会ってみたかった。
2023年3月14日 21:09
「綺麗」と彼女は言った。暑い日のことだというのに、彼女はずっとパーカーを羽織っていた。エアコンがあっても効きは良くなくて、僕の首筋にも、彼女の額にも汗が滲んでいた。「本当に綺麗」と呟く彼女の目は、窓越しの空、そのもっと上を見つめている。目の前に広がるのは、いつもと変わらない夏の空だ。視界の端で、雫が彼女のこめかみを伝って落ちた。逃げてきたのだと、彼女は打ち明けた。大学も、家も、全て捨てるつも