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”思いつき”定義集Ⅰ

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「定義集」「アフォリズム(箴言)集」といったジャンルは文芸の一領域として夙に確立されています。マルクス・アウレリウス、ラ・ロシュフコー、アランなど、優れた古典が読み継がれているこ… もっと読む
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2024年1月の記事一覧

”思いつき”定義集㉗「に」

”思いつき”定義集㉗「に」

【偽物】被災し困っている人に寄り添う振りができる詐欺師の親切心。自分ファーストでありながら「○○○ファースト」を掲げて病むことのない政治家。「あなたのためを思って」説教を垂れる人(教師、牧師、医師など――もちろん“本物”が多数派である)。
◆注:物質の真偽を除き「偽物」「本物」それ自体の定義はあくまでも主観的。虚偽で人を貶める人が現実にいることだけは確か。可能な限り見極めたい。

【人間】すべての

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”思いつき”定義集㉖「な」

”思いつき”定義集㉖「な」

【なんでやねん】(関西弁)コミュニケーションに不可欠の言葉。「なぜ」「どうして」などへの置換は不能。含意の軽重は広範に及ぶ。
◆実例①:親子ゲンカ(?)「あーせい、こーせい」「なんでやねん!」「なんでもや!」
◆実例②:男子高校生の会話Ⅰ「おれ、旅に出るわ」「何か悪いもんでも食べたか」「なんでやねん。自然がおれを呼んでるんや」「熱あるやろ」「なんでやねん。40度しかない」
◆実例③:男子高校生の会

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”思いつき”定義集㉕「と」

”思いつき”定義集㉕「と」

【道徳・倫理・モラル】人びとを縛る鉄鎖の一つではあるが両義的。例えば「人を助ける正義」も「人を排除する村八分」もこの範疇に収まる。一般的に徳を積むことは大事とされるが、それを求める環境(circumstance)によって強いられる徳は徳なのか。
 とまれ、環境を構築しているのが「人びと」であるという逆説を解くのは難しい。集団心理、政治、教育、メディア、歴史か、あるいはそのすべて。
◆注:もとより規

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”思いつき”定義集㉔「て」ー②

”思いつき”定義集㉔「て」ー②

【でっちあげ】冤罪(えんざい)の元凶。刑事事件に限ったことではなく程度にも幅がある(職場での責任転嫁も濡れ衣に近いかも)。重要なのはでっちあげる主体が必ず存在すること。根っこにあるのは体裁と自己保身のための姑息さ。でっちあげも疑う人がゼロであれば“真実”になる。少なくとも生贄を許さないだけの猜疑心は保っておきたい。

【テロル(テロリズム/テロリスト)】①恐怖(テルール)を前面化する権力者の暴力行

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”思いつき”定義集㉓「て」ー①

”思いつき”定義集㉓「て」ー①

【哲学】「哲学は人間の限界を彷徨して、人間の世界をまもる辺境の防人である」(梅本克己;個人的なメモからで出典不明)。
 防人たり得るのかは判らない。そもそも学問としての哲学は多岐に及ぶし専門家らが「人間の限界」に思考を巡らせているとも思えない。ただ、やはり人は考えるし悩む。その営みを哲学として包摂するのは間違っていない。

【デモクラシー】発祥は古代ギリシャ。語源は「デーモス(民衆)のクラトス(権

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”思いつき”定義集㉒「つ」

”思いつき”定義集㉒「つ」

【束の間】刹那。いい意味での感動の瞬き(その方が語感的には似つかわしい)。永続する多幸感はあり得ない。なので、好みの音楽に出会い、いい映画を観て、おいしい料理に舌鼓を打つ、そんな「束の間」を大事にしたい。ちょっと老齢のテイストか?

