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発表原稿は作らない

今回は、症例報告などの発表の仕方についての話です。「臨床での頭の中」と言いながら、ここにきて、臨床と離れたとこに一歩足が出てしまってます。

多くの療法士が、症例報告や研究発表など、人前で自分の療法士としての仕事を発表する機会を持っていると思います。それは、自分の職場内での症例報告会であったり、学会などで外部に向けて報告する研究発表であったりします。

いずれにおいても、当日の発表に至るまでに、データをまとめたり、資料を作成したりと、膨大な時間をかけてその準備をしています。時には、先輩に何度も何度も発表資料についての厳しいフィードバックをもらい、毎日帰るころには廃人になってしまうほどまでに。(そんなフィードバックはやめましょう)

そうして、膨大な時間をかけて入念に発表の準備をしている間に、いつの間にか、発表の準備自体(資料作り)が目的になってしまっている場合があります。しかし、本当に大切なのは、発表日当日の発表です。ここで、失敗してしまうと、今まで準備のために費やしてきた膨大な時間が全て水の泡になってしまいます。

ここでいう、「発表の失敗」とは何か、ですが、それは、発表中噛んでしまうことでもなく、スライドが上手く表示されないことでもなく、自分の考えが聴講者に伝わらないことです。

発表の目的は、発表そのものにあるのではなく、発表後により多くに人から自分の考えについての意見を貰うことなはすです。発表までの入念な準備は、発表内容が聴講者に伝わることでディスカッションが生まれようやく報われます。

ですので、発表の仕方は、一番、相手に自分の発表内容が伝わる方法を選択すべきです。

そこで、僕は、発表中、原稿は読まないようにしています。

僕はよく、後輩の症例報告の予行練習に参加することがあります。(僕が先輩面出来る場面です)そこで、発表者の後輩が一生懸命発表してくれるのですが、発表内容が全く頭に入ってこないことがあります。スライドはとても美しくまとまっていて、発表中の文章もすらすら言えていました。でも、聞いてる側の頭の中には入ってこないのです。原因は、原稿を上手に読むことに一生懸命になりすぎているのです。

原稿を読みながら発表すると、どうしても、噛まずにスラスラ喋ろうとするあまり、抑揚のない一辺倒の喋り方になってしまいがちです。すると、聴講者からは、喋っている内容の中のどの部分が重要なのかが分からず、ただただ頭の中を文章が流れて行ってしまい、置いてけぼりを食らうのです。

そこで、その原稿を後輩から奪い取って、「いっぺん原稿の内容を頭から消して、自分の言葉で、このスライドで何を言いたいのか俺に説明してみて」と言ってみます。(仏のような顔で)
すると、いきなりそんな無茶振りされたその後輩は、困惑しながらも、しどろもどろに僕に説明をしてくれます。それを聞くと、このスライドで何を伝えたかったのかがめちゃくちゃ分かります。ですので、僕は、その後輩に「今俺に説明したような喋りを発表でもそのまませんかいな」と言うのです(仏のような顔で)

このように、発表するときは、スライドの内容を目の前の人に説明する会話のような形でした方がいいです。原稿を読むときと違って、発表中の喋りが相手に向かっているので、その上に自分の感情が乗ってきます。ですので、相手と自分が同じものに対して注視することができて、何が言いたいのかがよく分かるはずです。

言い換えると、原稿読みスタイルの発表は、発表者と聴講者が向かい合って発表者から聴講者に向かって→が引いてあるイメージです。一方、スライド説明スタイルでは、発表者と聴講者が両方とも同じようにスライドの方を向いていて、→が2本発表者と聴講者からそれぞれスライドに向かって引いてあるイメージです。(余計分かりにくいという苦情は受け付けません)

このスタイルで発表しようすると、喋りの途中で詰まってしまったり、同じことを何度も言ってしまったりします。それでも、原稿を丸読みするより、10倍伝わると思います。それに、そんなのは、何度か発表の練習をすれば、問題なくなります。

よくよく考えてみると、僕らが普段参加する講習会や学会でよく話をされている人気講師の方々に、原稿を読みながら発表されているような方は一人もいません。

大切なのは、自分の思いを乗せて、相手に自分の言葉で伝えようとすることです。

まとめると、症例報告などの発表中は、原稿を読むのではなく、スライドの内容を目の前のひとに会話で説明するような形でした方がより伝わりやすい、という話です。

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職場の壁にアートが描かれています
(大分完成に近づいているようです)

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