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服装にこだわるように歩容にこだわる

今回は歩行リハビリテーションにおける患者さんの歩容に関わるお話です。

歩容とはどんな格好で歩いているかという、歩き姿の見た目のことです。

歩行のリハビリテーションでは歩行の自立を目指しますが、その歩行の自立を目指すということが、時に歩容を整える事と相反する場合があります。

例えば、脳卒中片麻痺の患者さんで下肢の運動性が低い方では、時に下肢装具を使う場合があります。
装具は基本的に関節を固定することによって、歩行中の下肢の支持性を確保したり、振り出し時の下肢のつまずきを制御したりして、歩行の安定性を高めるものです。
ですが、関節を固定するということは、その分、動きの滑らかさが失われるので、装具を使うということは、通常の歩容は諦めるということです。

または、大腿骨頚部骨折後の患者さん。中殿筋の筋力が弱く、歩行時は体幹を傾けるような代償的な歩容をとります(トレンデレンブルグとかデュシェンヌというやつです)。このように、筋力が正常より低い患者さんに歩行を指導するとき、僕たちは時に、その状態でも安定して歩行が出来るように、代償的な歩行(弱い部分を補えるような歩行の仕方)を学習してもらいます。

この代償歩行も、歩行の安定性を得るために、歩容を犠牲にしていると言えます。

これらの点について、昔、「歩行を自立することが何より大切であり、リハで歩容にアプローチする意味が分からない」みたいな意見を聞いたことがあります。

でも、僕の意見はそうではなくで、歩容にも限界までこだわりたいと思っています。

歩行リハビリテーションを受けている患者さんに自身の歩行についての訴えを聞いたとき、どこが痛いとか、足がつまずくとかといった機能面の問題より先に「もっと恰好よく歩きたい」と言われる方が結構います。

この恰好よく歩きたいという患者さんの思いを軽視してはいけないと思っています。

確かに日常生活を自立に導くことが僕たちリハ専門職の役割ですが、日常生活の自立の先には、「自分らしく活発に生きていく」ことに繋がっていく必要があります。
その点において、歩容はとても大切で、人前でも自信をもって歩けることが、意欲的に外出し、人と交流しながら社会生活を継続していくことに繋がります。

実際、僕は、歩行が安定して自立しているにも関わらず、自分の歩き姿が恰好悪いからという理由で、今までのお友達との交流を辞めてしまって家に閉じこもりきりになってしまった方に何人も出会っています。特に女性に多い傾向があると思います。

僕たち人間は、周りの人から自分がどう見られているかを気にせずにはいられないのです。

ですので、歩行のリハビリテーションにおいては、最大限に歩容を整えながらも機能的に歩行の自立を目指すことが大切だと思います。

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