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これからのDXを社会実装するスタートアップに必要な「パブリック・アフェアーズ」とは

<自己紹介>
医療AIスタートアップのUbie(ユビー)株式会社 / Ubie DiscoveryでPublic Relationsチームにてパブリック・アフェアーズを担当している重藤(@yukishigedo)です。
マーケットにおける適切なルールメイキング、公共セクターや業界団体との関係性構築・コミュニケーションを担っています。
前職は、リクルートキャリアの地域活性営業部の福岡マーケットの主にエンタープライズ向けのセールスマネージャーを担っていました。

ロビー活動の経験や政界とのリレーションを活かし、医療業界以外の他業界におけるパブリック・アフェアーズ活動支援や、to Bサービスの特定業界攻略・グロースや特定団体・企業の紹介取次、自治体向けの紹介取次等を支援しております。

パブリック・アフェアーズ(公共政策渉外)とは

パブリックアフェアーズとは社会課題や規制をテーマにした関係性構築・コミュニケーション活動です。パブリックリレーションズ(Public Relations)活動の1つになります。今では公共政策渉外やガバメント・リレーションズという職種があったり、古くからはロビイング(ロビー活動)を行うロビイストなんて職業もあったります。ロビイングというと「闇のフィクサー」のような悪いイメージがありますが、「パブリック・アフェアーズ」はこれからの企業活動において特に大きな役割として注目を集めています。
例えば、GoogleやAmazonをはじめとしたいわゆるGAFAでは年間数十億円の投資をしていて、アメリカの企業全体では年間数十兆円にものぼるといわれています。
日本においても、専門コンサルティングのマカイラ株式会社や、法律事務所ZeLo・外国法共同事業での専門部門の立ち上げ、一般社団法人Public Meets Innovationの運営するPMI Legal Communityの創設、一般社団法人パブリックアフェアーズジャパンの設立などが起きています。

なぜ今、必要性が高まっているのか

“ニューノーマル”とも言われる中、ICT/AI等を活用したデジタル化、いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)が未だかつてないほど劇的に推進されてきています。人々の「当たり前」や価値観が変わり、より一層の革新的な技術の活用や、ビジネスモデルおよびサービスの創造が求められています。
しかしながら、新しい技術領域には既存の社会のルールが追いついていないのが現状です。法的整備は慎重に議論を重ねる必要があるのに対して、イノベーションは日進月歩の勢いで進んでおり、両者にはギャップが生じがち。
ただ明るい兆しもあり、日本においてはデジタル庁の新設や規制改革・行政改革の推進など、新たなルールをつくるための政策は動き始めています。
まさに今、イノベーティブなテクノロジービジネスとルールの調和が求められています。

また、これからのビジネスについても価値観や考え方が変化してきています。SDGsやシェアリングエコノミーの考え方にあるように、従来の「イノベーション=新しい技術で既存産業を破壊する」という構図から、「イノベーション=共創してエコシステムの持続可能性を高める社会実装」へと求められているビジネスの姿がシフトしています。

パブリック・アフェアーズとは、これからの新しい未来のために「ありたい姿を社会実装する」仲人の役割です。

医療AIスタートアップ、Ubie社の一事例

<Ubieの目指すパブリック・アフェアーズの考え方>
ここまで、パブリックアフェアーズという新しい役割について述べてきましたが、医療業界における一事例を紹介します。

Ubie(ユビー)「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップです。AI問診エンジンをコア技術とし、医療機関向けの医師等の業務効率化を図るAI問診サービス「ユビーAI問診」と、生活者向けの適切な受診行動をサポートする受診支援サービス症状検索エンジン「ユビー」を開発・提供しています。医療と人をつなげる「医療のGoogle」のような存在を目指しています。

日本においては医療は国策です。そのため然るべきルールで安全性確保や医療機関の保護などが図られています。そのトレードオフとして、新しい技術にも規制がかかり実際のニーズとの乖離があるのも実情です。コロナ禍における現政権の号令のもと規制緩和がなされたオンライン診療などは、今でも多くの議論が起こっています。

Ubieは、愛あるテクノロジーで医療と人をつなぎ、世界の健康をあたりまえのものにするべく活動しています。そのため、患者様や医療従事者や地域医療体制など、様々なステークホルダーにとって親しみがあり信頼できる存在でありたいと思っています。

AIが人の仕事を不適切に奪ったり、ビジネス偏重の論理で人の命を危険にさらしては本末転倒です。また、既存の地域医療提供体制をむやみに破壊することも絶対にあってはなりません。

