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そのリハの理論は解剖学に基づくのか、神経科学に基づくのか

今日は、リハビリテーションの臨床において、僕たち療法士が患者さんにアプローチする際に、その内容の基になる理論は、患者さんの疾患や症状によって変えていいよねというお話です。

患者さんがリハビリテーションを受ける目的は、機能や生活の回復にあって、その回復を導くために僕たち療法士は臨床で様々なテクニックを用います。

それらの中には、ボバース法やPNF法など一つの治療手技として名前がついているものもありますし、運動学や解剖学など教科書に載っている基本的な知識に基づいて患者さんに施している場合もあります。

現状では、リハビリテーションの方法に正解はなく、例え同じ疾患、同じ症状の患者さんに対するリハビリテーションだとしても、担当する療法士が違えばその内容は十人十色です。

そんな中で、大切なことは確かな理論に基づいて患者さんにアプローチされていることだと思っています。

昔、「理論を持たないリハビリテーションは、方位磁石を持たずに大海原に出航するようなものだ」みたいなことを誰かが言っていました。

この場合の理論を持つとは、患者さんが回復するまでの道筋を根拠を持って説明することだと思います。
そして、この根拠がどんな知識によるものなのかによって、そこから実際に患者さんへの施術の形が大きく変わってくるのです。

僕は、理学療法士として臨床に就いてから長い間、この施術の根拠となる知識にどんなものを用いれば良いのか、それを得るためにどんな学問を勉強するべきなのかについて、悩み続けていました。

リハビリテーションの世界には、あまりにも多くの治療主義や学問の種類があるからです。

しかし、今では、このリハビリテーションに用いられるべき理論について、確かな考えがあります。

それは、アプローチする対象に応じて、大きく分けて2種類の理論を使い分けるということです。

1つは大きく分けて解剖学に基づく理論です。これには、運動学や生理学も含まれます。簡単にまとめると、目に見えることに関する知識です。

この理論に基づいてアプローチされれば、問題点は患者さんの身体の構造上にあり、それらを徒手や物理療法、運動療法で正常に戻すことで回復させるということになります。

もう一つは大きく分けて神経科学に基づく理論です。これには、脳科学や心理学も含まれます。簡単にまとめると、目に見えないことに関することで、主に、中枢神経系の活動によって説明される知識です。

こっちの理論に基づいてアプローチされれば、患者さんの「学習」に焦点が当たり、いかに効率よく学習を引き起こすかを考慮し、新たな運動や習慣を身に着けていくことで回復させるといいう形になります。

世の中にある、リハビリテーションに関連する治療手技や理論、知識のほとんどは、この2種類に大別されるか、もしくは、両方をブレンドしているものだと思います。

この2種類の理論の使い分けを考えたときに、基本的に、前者は運動器疾患に対してアプローチする時に用いられ、後者は中枢神経系疾患に対するアプローチで用いられることが多いと思います。

しかし、どちらかの理論が100か0かで用いられるのでななく、必ず、どちらの理論の要素も含まれると思っています。

例えば、膝痛に対するリハビリテーションでは、メインのアプローチは膝痛を引き起こしている身体局所の異常を正常化することですが、それと同時に、再び膝痛を引き起こさないような歩容の獲得が求められ、その部分では学習理論が重要になってきます。

また、脳卒中の歩行リハビリテーションでは、脳に障害を負った患者さんに対し、いかに効率よく運動麻痺を改善させ歩行を再獲得してもらうかという点がアプローチのメインになりますが、その過程で、二次的に機能不全に陥った運動器に対しても正常化する手続きが必要です。

ですので、やはり、両方とも勉強しておく必要がありそうです。

その上で、患者さんの症状やリハの目標に応じて、どちらの理論に重点に置くのか選択して、施術を変える必要がありそうです。

今回は、リハビリテーションの理論は大きく分けて、解剖学に基づくものと、神経科学に基づくものがあって、アプローチする対象に応じてそれらを使い分ける、という話でした。

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