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松林宗恵監督「世界大戦争」を鑑賞。幸せに暮らす庶民の生活と、軍人&政治家のアタフタする様子を交互に描いたシナリオの構成が巧みだ。

やたらと「軍事予算」だけを激増させようとする自民公明維新のクソ政治家どもに、ぜひ、見せたい。自民党のダメ総理・岸田首相なんか、100回鑑賞して、感想文を国民に発表すべきだ。

◆◇◆

当時の宣伝材料。


「連合艦隊」などを手掛けた松林宗恵監督と“特撮の神様”円谷英二特技監督の初顔合わせで、世界核戦争による人類滅亡を市井の人々の視点から描いた人間ドラマ大作。

舞台は東西冷戦の真っ只中。ふとしたことをきっかけに両陣営の間に緊張が走り、一触即発の事態となります。核戦争による人類滅亡へのカウントダウンが迫る中、各国に平和を呼び掛けた日本の決死の働きも空しく、ついに人類滅亡のときがやって来るのでした…。

ラストの言葉が耳に痛い。

当時は、キューバ危機などに代表される東西冷戦による緊張状態が日常としてありました。すぐそこに“第三次世界大戦”の危機が転がっており、いつ戦争が始まってもおかしくない張り詰めた空気感の中で人々は暮らしていたのでしょうねぇ…。想像するだけでも恐ろしくなりました。
太平洋戦争での敗戦を経て平和国家へと歩み出して間も無い日本国民には、戦争の傷が心にも体にも生々しく刻まれていたことだと思います。戦争とは残酷で愚かしい行為である…と身に染みて理解している民族ではないでしょうか?
よって本作は日本だからこそつくり得た映画だと思いますし、核戦争による人類滅亡の危機による社会の風刺を、普通に日常を営んでいる無后の人々の視点から描いていることに意義があるように感じました。

少額の株の取引を、ささやかな楽しみに暮らしてる、運転手フランキー。

フランキー堺演じるハイヤー運転手の一家は、贅沢はできないながらも幸せに暮らしていました。ささやかなことに嬉しみを感じ、将来への希望を胸に日々を生きる…。
そんな日常を引き裂くかのように各国で戦端が開かれました。何故、不条理にも今の幸せな生活を奪われなければいけないのか? いったい我々が何をしたというのか? …主人公は怒りに震えます。
星由里子演じる長女には宝田明演じる航海士の恋人がおり、結婚の約束をしていました。まさに幸福の絶頂…。そんなふたりが核ミサイル発射直前に交わした最後の無電通信に胸を打たれました。無常に、そして残酷に引き裂かれた愛に涙を禁じ得ませんでした…。

大国間の政治的エゴ、そして戦争…その犠牲になるのはいつでも民衆です。どこにも持って行きようのない怒りをフランキー堺らが迫真の演技で訴え掛けて来ました。そして迎える一家の最後の晩餐。日常が崩壊してもなお普通の暮らしを通そうとした一家の怒りを込めた最後の抵抗のように感じました…。

世界中で発射された核ミサイルは、日本にもその狙いを定めていました。
やがて着弾した核ミサイルで東京は一瞬の内に火の海にと化しました。衝撃で大地は裂け、紅蓮の炎に巻かれながら建物は融解し、世界は何も存在しない炎の荒野へと姿を変えました。
哀切極まり無く救いの無い壮絶なラストシーンを、熟練の円谷特撮が容赦の無い描写で見せ付け、その迫力と凄絶さに圧倒されました。

互いを滅ぼし合う自滅の道を歩んでしまった本作の人類ですが、このような愚かしい行為が実際に起こらないようにしなければなりません。
ですが昨今の世界情勢はそれを許すことのできないところにまで差し掛かっているように感じられます。日本国内でも戦争への道を歩んでいると見受けられるような動きが…。
緊迫した情勢は形を変えて、今も私たちのそばにあると思うと無性に恐ろしくなって来ました…。「平和を粗末にしちゃいけねぇ…」―主人公のこのセリフを今こそ噛み締めなければならない。

脚本のラストシーン。


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