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副室長の涙

 こんにちは。
大学生塾講師のホリードAです。
実は、本日同僚から悲しい知らせを聞きました。
前回の記事でご紹介したことのある、副教室長のSさん(https://note.com/yuto2231/n/n8e0a8b856622)が私たちの教室をやめ、別の教室に異動することになったそうです。理由は教室内における「パワハラ」が原因とのことでした。

 Sさんは今年度から新卒社員として入社し、私たちの教室に副教室長として配属されてきました。しかし、慣れない作業も多く、上司やリーダー講師からは冷たく扱われます。それでもSさんは、何とか「皆さんのお役に立てるように努力する」と自分を奮い立たせて仕事に打ち込んでいました。休憩時間中も、一人で電話対応や面談の練習をしているほど仕事熱心な方でした。そして人何より、人一倍他者に対する思いやりがある方で、講師に対して、目が合うたびに「○○先生、おつかれさま」と声をかけてくれました。Sさんのこうした「暖かみ」は、私たちの殺伐とした職場環境に一種の「光」を与えてくれていました。私が彼から聞いた最後の言葉は以下の通りです。

「講師がお互いをけなしあうんじゃなくて、助け合う教室であってほしいと僕は思う。そのために副室(副教室長)としてできることを考えてみるね。」

 しかし、「出る杭は打たれる」ということなのでしょうか。Sさんは教室内の上層部の人間から忌み嫌われてしまいます。「社員のくせに役に立たない」「いるだけで足かせ」「ろくに仕事もできない人間が理想論を掲げるな」など、聞くに堪えない悪口が絶えることはありませんでした。もちろん、このような悪口を本人の前でいうことはなかったものの、上層部は彼に対して露骨に冷たい態度をとっていました。彼の「優しさ」が受け入れられることはなく、Sさんの心は次第にボロボロになってしまいました。私はSさんの「理解者」に慣れるように心掛けました。「上層部は、厳しすぎますよね。まだ入社したばかりなのに高いクオリティを求めすぎです。」と同情したり、「Sさんが積極的に講師に挨拶をしてくれるおかげで、教室の雰囲気が明るくなった気がします。」とSさんの行動に対する肯定的な意見を言語化して伝えるようにしました。

 しかし、そのような私の心掛けも、結局は無駄となってしまいました。結局Sさんは「パワハラ」に耐え切れなくなり、本部に申し出て別教室に異動してしまいました。そうなる直前、私の後輩が、Sさんが一人で泣いてる場面を見たそうです。23歳の男性が悲しみで涙を流すことなどそうそうないことでしょう。しかも彼は以前に「僕はメンタルが強いから安心して」とも話していたほどでした。そんな彼が涙を流すほど苦しんでいたこと知り、私はひどく心が痛みました。「何か自分にできることはなかったのか?」「どうしたらこの悲劇を避けられたのか?」「どうしたらこの職場を変えられるのか?」「これ以上”犠牲者”を増やさないために、私はどうすればいいのか?」

 考えても考えても、明確な答えにはたどり着けません。
こうして手をこまねいているうちに、また別の”犠牲者”が出てしまうのではないかと考えると、いてもたってもいられません。
授業ではノリノリで解説している自分が、こうした問題の前ではいかに無力かということを意識すると、とても苦しい気持ちになります。

 私が退職する前に、何とかこの問題を解決しなくてはならない、そんな義務感にさいなまれる毎日です。

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