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知らないあなたへ

私は、あなたの居場所を全く知りません。あなたが普段どんな生活をしているのかも知りません。知っているのは、あなたの優しい声と少年のような笑い方だけ。だって、あなたはいつだって画面の向こうにいたから。
だから、雑踏の中であなたを探す手がかりは、あなたの声しかないんです。会いたくて仕方がない人を探すのに声しか頼りにならないって、あまりに残酷じゃありませんか。

一度でいいから、あなたに会ってみたかった。直接話さなくてもいい、この世界のどこかに確かに存在していると分かればそれで良かった。その事実さえあれば、あなたがいなくなってしまっても何とか生きていけそうだったのに。

あなたがいなくなったことを知った日は暖かい日で、綺麗な桜が咲いた日。今日は良い日だったなぁ、と思った矢先にあなたが私の世界からいなくなったことを知りました。せめて桜が咲いている間だけでも、と思ったのは私のワガママなのかもしれません。

あなたは今どこにいるのでしょうか。
どこで、何をしているのでしょうか。
私にはもう知る術がありません。そして、もし知ったとしても、どうすることもできないのです。私の世界から消えてしまったあなたは、最早私とは関係のない人になってしまったのだから。
だから、あなたが幸せであることを願っています。あなたが、世界のどこかで、ちゃんと笑っていることを。油絵のように日々を重ねていることを。

知らないあなたへ。どうか、この言葉が届きませんように。

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