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伊藤
2022年12月6日 22:12
せせらぎ清らかな静けさで足跡をひそめながらも膨張する白煙の中に祈りを掲げて明後日の方向に投げかける女がいる赤い提灯を背に夢と幻を彷徨う街と傾斜のある坂道で振り返っても憂いの湿度で今日は五月雨空を仰いでみてはいくつの国境を越えても届かないはずの願いに街は冴えていく
2020年11月7日 00:12
目を瞑ったら振動する音がしてそれは鼓膜の痙攣だと知った目を瞑ったら耳の風が鳴って内なる音に現実を失う鼓動の音を聞いただろうか呼応の声を紡いだだろうか生きているその実感を私たちは無花果の如く貪る滴る果汁は足元で描かれあとに残るのは抜け殻のようでヒューヒューとわたしを過ぎていくそして横になりまた現実に戻ると一筋の星屑が窓の奥で架けていた
2017年1月20日 18:37
25メートルプールにはそっとコースロープが浮かんでいるかたときもまっすぐになれず揺れる水面と遊んでいる笛が鳴ったぼくはいまだ飛び込めずに土踏まずをまるめて立っているどうにか足の裏が地面に吸い付けられないようになまぬるい水にひたされたプールサイドは濡れながらあたたかい毎日にそっくりだそういえばぼくのしゅわしゅわはどこへいったさっき飲んだサイダーから逃げたうすぼけ
2017年1月17日 15:46
夜空からひとつこぼれた星くずがきらりわたしの口もとを染めて音を覚えようとしていた五感には思い出がたくさん染み渡っていていつもかがやきの数だけの恋をしていたそれでも愛までは遠いのかしらとささやいたら夜空からいくつもこぼれた星くずがきらり遠いものは強くなるだけだって知った分かり合えるものなんて無いような気がしてうつむいたらきらり墜ちていく涙の熱さを知った