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フォルモサ

フォルモサ

せせらぎ清らかな静けさで
足跡をひそめながらも膨張する
白煙の中に祈りを掲げて
明後日の方向に投げかける女がいる

赤い提灯を背に
夢と幻を彷徨う街と
傾斜のある坂道で振り返っても

憂いの湿度で今日は五月雨
空を仰いでみては
いくつの国境を越えても
届かないはずの願いに街は冴えていく

耳管開放症

耳管開放症

目を瞑ったら振動する音がして
それは鼓膜の痙攣だと知った
目を瞑ったら耳の風が鳴って
内なる音に現実を失う
鼓動の音を聞いただろうか
呼応の声を紡いだだろうか
生きているその実感を
私たちは無花果の如く貪る
滴る果汁は足元で描かれ
あとに残るのは抜け殻のようで
ヒューヒューとわたしを過ぎていく
そして横になりまた現実に戻ると
一筋の星屑が窓の奥で架けていた

プールサイドの妖怪

プールサイドの妖怪

25メートルプールにはそっと
コースロープが浮かんでいる
かたときもまっすぐになれず
揺れる水面と遊んでいる

笛が鳴った
ぼくはいまだ飛び込めずに
土踏まずをまるめて立っている
どうにか足の裏が
地面に吸い付けられないように

なまぬるい
水にひたされたプールサイドは
濡れながらあたたかい
毎日にそっくりだ

そういえば
ぼくのしゅわしゅわはどこへいった
さっき飲んだサイダーから逃げた
うすぼけ

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星くず

夜空からひとつ
こぼれた星くずがきらり
わたしの口もとを染めて
音を覚えようとしていた

五感には思い出が
たくさん染み渡っていて
いつもかがやきの数だけの
恋をしていた

それでも愛までは
遠いのかしらとささやいたら
夜空からいくつも
こぼれた星くずがきらり
遠いものは強くなるだけだって知った

分かり合えるものなんて無いような気がして
うつむいたらきらり
墜ちていく涙の熱さを知った