AIは患者様がより人間らしい適切な医療体験を受けられるサポートや、医療従事者が人間にしかできない仕事により集中できるサポートをする存在です。

Ubieではこうした考え方にもとづき、サービス提供する企業として適切な認知や理解、ルールメイキングを、ステークホルダーとコミュニケーションをとりながら進めています。
具体的には、厚生労働省・医師会や病院協会など業界団体・政治家・自治体・地域医療を担うキーパーソンなどをカウンターパートとして、対話を重ねています。

多くのステークホルダーと話をする中で見えてきたのは、日本の医療を良くしたいという大きなベクトルの方向はみんな同じであるという至極当たり前のことでした。

新しいテクノロジーの活用においても、どこか一部に不適切な影響を及ぼし既存の医療体制を毀損してはいけません。
全てのステークホルダーが手をとってよい仕組みを一緒に考えてつくることができれば、ありたい姿に近づけます。

<業界団体を立ち上げを支援し、仲間を集める事例>

医療にAI/ICT等新しい技術を活用し、生活者の受診行動の支援や、医療従事者の働き方改革などを支援する業界団体(一般社団法人 日本医療受診支援研究機構)の立ち上げを支援しました。

医療の業界団体等から理事を派遣いただくなど、業界の錚々たる有識者の方々が理事となってくださりました。
この団体には、Ubieのみならず医療のAI/ICTを活用するベンチャー/スタートアップ等の民間企業を会員として多く募っており、Ubieは一会員として業界形成の支援をしています。

私たちはあらゆる同業(医療)サービス企業は「仲間」であると考えています。たとえ同業他社であっても同じ志半ばを持っていれば手を取るべきです。狭い日本という国でくだらない足の引っ張り合いをしている暇など微塵もありません。日本発の優れた医療と技術で世界中のよりよい医療を実現していきたいと考えてます。

業界団体の設立により、公平性をもって、いち民間のみでは成し遂げられない「日本の医療をテクノロジーで適切によりよくする」という方向にアクセルを踏み出せました。
また、官公庁などの公共セクターや業界団体等が一民間企業とコミュニケーションをとるには限界があります。複数のステークホルダーの意見を集約した業界団体を通じた対話によって、マーケットを大きく動かすための関係が生まれます。

この業界団体の設立支援はあくまで一例ではありますが、適切なステークホルダーを巻き込み、適切にコトを進めて実現することこそがパブリックアフェアーズの活動です。
これらを弊社ではPublic Relationsチームとして動いています。プレスリリース案を提案書として世の中に出た際の先方のイメージ解像度を高めることや、業界で影響力のあるパブリシティを獲得することで、ステークホルダーの適切な認知や理解、信頼性を高めています。

企業・団体として得られた実績も一部ご紹介します。
一スタートアップとして飛躍的な事業成長の一部に貢献できていると思います。

・ルールメイキング/規制改革・ガイドライン改定等
・業界団体を通じたコロナ禍での新サービスリリース
・自治体・地域医師会・地域中核病院との協働サービス提供
・大学病院との共同研究
・厚生労働省大臣・事務次官・担当局長らとの面談・意見交換
・医師会/病院協会の会長らとの面談、サービス導入や講演機会の享受
・「医師等の働き方改革補助金」・「コロナ対策補助金」の交付と活用
・経済産業省JETROの海外支援採択
・日本サービス大賞「厚生労働大臣賞」受賞

医療×AIという公共性・社会的意義、それに伴う責任が大きなドメインの中で、ステークホルダーの理解や賛同をいただきながら、事業・プロダクトを開発していくこと。一民間企業だけではなく、医療業界が一丸となって世界をよくする方向へ進めることが何よりの力となっていくはずです。

今後のDX・イノベーション・スタートアップについて

これからの未来、大きく世界を変えるイノベーションを起こすスタートアップにとって、パブリックアフェアーズの考え方や役割はますます欠かせなくなってきます。
スタートアップのありたい姿は、一匹オオカミ型から仲間で共に活動するゼブラ型へ。破壊的イノベーションから共創的イノベーションへ。そして革新的な新しい技術とありたい社会との橋渡しへと変わっていくでしょう。
特に、
これからのレガシー業界DXを実現する業界特化型バーティカルのスタートアップにおいては、業界・業界団体・業界キーマン・(関係官公庁・関連議員)とのリレーション活動は必須になってきます。
業界攻略を制するものこそが、スタートアップとしてその業界を本当に変える社会実装を制すると言えるでしょう。

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※「ルールメイキング(規制改革)やPublic Relations」のみならず、パブリック・アフェアーズ(ロビイング)による「マーケティング&セールス・バーティカルBtoBグロース」活動についてはこちらのブログをご覧ください。


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