貴方はクローンでないと言えますか?
昨日に引き続き哲学系
スワンプマンという思考実験だ。貴方も一度考えてみてほしい。
あなたは沼を訪れていた。しかし死んでしまう!雷に打たれて死んでしまったのだ。
そこで不思議なことが起こる。なんと雷が足元の沼に作用し、分子レベルで寸分違わぬあなたのクローンが生み出されたのだ!
復活したあなたは人格も記憶も引き継ぎ、先程までの脳を全て再現している。これからの人生も今までと変わらぬ様に過ごすだろう。
さて、ここでひとつ疑問がある。この復活したクローン(沼男)は、果たして元のあなたと同じ人間なのだろうか。-スワンプマンとは(ニコニコ大百科)
補足を入れると、この問題ではスワンプマン(沼男)は死んだ元の人間を見ていない。沼に沈んでいったのだ。要するに死んだ本物を認知していない。
これらの前提をもとに貴方がどう考えるか、結論を出してから読み進めて頂きたい。
クローンと本物の違い
結論から言おう。そのスワンプマンは元のあなたと同じ人間である。
それはなぜなのか。
あなたが雷に打たれて死んだ後、スワンプマンが発生するわけだが、スワンプマンからみればあなたが死んだことにすら気付いていない。
スワンプマンは沼に来訪した。その事実だけが残るのである。きっと雷が落ちたという記憶がないか、運良く自分は避けたと考えているだけだろう。これでは記憶が連続して続いている様に思うだけだ。
昨日の投稿に被るが、僕は自分が自分であるという証明に、これまでの経験の有無を重視している。
つまり、過去の記憶があるかという点が大切なのである。
分子レベルで寸分違わぬスワンプマンは、これから起きる出来事すらも元の自分と変わらないものになるだろう。
これにより、クローンと本物には真の違いがないと言える。
クローンの存在を認知した場合
ただ、ここにひとつ例外がある。それはクローンの存在を認知した場合である。
想像してみてほしい。
このnoteを読んでいる貴方は、自分が疑う余地もなく本物であると考えているだろう。
しかし、貴方は就寝する際に布団をめくり、自分と全く姿形が変わらぬ人間が死んでいることを目の当たりにする。
そう、クローンの存在を認知するのである。貴方が布団の中から死体を発見した場合、二つの思考が発生する考えられる。
・布団の中の死体は本物の自分であり、現在の自分はクローンである
・布団の中の死体はクローンであり、現在の自分は本物である。
この2つのパターンは、発見者に死体がクローンである場合と、本物である場合を考えている。
つまり、確証がないのだ。まあ、布団をめくって自分の死体があればそちらをクローンだと思うだろうが。
コーヒーを飲み、冷静になった時に死体が本物であり、自分がクローンである可能性に気づくだろう。
ちなみにこれはスワンプマンにも同じことが言える。違いはそれが沼か布団かというだけだ。
元の人間でなくなる
ここで、定義の擦り合わせを行おう。
貴方は自分が本物であることも、クローンであることも証明することはできない。
現代の技術を使えば検査することができるかもしれないが、ここでは外部の干渉は無いものとして考える。
つまり、自らの思考のみで自分が本物であること、あるいは自分がクローンであることを証明しなければならない。
結論を言えば不可能である。分子レベルで記憶も人格も脳も再現されているクローンであれば、それを証明する術はない。
よって、本物である場合もクローンである可能性は否定できない。
ここから引き起こされる事象は、自らの過去の経験が正しいものであるか証明することができなくなるという事である。
もし、クローンであれば過去の経験が真であるなど誰が証明できようか。
過去が作られたものかもしれない。その考えを抱き、否定できなくなれば記憶の信憑性が薄れ、元の人間とは剥離した思考へと変化していく。
これは思考の素となる記憶の確かさが失われることにより、思考は大きく変化する。
そうなった時に、実際の布団をめくったのが本物であれ、クローンであれ、元の人間とは異なると言える。
おわりに
あくまでこれらは僕の思考実験である。僕を形成しているものは思考であり、その過去の体験であると考えるためこの様な結論に至った。
最後になるが、このスワンプマンは死を認知しない場合に同じ人間であるとした。それに対をなし、死を認知すれば同じ人間ではないといえると結論づけたい。
正確には、死を認知することにより元の人間とは異なる様になる。
長々と読んでいただきありがとう。
2020年12月2日
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