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水鏡

あなたの背中に張り付いた
入浴剤の花の香は
描かれたモノクロの過去を
ふわりと包んでゆく
帰り道を促す響きのような
鐘の音に似て
不思議

あの壁に掛けた絵が
斜光にすっかり焼けてしまう頃
覆われた四角い部分は
変わらぬままにあること
当たり前だと笑わずに
天然の着色を浮かび上がらせる
光と影の合間の筋を
人差し指で共になぞったりして

人は
産まれ堕ちる世界は
選べないけれども
爽やかな風吹く丘を
目指すことはできる

透明の定義を
合わせ鏡の果てに探して
過去を捨てるには
少し早い
されど
未来に向かうには
速すぎるその思考を
いま少しどうか

足がかりは
その花の名
あなたを想う
その花の香
湿り気に
花藻咲く

あたたかなご支援をありがとうございます❤ みなさんのお心に寄り添えるような詩を形にしてゆきたいと思っています。