14年目理学療法士の頭の中 | 河石優(Yu Kawaishi)

臨床14年目の理学療法士。医学博士。リハビリテーションの臨床での僕の頭の中を抜き取って…

14年目理学療法士の頭の中 | 河石優(Yu Kawaishi)

臨床14年目の理学療法士。医学博士。リハビリテーションの臨床での僕の頭の中を抜き取っていきます。365個抜き取ったら終了します。是非お付き合いください。

最近の記事

学校では習わない伸張反射の話

今回は、伸張反射の話です。今回は、今までと少し違った形で記事を書きます。元々、ほかの場所で出すように書いた記事だったのですが、分け合ってお蔵入り(ボツ)になったので、もったいのでここに残しておきますw。 伸張反射(脊髄反射)は、筋収縮を引き起こす神経機構の中でもっともシンプルな仕組みです。 しかし、そんな原始的な仕組みである伸張反射が、実は、その時の姿勢、その時の皮膚からの感覚入力、その時の感情など様々な要因の影響を受けて多様に変化することが分かっています。 そんな伸張

    • 服装にこだわるように歩容にこだわる

      今回は歩行リハビリテーションにおける患者さんの歩容に関わるお話です。 歩容とはどんな格好で歩いているかという、歩き姿の見た目のことです。 歩行のリハビリテーションでは歩行の自立を目指しますが、その歩行の自立を目指すということが、時に歩容を整える事と相反する場合があります。 例えば、脳卒中片麻痺の患者さんで下肢の運動性が低い方では、時に下肢装具を使う場合があります。 装具は基本的に関節を固定することによって、歩行中の下肢の支持性を確保したり、振り出し時の下肢のつまずきを制

      • 患者さんはなかなか家で自主トレしてくれない

        今回は、患者さんが自宅でする自主トレの話です。 リハビリテーションの臨床では、よく患者さんに自宅でする自主トレを指導します。 入院中の患者さんでは、退院後に自宅で継続していく運動を指導します。在宅で外来リハや訪問リハを受けられてる患者さんでは、リハのない日に自宅で出来る運動を指導します。 最近、在宅で生活される高齢者のご自宅に訪問して、生活状況などを聞き取る仕事を多くしているのですが、そんな中で気づいた事は、リハ場面で療法士に指導された自主トレを、自宅できちんと実施され

        • 自由を犠牲にして安定を得るのか、安定を捨てて自由を目指すのか

          今回は、歩行リハビリテーションの臨床において、歩容を指導していく際の僕の考え方をお伝えします。 タイトルが、なんか哲学的で人生論でも語られるような内容になっていますが、ガチガチの運動指導の話です。 僕たち理学療法士は、学生時代に運動学なる学問を学習しますが、その中で、もっとも重要なもののひとつに「正常歩行」があります。 これは、いわゆる「正常」な人の歩行中に、身体の構造がどのように変化しているのかを力学的に説明されたものです。(バイオメカニクスです) 僕が臨床に出たば

          運動学習のルールを教えて、自分で回復していける仕組みを作る

          今回は、リハビリテーションの臨床において、患者さんを効率よく回復に導くためには、回復するためのルールを教えるべきという話をします。 リハを受けている患者さんにとって、療法士と直接接することが出来る時間は、生活の中でのほんの少しの時間になります。 例えば、回復期病棟(リハビリテーション病院)に入院中の患者さんであれば、1日24時間のうちで最大でも3時間です。これが、外来通院でリハを受けている患者さんともなれば、1週間のうちで僅かに1~2時間程度になるのがほとんどです。 こ

          運動学習のルールを教えて、自分で回復していける仕組みを作る

          本当に要介護リスクのある高齢者は介護予防教室にはこない

          今回は、高齢者の介護予防に関するお話です。 ここ数年、高齢者の介護予防に関わる取り組みに参加させて頂く機会が多く、特に、今年度(R2年度)からは神戸市の介護保険課地域包括支援係という、在宅高齢者の自立支援をする仕事に就かせて貰っています。 神戸市は高齢化率が30%、要介護認定率が20%を上回っており、介護予防にとても力を入れています。 神戸市が実施している介護予防事業は多岐にわたり、介護保険のサービスはもちろん、介護保険認定を受けられていない方に対しても、各地域で介護予防

          本当に要介護リスクのある高齢者は介護予防教室にはこない

          その歩行補助具は介助になるのか、リハになるのか

          今回は、リハビリテーションの臨床における歩行補助具の使い方についての話です。 歩行リハビリテーションを受けている患者さんは、初期段階では当然、歩行の安定性が低く独歩が出来ません。 そんな患者さんの多くは、その段階では、歩行補助具を使用して歩行練習をしたり、生活の中で歩行します。 歩行補助具には、いくつもの種類があり、T字杖や歩行器など一般的なものから、ロフストランドクラッチや四点杖まで少し専門的なものまであります。 それらの中から、どの歩行補助具を使用するのかを決めるのは

          その歩行補助具は介助になるのか、リハになるのか

          そのリハの理論は解剖学に基づくのか、神経科学に基づくのか

          今日は、リハビリテーションの臨床において、僕たち療法士が患者さんにアプローチする際に、その内容の基になる理論は、患者さんの疾患や症状によって変えていいよねというお話です。 患者さんがリハビリテーションを受ける目的は、機能や生活の回復にあって、その回復を導くために僕たち療法士は臨床で様々なテクニックを用います。 それらの中には、ボバース法やPNF法など一つの治療手技として名前がついているものもありますし、運動学や解剖学など教科書に載っている基本的な知識に基づいて患者さんに施

