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運動学習のルールを教えて、自分で回復していける仕組みを作る

今回は、リハビリテーションの臨床において、患者さんを効率よく回復に導くためには、回復するためのルールを教えるべきという話をします。

リハを受けている患者さんにとって、療法士と直接接することが出来る時間は、生活の中でのほんの少しの時間になります。

例えば、回復期病棟(リハビリテーション病院)に入院中の患者さんであれば、1日24時間のうちで最大でも3時間です。これが、外来通院でリハを受けている患者さんともなれば、1週間のうちで僅かに1~2時間程度になるのがほとんどです。

これを考えると、患者さんが回復している時間(機能が向上している時間)が、実際に療法士と一緒にリハをしている時間だけでは、回復の速度が遅くとても目標に到達しないです。

ですので、効率よく回復するためには、療法士と直接接していない時間(リハ時間以外)でも、患者さん自身で回復していける仕組みを作ることが重要です。

そのために大切なことが、リハ時間内に、回復するためのルールを患者さんに教えることだと思います。

回復するためのルールを教えるとは、「自分の身体の何に気をつけて、どうなれば正解かということを明確に伝え、患者さん自身で、自分の運動が上手くいっているかそうでないか判断できる状態にすること」です。

具体的に説明してみます。

例えば、脳梗塞後に運動麻痺によりぶん回し歩行となっている患者さん。
この患者さんは、歩行中下肢を振り出すときに、体幹を大きく反対側に傾けて、下肢を体幹で引き上げるようにして振り出します。

この患者さんに対して、リハでは、下肢や体幹の運動を促通して、その後ステップ練習や歩行練習をします。

その時に、ぶん回し歩行とならないためには、何に気をつけて、どうなれば正解かを言語的に明確に伝えます。

たとえば、「下肢を振り出す前から体幹が傾かないように気をつけて、膝が曲がりながら下肢が振り出し始めたら正解」と伝えます。

それと同時に、上手くいったときと失敗したときの両方を経験してもらい、自身の体の感覚で、その違いが分かるようになってもらいます。

これが、上手く患者さんに伝わっていると、リハ時間外での病棟での歩行時なども、患者さんは自身で自分の歩行を監視できるようになり、その一回一回がリハビリテーションになるのです。
すると、次のリハ時には、前回のリハ時よりも歩行が上手になっています。

これは一つの例ですが、この「自分の身体の何に気をつけて、どうなれば正解か」は、その患者さんの能力に応じて適したものを教えてあげる必要があり、それが難易度設定になると思います。
難易度は、患者さん自身で気をつければ正解の運動が出来るけど、気をつけなければ失敗する、程度のものが良いと思います。

このように、リハビリテーションでは、毎回の身体のメンテナンスとトレーニングの積み重ねによって回復を積み重ねていく部分と、回復するためのルールを教えてリハ時間外でも自身で身体の動かし方を学習していける仕組みを作る部分があると思ってます。

そして、生活の中でリハ時間外の時間の方が圧倒的に多い患者さんにとって、効率よく回復して目標に到達するためには、この回復するためのルールを教えることが重要だと思います。

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