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家族療法超入門

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ケアと書類の深い関係

ケアと書類の深い関係

お祝い代わりの任意後見契約母N子さんとは彼女が80歳になったのを機に本人の希望でいざという時に備えて移行型の任意後見契約の公正証書を作成した。
任意後見契約には3種類あるが、移行型というのは本人の判断能力が保たれているうちは委任契約の形で状況に応じたサポートを行えるため、一番使い勝手がいいとされている。

きっかけは「80歳のお祝い、何がいい?」と私が尋ねたことだ。
この回答が「普通のお祝いはいら

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語用論と哲学の話

語用論と哲学の話

暗黙のルールは差異で浮かび上がる私たちは何気なくことばを話している。きっと大多数の人にとって当たり前すぎてことばを話せない状況など想像もつかないだろう。

しかし、同じニュースに対してもSNSなどの反応を見れば反応は千差万別で、中にはこちらの想像を遥かに超えた書き込みを見かけることもある。

読解力の問題と片付ける人もいるかもしれないが、それだけでは済まないのでは?と最近考えている。もちろん基本的

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ライフサイクルについて

ライフサイクルについて

家族療法について学ぶに当たり、避けて通れないのがライフサイクルという考え方だ。そこで今回はライフサイクルについて私なりの解釈や考えを記したいと思う。

人生の節目に潜む課題ライフサイクルと言われるとピンとこないかもしれないが、日本語で意訳すれば人生の節目とそこで取り組むべき課題と考えればいい。

ライフサイクルについては多くの心理学者たちが述べているが、最も有名なものはエリクソンが提唱したものだろ

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改めて家族について考える

改めて家族について考える

家族療法の話を進めている途中だが、ここで改めて家族とは何かを考えてみたい。

多くの人は家族と言われると両親と子ども(同居していれば祖父母も)をイメージすると思う。つまり

・同居している(利害関係を共にしている)

・血縁や婚姻関係・もしくはそれに準じた関係の人のつながり

というのがポイントになるようだ。

かなり曖昧ではあるが、この2つの条件のいずれかもしくは両方当てはまることが人が家族関係

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家系図を描いてみる

家系図を描いてみる

家族療法を学ぶ上で基本となる考え方は、家族を1つのユニットとして捉え、症状が出ている人をIP(Identified Patient :患者とみなされている人)と呼ぶ。つまり、症状が出ているのは家族の歪みをIPが体現しているのであり、IPの症状を改善させるには家族の関係が変わる必要があるし、家族には変わる力があるという認識なのだ。

私自身大学で家族療法の講義を受けた時もまず初めに自分のルーツを確認

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『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』(河出書房新社)レビュー

『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』(河出書房新社)レビュー

Twitterで見かけて興味を持ったのでリアル書店数店で探したが、見つからなかったためネット書店で購入して読み始めてみた。

正直感想としてはかねてより疑問に感じていたことが話題になっていて「ですよねー!」と共感しきりだったが、経済がジェンダーにこんなにも大きな影響を与えていることを改めて認識できたのは大きな収穫だった。

ただ、ジェンダーを見直せば簡単に解決とはいかない。私がとても納得したのは本

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個人と時間について考えるー家族療法の話の前に

個人と時間について考えるー家族療法の話の前に

昨年旧知の仲であるコーチングバンクの原口佳典氏から「以前村上ちゃんの自宅でやった家族療法講座がメチャメチャ分かりやすかった」と連絡をもらい、この話を元に家族療法についてnoteなどにまとめたら?という宿題をもらった。

考えてみたら発達相談はまさに家族療法のインテーク面談の要素を持っている。もちろん家族療法の技法をそのまま使っている訳ではないが、家族療法や交流分析で学んだことは大いに活用している。

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