          そのリハの理論は解剖学に基づくのか、神経科学に基づくのか

          鏡を使った運動練習は逆に運動学習を妨げてしまう場合がある

          今回は、リハビリテーションの臨床において、患者さんが鏡を使って自身の運動を確認することの意味についてお話します。 どこの病院のリハ室にも、一台は全身が映る大きな鏡が置いてあると思います(姿勢矯正鏡というらしいです。) その鏡は、患者さんが歩行練習や立位練習をする際に、自分の姿勢や動きが正しいかどうかを確認するために使われます。 座位で、姿勢が傾いてしまう患者さんでは、座位保持練習に使われる場合もあります。 しかし、この鏡を使った視覚フィードバックによる運動練習は、使い方を

          鏡を使った運動練習は逆に運動学習を妨げてしまう場合がある

          歩行獲得への第一歩は荷重感覚の知覚

          今回は、歩行リハビリテーションにおいて、下肢の支持性を獲得する上で僕がとても大切にしていることについてお話します。 随分と記事の投稿に間が空いてしまいました。(やっぱり毎日投稿してる人って単純にそれだけですごいですね) 実は、最近、新しいウェブサイトを作っていて、そっちに一生懸命になり過ぎていました。 そのウェブサイトは、自主トレ(ホームエクササイズ、セルフリハビリ)指導用のイラスト資料を集めたもので、それらを自由にダウンロードして使えるものです。 僕たち療法士は、しょっ

          歩行獲得への第一歩は荷重感覚の知覚

          防御性収縮の落とし方

          今回は、リハビリテーションの臨床において、運動器疾患の患者さんの防御性収縮の落とし方についての話です。 投稿した記事が20を超えてそろそろ一人くらいフォロワーがついてくれてもいいのにと思い始めた今日このごろ、まだ投稿記事4つくらいで僕より後にnoteを始めた同じ理学療法士の方が10人くらいフォロワーいるのを発見して、自分のダメダメさを改めて知りました。(それでもメゲマセン)(だれかどこが悪いのか教えてください。。) 防御性収縮の抑制は運動器疾患のリハにおける最初の課題運動

          手すりを使った歩行練習はしない

          今回は、リハビリテーションの臨床において、歩行練習の際に手すりを使用することの意味について話します。 歩行障害のある患者さんの歩行リハビリテーションにおいて、リハ初期では立位の保持が課題となりますが、そこから徐々に立位の保持が可能になってくると、次のステップとして歩行練習が始まってきます。 その歩行練習について、最初の段階では、まだまだ下肢の支持性が低く、バランス機能が低下しているので、最初から独歩の練習をすることは難しいです。そこで、ほとんどの場合は、杖や歩行器などの補

          動作練習中はたった一つのことだけに注意を集中する

          今回は、リハビリテーションの臨床において、動作練習の場面での患者さんの自分の身体への注意の向け方についての話です。 運動障害のある患者さんが、新たな動作を獲得しようとその動作を練習する場面では、ただ、やみくもにその動作を繰り返すのではなく、どのようなところに気を付けて体を動かすのかを教えてあげる必要があります。その注意点の伝え方こそが、効率よく動作学習を進める鍵になってきます。 その注意点の伝え方について大切なことは、「一つのことだけに注意を集中してもらう」ということです

          動作練習中はたった一つのことだけに注意を集中する

          発表原稿は作らない

          今回は、症例報告などの発表の仕方についての話です。「臨床での頭の中」と言いながら、ここにきて、臨床と離れたとこに一歩足が出てしまってます。 多くの療法士が、症例報告や研究発表など、人前で自分の療法士としての仕事を発表する機会を持っていると思います。それは、自分の職場内での症例報告会であったり、学会などで外部に向けて報告する研究発表であったりします。 いずれにおいても、当日の発表に至るまでに、データをまとめたり、資料を作成したりと、膨大な時間をかけてその準備をしています。時

          歩行遊脚期の練習はスタートとゴールを教える

          今回は、歩行リハビリテーションにおいて、遊脚期の下肢の動きの練習の仕方について、僕の考えをお伝えします。 歩行障害のある患者さんのリハビリテーションを担当するとき、僕はいつもその歩行を右下肢の問題か、左下肢の問題かに分けて、それをさらに遊脚期の問題と立脚期の問題に分けて考えてアプローチします。 その時、遊脚期と立脚期、どちらか一方にしか問題がない患者さんは少なく、多くの患者さんは両方に改善すべきところがあるのですが、僕の経験では、大体の場合、遊脚期の下肢の動きを獲得する方が

          歩行遊脚期の練習はスタートとゴールを教える

          エビデンスを使う人とエビデンスに使われる人

          今回は、リハビリテーションの臨床におけるエビデンスの使い方について、僕の考えをお伝えします。 リハビリテーションにはエビデンスが大事だとよく言われます。確かに公的な保険を使って対象者さんに提供するものであり、そこにエビデンスは必要です。 しかし、エビデンスがあればいいってもんでもないのがリハビリテーションです。どれだけ高いレベルのエビデンスを積み上げたリハを提供出来ていても、それが必ずしもその患者さんにとって最適な方法ではないのです。 ここに、リハビリテーションとその他

          エビデンスを使う人とエビデンスに使われる人