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【「進次郎」と「維新」の類似点】 「女系家族」と「横須賀のおばちゃん」が『小泉進次郎』をのさばらせた。【石井妙子「日本の血脈」(新潮文庫)を読んで】

石井妙子さんは「女帝 小池百合子」で一躍注目されたノンフィクションライターである。

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石井妙子さんの「日本の血脈」は、政財界、芸能界から皇室まで、注目の人士の家系をたどった連作ノンフィクションである。

血の継承にこそ存在意義のある皇室はいうに及ばず、政財界から芸能界まで、この世は二世、三世で溢れかえっている。日本人を惹きつけてやまない血のロマン―。しかし、その裏には、末裔のみぞ知る、いや、末裔ですら知りえない先人たちの波瀾万丈があった。注目の人士の家系をたどり、日本人の血脈意識に斬り込んだ意欲作。

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小泉進次郎、香川照之、中島みゆき、美智子妃殿下などが取り上げられているのであるが、私が一番興味を持ったのが「小泉進次郎」についての章である。

進次郎の曽祖父にあたる「小泉又次郎」は、『入墨をした大臣』として有名である。

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祖父の「小泉純也」は防衛庁長官をつとめた政治家であったが、実は婿養子で、本名は「鮫島純也」という。小泉又次郎が幹事長をつとめる立憲民政党の事務職員だった頃、小泉又次郎の娘である芳江と知り合った。又次郎のところに出入するうち2人は恋におちた。しかし、又次郎は大反対だった。2人は駆け落ちして東京・青山の同潤会アパートで同棲をはじめた。又次郎は『帰って来い』と、新聞の尋ね人欄に広告までだしている。小泉と芳江の結婚について、又次郎の養女だった近藤壽子は「本当に大変だったんです。なにしろ駆け落ち同然の結婚でしたからね。芳江さんはハンサム好みで、ハンサムな男性を見るとイチコロなんです。又次郎さんはもっと立派なところから婿を欲しいと思っていたんでしょう、すごく反対して怒ってました。」と述べている。

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結局、又次郎のほうが折れて純也が“代議士になれたら一緒になることを許す”として認めることになった。

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芳江」は「」「血縁」に異常にこだわる女であった。芳江は小泉純也との間に、『三女二男』をもうける。このうち、三人の娘はそろって気が強く、頭が切れ、自己主張が激しかった。

それに比べて、三人の姉のあとに生まれた長男の純一郎は、どこかひ弱さを感じさせる子供だった。後援会の幹部も「小泉家の実権は芳江さんと三人の姉が持っていたと思う」と語る。小泉家は完全な「女系家族」だったのである。芳江と仲が悪く結婚して距離を保つようになっら次女の隆子を除き、ふたりの姉たちは、かたや離婚し、かたや独身のまま、実家に居ついた。長女の道子は女学生の袴をはき、父・純也の演説の代わりを務めていた。小泉家は、政治家の男たちを、裏で「政治家の家族」という自覚のもと男たちを支え叱咤した

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そんな中で、小泉純一郎は母や姉たちに「鍛え上げられ」、総理大臣になったときには「ポピュリスト」として見事な「パフォーマンス」をくりひろげ、「劇場型政治」を行った。

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⇧上の写真をご覧いただきたい。これを見て何かを思い起こさないか。そうである。「維新」である。橋下徹や松井一郎、浅田均たち、「維新の会」の創設メンバーは、「小泉純一郎をそのまんまパクった」のである。「改革を止めるな」という惹句(キャッチフレーズ)は、「成長を止めるな」とちょこっとだけ手を加えて「維新」はパクっている。

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気が強く自己主張も強い叔母や祖母のもとで育った「小泉進次郎」。彼の実母は、まあ、簡単にいうと「気が強く、<血のつながりを重んじる>姑や小姑たち」に虐められて、純一郎と離婚している。進次郎がまだ赤ん坊の頃である。実母の乳房を吸えない進次郎は、一日中、白いガーゼを吸っていたという。

小泉進次郎は、選挙区である横須賀では、おばちゃんたちのアイドルである。頭はアホなのだが、そのルックスの良さだけで人気者になっている。これも「面食い」で「ハンサムかどうかだけで男の値打ちを決めた」祖母のおかげであろう。

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進次郎人気に、高齢の元市議は、こう語る。

「あまりにも政治家に人々が求めることが変わってしまった。顔がよくて元気のいい言葉を発して時代に合ったようなことを言ったり世間が喜ぶようなことをすればいいのだろうか。雰囲気が政治を左右し、人気という実体のないものに国政が振り回されている。政治家としての基本姿勢や国家観、見識があり、きちんと勉強して理論をもっている政治家が本当に少ない。みんな、聞きかじりの知識でものを言う。若い政治家への期待が強いのは、日本に漂う閉塞感をどうにかしてほしいという国民の思いかもしれない。けれど、いったい、若い政治家の何に期待しているのだろう?」


この元市議の意見は、そのまま、「維新人気の謎」につながる話である若ければいいのか? 元気なだけでいいのか? 時代の合ったことを叫べばいいのか? 世間が喜ぶことを言えばいいのか? まさしく「ポピュリズム」の恐ろしさを言い表してはいないだろうか?

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最後に、「小泉進次郎の人気」と「自民党・維新の人気」がシンクロする記述を紹介したい。

進次郎の本拠地である横須賀の主婦の言葉である。

「結局、大名の子は大名というほうがいいんですよ。親の知ってる、おじいちゃんも知ってる。代々、政治家してるっていうほうが納得しちゃう。生まれながらに違うんだなって思うもの。そりゃ、横粂くん(小泉進次郎の対抗馬として民主党から出馬した横粂勝仁のこと)はえらいと思う。本人だけの力だけで努力したんだから。でも地元では進次郎さんよ。進次郎さんが来ると、もう大変。人がすごく集まっちゃって。カッコいいし、話わかりやすくて、楽しいし

進次郎さん」の箇所を「吉村さん」に入れ替えれば・・・「横須賀」を「大阪」に入れ替えれば・・・テレビしか観ないオバちゃんたち。せめて、この人たちが選挙に行かなければいいのだが。

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