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最近作った詩(2023年9月~)

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【詩】あえぐ

【詩】あえぐ

なまなかにあえいだ夜の終わりに
夜明けに見えたのは電灯の影
苦しみは個人のもので
苦しみは私のもので
誰にも分かち合えない

シャワーを浴びながら
思考はループする
あれをこうして
それはああだから
それもあったよ
生産性のない
後悔と儚い展望
思考ゲームの中で
囚われた娘は
二度とこの場には
現れない

膨大な本に囲まれて
ゴマをする自己啓発本と
媚びへつらう画本の間で
風景写真集が闊歩している

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【詩】正解

【詩】正解

何が正解かもわからず
正解があるかもわからず
ひたすらに齢を重ねることの
途方もなさ
途方もない時間を
焦燥と
動揺で
迎える毎日

越えられるのか
その日は来るのか
絶え間ない嘆きが
身をこわばらせる
先の見えない
想像だにできない
そのためになぜ
こんなにも苦しむのか

安静にしている身体は
深い嘆きの中の心に
くさびを打ち込んでいく

それでも
どんなときでも
かけつけると誓ったから
君には

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【詩】僕達は無力じゃない

【詩】僕達は無力じゃない

僕達は無力じゃない
圧倒的な力の前に
なすすべもなく立ちすくんでも
僕達は生きている
それが第一の価値

そして僕達は目の前の
誰かを
何かを
未来に進めている
それが第二の価値

医療の力も
福祉の力も
教育の力も
芸術の力も
全てが無力に思えても
それらが多くの人を救ったことは
歴史が証明している

だから
僕達は無力じゃない
遠くの苦しみに手が届かなくても
目の前の苦しみを救うことが
全ての

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【詩】祈り

【詩】祈り

初詣で母さんは言った。
「あなたは何をお願いしたの?」
僕はお願いなんかしなかった。
ただの、祈り。

目をつぶり、
頭を下げ、
手を合わせて、
祈る。

神様とお話するんだと言う人もいたが、
僕には神様の声は聞こえなくて。

何も考えていないような、
全てを考えているような、
そんな祈りを、
神様の前で、
捧げた。

【詩】マッチの中

【詩】マッチの中

夢をみたまえ心のままに
知らぬ世界を知ると思うな
極彩色に彩られた
極楽鳥が舞っている
御殿の中で温まりたまえ
ゆったりと湯につかり
薬草でしたためた粥を食べ
ふかふかの布団で安らかに
その身を癒やしあまやかしたまえ
我々は現実に生きる必要はない
我々は生きたい世界に生きられる
今目の前のマッチの中に
はかなく見える世界こそが
本当の世界なのかもしれない

【詩】ふるさと

【詩】ふるさと

ふるさとは帰るところにあるまじ
帰るところはわがいえわがふとん
そこにてねぶりおのれをなぐさめ
そとにいでゆくによりどころとす

そのありざまはこころのありよう
こころもまた帰るところにあらず
帰るところはわがからだとことば
そとにいでゆくはからだとことば

ただからだとことばとは帰るべき
こころにゆだねらるいまびとらが
こころにとらはれしいまびとらが
ねぶりなぐさめらるるところなり

【詩】求めてる答え

【詩】求めてる答え

求めてる答えがそこにあるのか
きっと無いと経験が声を荒げる
それでも求めずにはいられない
求めることしかできないでいる
その中で結局は答えが見つかる
実は答えは必ずあるものなのだ
だから身体は勝手に答えを探し
それを否定する経験という理性
そんな理性を制御できなくても
その中で生きることさえすれば
僕達はなんとかかんとか今日を
明日をその先の未来でさえまで
生きていけるはずなのである。

【詩】価値

【詩】価値

月なみな選択肢の中で出す答えは黄色
大人しく受け取る試験管の退路
有意義な時間だったと思えるのは
ある程度の表層だけを見つめるクセが
ままならない世界で求める仕事は
毎日を通り過ぎるための仮の姿
こんな私は私ではない
そう叫ぶだけの余裕もなくて
その日を過ごして安心する
私はここにいるべきではない
その声を持ち続けられる人が
この世界に
新しい価値をもたらしてくれる

【詩】内側

【詩】内側

わからない未来は演じているうちに過去になり、歌声は輝きを失った。
きらきらと輝く目に引き寄せられて歌う。
有名な画家はみんな不幸だったのか。
不幸であればそれは伝説になるのか。
それが創られた不幸だとすれば、私の。
私の不幸はどんな味がするのか。
静けさと安寧の中で生きるのにどうして。
どうして喧騒を求めてしまうのか。
うるさいと遠ざけた声はそれを人が恋と呼ぶもので、私には不要なもの、不用意なもの

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【詩】存在

【詩】存在

徹底的に冷たい世界で
生きる
叫んでも報われない世界で
期待が無に帰す世界で
それでも私は生きている
逃げ出したくても逃げられない
いっそとは思うけれど
私は
生きていくしかない
目を閉じて眠り
思考を閉じようとしても
すぐにまた眠りから覚め
言葉は思考を取り戻す
耐え難い痛みを
分かち合うこともできずに
孤独に
生きる
そして叫ぶ
どこにも届かない言葉を抱えながら
誰にも届かない言葉をそれでもな

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【詩】言葉を紡ぐ夜に

【詩】言葉を紡ぐ夜に

言葉を紡ぐ夜に
異国の響きに守られて
僕はカタカタと鳴らす
キーボードの孤独
夜明けの気配が決定的になるまで
一人で踊ろう
投げやりになることはない
一個ずつキーを打刻する
一つずつ時間が重なる
一人で乗る舟は
孤独を肯定する
孤舟の辿る道は
グランドラインに続く
灯台はいらない
時が満ちれば
ログポースに従う
行き先は自分で選ぶのではない
ログポースに委ねる
なんの用意もいらない
その島で
その

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