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トランスジェンダーが身体を変えるリスク

僕はLGBT。生まれた時は女だった。今は戸籍を変えて男として生きるトランスジェンダー。1980年生まれの42歳。

物心がついてからずっと自分の性別に違和感を感じていた。

「男に生まれてきたかった。」から「男になりたい!」へ

男に生まれてきたら良かったと思わなかった日はなかった。

でも僕はそれが出来ないこともわかっていた。

自分が女で存在していることは理解していたから、心の中だけで男だったら..と想像するだけだった。

それが中学生のころ、「オナベ」と呼ばれる人がいることをテレビの番組で知った。
胸を取り、憧れの胸板。スーツをかっこよく着こなすその人たちを見て「こうなりたい!」と思った。

戸籍を男に変えて女の子と結婚出来ることも知った。

その存在を知ってしまったら、気持ちは止めることは出来なかった。
僕の気持ちはハッキリと男だったらなぁ...から「男になりたい!」に変わった。

男になる為には...

女で生まれた僕が男になる為には、性別適合手術を受けるしか今の所方法はない。いわゆる性転換というやつだ。

では実際に何をするかというと、女から男のFTMの場合。

・胸を取る。これは主に美容外科で受ける。費用は50万から100万。胸の大きさによって違う。
・子宮卵巣を摘出。女である機能を取ることが目的。それによってホルモン治療は必須になることを僕はやってしまってから知った。

順番として一番多いパターンは、生理を止めるための男性ホルモンの投与。そして胸を平にするオペ。最後に子宮卵巣摘出手術をして戸籍変更という、わかりやすくいうと

「イヤなものから先に無くしていく」

流れだが、僕の場合は、逆だった。
一番リスクが高いのに外見からは誰にもわからない子宮卵巣摘出から始めた非常に珍しいパターンであった。

何はともあれ、何年もかけて身体を変え、戸籍は何とか男に変えることが出来た。

やはりあったか副作用...

治療をしていく中で、ついて回るのが「副作用」と言う言葉だった。
何をするにも副作用の説明を受けた。
身体に悪い事をする。その理解はもちろんしていたつもりだったが、実際にまだその時は身体に起こっていないことなので、「男になりたい」気持ちが強すぎて真剣に考えていなかったとその時の自分の甘さを振り返る。

まずは体毛。しかも僕の場合、髭とか欲しい部分にはあまり効果はなく、股間あたりだけが以上に濃くなった。なぜ...(¬_¬)  笑

現在は脱毛に通っている。

薄毛。男性ホルモンの副作用で、ハゲる。。これもアートネイチャーの無料体験に行くほど切実な時期があった。

胸オペでは、両乳首と左の胸あたりの感覚を失くした。手術ミスだと先生に訴えたが、「平らになったのだから良かったじゃん。」と相手にもしてもらえず、気休めのビタミン剤を処方されるだけで終わった。
今なお左胸あたりの感覚は麻痺している。

子宮卵巣摘出の後遺症としては、ホルモンバランスの乱れによる更年期症状に悩まされている。実際に今感じている症状としては、ホットフラッシュ。メンタルの落ち込み。胸の苦しさ。判断力の低下。背中痛。肩こり。何とも言えない倦怠感。などがある。

血が止まりずらいのもホルモン治療の影響だと、歯医者の先生にはインプラントは出来ないと止められている。

ホルモン治療の副作用は、血液にも現れた。多血症といって、血が濃くなる症状。定期的に血を抜く瀉血をしてもらっている。

若いうちはあまり感じなかったことも40歳を過ぎて、出るは出るはで、朝起きてどこも痛くない日がないほどだ。

副作用と言われるものの怖い所は、すぐにはやって来ないところかもしれない。
気付いた時にはどうにもできないことの方が多い。

性別を変えて良かった事

好きな女の子と結婚が出来た事。
その他でも書類上「男」と書ける、「男」と言えること、「男」として扱われることで精神的な苦痛、ストレスを感じることは劇的に少なくなった。

健康とは本来何とも天秤には欠けられないものだが、僕たちトランスジェンダーの場合は、健康でも心の性別と違う身体を持っているという大問題がある。
その身体の性別で生きなければならないことは絶対的な心の不健康であり、それもまた難しい所なのだ。

やってみての感想

先日、同じトランスジェンダー。
FTMの友人と話をしていた中で、「FTMで良かった事はひとつもないな。」という結果になった。

昔、戸籍を変えた僕たちに「青年期はない。」と医者に言われたことがある。

思春期は性別違和で悩んで終わり、カミングアウト後に遅れてきた思春期に突入。思春期の後に青年期。それが僕たちにはなく、スキップして「老人期」を迎えるという事らしい。
本来ならば、働き盛りの40代のはずが実際に身体は年々きつくなってきている。

身体に何度もメスを入れたわけだから、確実に負担はかかっているし、ホルモンという見えないものが実際に身体にもたらす不具合は多い。
しかし、僕たちが「男になる=男の戸籍」にするためには今のところこの方法しかないのが現実である。
人生の熟成期である青年期を飛ばすとはあまりに悲劇だ。

でもただ、ひとつ。

この身体と心じゃないと、この親の元に生まれてこられなかったとしたのなら、僕はこの身体で良かった。そう思える。

身体を変えることで必ず不具合があることをこれから治療をする人、性別適合手術を考えている人には知っていて欲しい。
リスクとメリットを知った上で、自分がどうなりたいか?自分のなりたい姿はどこなのか?考えてみて欲しい。今だけじゃなく、何年後、何十年後の自分を。

僕の人生、あとどれくらい与えられているかはわからないけど、親に貰ったこの身体。

心に合わせて付けてもらった名前も戸籍も変えてしまったけど、両親から受け継いだ「イムズ」は変わっていない。

だから、この身体で生き貫いてやる。

悲惨なんかじゃない。そう思わせれる生き様を。そんな人生にしていきたい。


2022.7.19(火)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第10回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!

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