見出し画像

「女子枠」の設置が急速に広がるなか、ついに京大にも設置のニュースが。その衝撃は、ジェンダーギャップの難題解消への号砲となるのか

ダイバーシティの嵐が吹き荒れる・・・

多様化(ダイバーシティ)や包摂性(インクルージョン)の重要性が、まさしく社会全体のいたるところで問われるようになりました。

その中でも多様性、とくに女性が構成員においてどれだけ占めているかを示す女性比率、つまりジェンダーギャップに係る問題は、ダイバーシティの一丁目一番地として、真っ先に解決しなければいけない課題となっています。

まさにダイバーシティの嵐が吹き荒れている、と言ってもよいでしょう。

たとえば、企業においては、多様性が企業の評価や価値を左右する重要なファクターとなってきており、とくに女性役員の比率、女性社員たちの待遇や昇進などの指標が厳しく問われる時代になっています。

 

大学も例外ではない。むしろ、範を垂れる立場

そして、もちろん、大学もその例外ではありません。
大学や大学院におけるさまざまな構成員――
執行部、教職員、そして、もちろん学生のダイバーシティがどうなっているのか。
 
とりわけ国際競争に打って出ようとしている大学にとっては、吹き荒れるダイバーシティやインクルージョンの嵐にどう真摯に向き合い、解決をしていくかが喫緊の要件となっているのです。
 


京大 突如、「女子枠」新設を発表

こうしたなか、我が国を代表する最高学府の一つ、京都大学(京都府)が、3 月21 日、ついに「女子枠」(正式名称は「女性募集枠」)を新設すると発表し、衝撃が走りました。

 具体的には、2026 年度から、理学部と工学部において一般選抜ではなく、「特色入試」のなかに女性だけを対象にした募集枠を設けるもの。
 
京都大学は「特色入試(女性募集枠)の新設について」のなかで、
導入に至った背景について次の通り説明しています。

本学は、対話を根幹とした自学自習という教育理念を踏まえ、様々な属性や背景を持つ学生たちが互いに存分に語り合い、議論をしながら学びを深める環境を実現するために、キャンパス構成員の多様性を十分に確保することが極めて重要であると考えています。
 
しかしながら本学には、学生中の女性比率が著しく低い学部があります。このような学部ではそのインバランスを早急に解消しなければなりません。また、本学が世界と伍する大学として活躍するためにも、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な視点を取り入れることは望ましい教育環境の構築のため不可欠です。
 
このことから、本学では、2026(令和8)年度入学者選抜から、理学部と工学部の特色入試(総合型選抜および学校推薦型選抜)において、女性募集枠を新たに設けます。(後略)

京都大学ホームページ 特色入試(女性募集枠)
「特色入試(女性募集枠)の新設について」より


「本学が世界と伍する大学として活躍するためにも、
ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な視点を
取り入れることは望ましい教育環境の構築のため不可欠です」

まさに国際基準を意識したメッセージですね。

そして、「不可欠」というワードに、どうしてもダイバーシティを実現しなければいけないという痛切な思いが伝わってきます。
 


10人中1人にも満たない理学部、工学部

では、京都大学における女性割合は現状どれくらいなのか。

23 年度の一般選抜全体においては、22.3 %。
この数値は他大学と較べて “最低水準にある”ということを自ら記者会見でも認めています。

さらに、今回対象となる理学部は 6.9 %、工学部は 9.1 %と、両学部とも 10人に 1 人にも達していない、かなり低い割合になっているのです。

3 月 29 日に行われた「京都大学理学部特色入試オンライン説明会」では、理学部の女子比率について、一般選抜以外からの入学者を含めた全体では 7.9 %であるとの紹介がありましたが、今回女性募集枠を新設した意図について、次のような趣旨の発言がありました。

「学生の男女比率の改善により、これまで女性が理学部へ
入学志望を躊躇していた障壁を緩和したい」


「障壁」を緩和したい

ここでの「障壁」、それは一体何なのでしょうか。

それは、おそらく、男女の構成比が、男性に著しく偏っている状況のことを指しているのでしょう。女性たちにとって、それは大きな障壁になっている・・・
 
もう少し、具体的に申し上げると、
たとえば、男ばかりの環境に女性が入ることになったら、
場違いな感じになり、疎外感を味わうことになるのではないか

あるいは、差別的な扱いを受けないまでも、
環境に溶け込み馴染むのに時間がかかり、気も使うことになり疲れてしまうのではないか

等々、女性とっては選択しづらい心理的な圧迫を感じてしまう、というわけです。

理学や工学への志を抱く優秀な女性がいたとしても、こうしたことで、我が国を代表する最高学府の一つ・京都大学への進学を躊躇したり、心が折れてしまったりした女子受験生が過去沢山いたのかもしれないことを想像すると、とても切ない気持ちになりますね。

なお、京都大学新聞では、昨年5月、女子学生についての特集記事を公開していますので、ご参考にしてください。


わずか1.5%の押し上げ効果は、
焼け石に水?

ところで、今回発表された女子枠は、女子比率改善にどれくらいの効果があるのでしょうか。
 
今回の女子枠の募集人員は、理学部で 15 人、工学部では 24 人の計 39 人。
実際にこの募集人員が想定通り埋まったと仮定すると・・・
24 年度の入学定員に照らすと、理学部では 311 人中 4.8 %、工学部では 955人中 2.5 %、大学全体においては 2,649 人中 1.5 %となり、ごくわずかの割合です。
 
ですから、上手くいっても、せいぜい 1.5 %ほどの効果に留まる、ということになります。

では、焼け石に水、なのでしょうか。


次回は、京大が「女子枠」導入に踏み切った意義について
さらに考えてみましょう。



#大学受験 #大学入試 #ダイバーシティ #京都大学 #女子枠入試 #多様性 #包摂性 #インクルージョン #ジェンダー #ジェンダーギャップ #理学部 #工学部 #男女比率 #女子学生 #多様性を考える
#京都大学新聞  #


この記事が参加している募集

多様性を考える