【躓き】誰もが経験する小さめの挫折。躓かない人はいない。「いる」と主張する人には、通じないのを承知の上で次の至言を送りたい。いわく「バカは風邪を引かないのではない。風

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”思いつき”定義集㉑「ち」

”思いつき”定義集㉑「ち」

【恥辱】プライドへの痛烈なる心理的打撃。“黒歴史”の積算。自意識過剰によって惹起される暗澹。大抵は思い出のなかに存在する。しかしそれは自意識の正常な反省の標である。反省を辞書から抹殺した脳天気より、曇り時々雨、のち晴れ程度がいい。

【賃金】“上がらないもの”の代名詞の一つ(もちろん例外はある)。労働力を売って暮らすのも楽じゃない。ならば、できるだけ居心地のいい職場を選ぶのが賢明というもの(ハラス

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”思いつき”定義集⑳「た」ー②

”思いつき”定義集⑳「た」ー②

【多文化主義】”異質”を尊重しつつ共存共生を「是」とする思想・運動(程度の問題はさておき)。デモクラシーは必要条件だが十分条件ではない。ゆえに独裁・権威主義体制では原理的に唾棄すべきイデオロギーでありシステム。旧ソ連、中国のように多文化の尊重を偽装しつつ「異質」の抹殺に励んできた国もあれば、イスラエルやトルコのように真っ向から否定する国もある。もちろん異なる文化・宗教・慣習を否定し迫害する国や社会

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”思いつき”定義集⑲「た」ー①

”思いつき”定義集⑲「た」ー①

【大衆】マス。群衆。これほど権力に与しながら権力が恐れるものはない。マスコミしかり。
 ――大衆とは「自分が〈みんなと同じ〉だと感ずることに、いっこうに苦痛を覚えず、他人と自分が同一であると感じてかえっていい気持ちになる、そのような人々全部である」(オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』)はあまりにも有名。トートロジー(同義反復)ではあるが、怖いのは個性と名前の喪失――とくに番号で焼印を刻まれること

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”思いつき”定義集⑫「さ」ー②

”思いつき”定義集⑫「さ」ー②

【殺人①】違法な殺人――決してやってはならない(当為当然)。
◆注:ただ、例えば「最愛の子ども」が殺され眼前に殺人犯がいるとき、無言で通り過ぎることは「最愛の子ども」であり得たと言えるのか。報復を果たした人をいかなる意味で非難できるのだろうか。

【殺人②】合法な殺人――国家による殺人、特権を持つ人物による殺人。
①死刑。基本的に主権国家は物理的暴力の独占によって担保されている。したがって歴史的に

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”思いつき”定義集⑱「そ」

”思いつき”定義集⑱「そ」

【憎悪】多分に恐怖と嫉妬の裏返し。恐怖も嫉妬も敵対心を醸成する装置であり捕らえられると抜け出すのは難しい。人間に蔓延る普遍的とも言える精神の働き。悪とばかりは言い切れない。
 ただ、もし憎悪からの脱却が必要な場合は自制と相手への理解が不可欠。もし必要でなければ如何ともし難い。その暴力的表出を抑制すべく務めるほかない。距離をとるなど方法はある。
◆参考:「人間は、人間と完全に同じか全く違っているもの

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”思いつき”定義集⑰「せ」ー②

”思いつき”定義集⑰「せ」ー②

【先住民】強者(侵略者)が弱者に対して過去・現在・未来への支配を正当化するため “良心的に“ 造語した弁明の一つ。この語の定着化において、異文化との共存共生を目指す不屈の運動と長い道のりがあったことは疑い得ないが。
 認知の度合いで言えばコロンブスのアメリカ発見。映画『1492:コロンブス』(1492; Conquest of Paradise, 1992)に出てくる ”敵役“ アメリゴ・ベスプッ

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”思いつき”定義集⑯「せ」ー①

”思いつき”定義集⑯「せ」ー①

【正義】正義とそれ以外の境目を普遍的な意味で見定めるのは「善悪」と同様に難しい、というより原理的には不可能かもしれない。つねに「誰にとっての正義か」が問題にされるからだ。それでも敢えて、それは「ある」と断言しておきたい。
 例えば、抵抗不能な幼児への虐待や力任せのレイプを正義として論じることは可能か。先制攻撃を被った国家であれ無関係の難民2万人以上を殺戮することは正義と言えるのか(イスラエル人の多

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”思いつき”定義集⑮「す」

”思いつき”定義集⑮「す」

【崇高】ありていに言えば気高いということだが「崇高な人生」を送るのは諦めておくのが賢明。「崇高な人物」に出会うのは一生に一度あるかないか。高慢な人に出会う確率は高いのに。やはり自然と美学にふさわしい概念なのだろう。

【素顔】見るとガッカリさせられる(容姿のことではない)。ポジティヴには「まれにみる優れた本性」「仮面を被ることのない純粋無垢」とも言えそうだが、人は多くの時間を仮面の下で生きている―

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