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【詩】あえぐ

なまなかにあえいだ夜の終わりに
夜明けに見えたのは電灯の影
苦しみは個人のもので
苦しみは私のもので
誰にも分かち合えない

シャワーを浴びながら
思考はループする
あれをこうして
それはああだから
それもあったよ
生産性のない
後悔と儚い展望
思考ゲームの中で
囚われた娘は
二度とこの場には
現れない

膨大な本に囲まれて
ゴマをする自己啓発本と
媚びへつらう画本の間で
風景写真集が闊歩している
そこのけそこのけ
マイネーミズ
とにもかくにも
あなたはだあれ

忘れたはずのドラマ
公開日を迎えた映画
封切りは始まりではなく終わり
主人公は私だと思ってたら
私はシンデレラの
ガラスの靴の
足を演じる
足女優
砕けたガラスの靴を履いて
品川を散歩するの
明日はきっと
いい日になるわ

心臓は息を吹き返し
肺は血潮を噴き返し
気管支の炎症は
この薬で治ります
副作用が出ないよう
用量用法は
適切に

買い忘れた
ホットケーキミックスは
甘さを抑えるために
全てを捨てて
辻褄を合わせて
さも予定調和のように
焼目をつけて
インスタライブで
紹介いたしましょう
それかもはや
私はこちらを
退職させていただきます
今でのご愛願を
ありがとうございました

生ぬるい触感に
気色悪くも心地よく
白いシーツにはさまれて
まどろむ午前5時
血液は逆流し
血溜まりは粘り気を含み
固形化したタンパク質は
あなたの目を貫いて
あえぐ

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