高橋やすこ

どこにでもいる平凡なアラサー女の徒然日記。元過酷労働者(システムエンジニア)。誰かのち…

高橋やすこ

どこにでもいる平凡なアラサー女の徒然日記。元過酷労働者(システムエンジニア)。誰かのちょっとした気晴らしになるようなエッセイが書けたら、これ、幸い。

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バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯1

幼稚園に通っていた頃、将来は何になりたいかと聞かれれば“お嫁さん”と答えていた。 クラスの大半の女の子は“お嫁さん”と答えていたような気がするが、あれはそう答えるように誰かが仕向けていたのだろうか? 時は流れて20数年。いや、あれは選択肢が他になかったのだと気がつく。 子供の頃からずっと、当たり前のように、大人になれば“お嫁さん”になれるものだと信じて疑わなかった。 なのに、いざ大人になると思い描いていた来るはずだった未来がいつまで経ってもやってこない。 一時期『仕事

    • バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯17

      私たちは2階へ案内された。 エレベーターを降りると、結婚式でよく見かけるボードや綺麗な花々が装飾されており、これが私の気分を一層高揚させた。 「こちらが花嫁の衣装室になります」 案内された部屋には綺麗なウェディングドレスが飾られている。結婚式直前の緊張感が伝わる、そんな部屋だった。 いい。実にいい。 結婚式がこんなに具体的にイメージできること、ある? 今までブライダルフェアにデートで行くことを考えなかったかと言われれば嘘になる。 むしろ、考えた。とても、考えた。 だ

      • バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯16

        扉の向こうは大理石調の床が広がっていた。 庭園を見渡せる部屋はとても広く、吹き抜けになっていて、かつ一面がガラス張りになっているものだから開放感がとてつもない。 『城だ…』 私の“城ってこんなところだろうな”というイメージに近い空間だった。 気持ちのいい青空は、少し夕めいてきている。 既に食事をしている何組かのお客はみんなこの場に合った服装で食事を楽しんでいるようだった。 スニーカーを履いてきた後悔が、じわりじわりと足元から私を飲み込んでいくような気さえした。 『

        • 私と赤子と離乳食

          私はこれまでありとあらゆる面倒なことから逃げてきたタイプの人間だ。 なので、子供を産むとき、正直不安だった。 子供の世話って、面倒なことばっかりじゃないの? ちゃんとオムツ替えられるだろうか。 ちゃんとお風呂入れられるだろうか。 ちゃんと絵本読んであげられるだろうか。 ちゃんと寝かしつけられるだろうか。 ちゃんと…ご飯食べさせてあげられるだろうか。 私、ちゃんと母親になれるんだろうか。 生まれた赤子は、それはとても可愛かった。 劇団ひとりとキンタローを足して2で割っ

        • 固定された記事

        バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯1

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯15

          私の29歳の誕生日が来た。 誕生日に、夜景の見えるレストランで、プロポーズ。 悪くない。むしろベタなくらいが、すごくいい。 そんなことを妄想していたら、あっという間に誕生日が過ぎた。 え、過ぎちゃった?杉田玄白?解体新書?と面白くないジョークを言えちゃうくらいに何事もなく過ぎた。 誕生日のささやかなお祝いはあった。 プロポーズはなかった。 それも、そのはず。 まだ交際して半年しか経っていないのだ。 結婚はタイミング。 急ぐものでも急かすものでもない。 だがしかし

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯15

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯14

          交際は順調だった。 どちらかの家で生活を共にし、ハナキンは二人でBARへ行き、週末は足を延ばしていろいろなところへ出かけた。 しかし、なんでもない平日の朝、急にお腹が痛みだした。 社畜の私でさえ“あれ、今日は仕事を休んで病院に行かなければいけないレベルだぞ”と思うほどの腹痛だった。 心配する宮城さんに『手術とかになったらごめんね』と冗談のつもりで言い、自らフラグを立ててしまった。 そして、私は、また、手術をすることになった。 前回の卵巣の手術から1年経っていないのに、手

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯14

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯13

          ラスボス。 それはやっとボスを倒したと安堵した後に現れる、真の倒さなければいけないもの。 初代ポケモンでいう四天王を倒したあとのライバルだったり、カービィでいうデデデ大王を倒したあとのナイトメアだったり。 彼氏ができた後の、“結婚”というミッション。 これは、婚活という戦いにおいてはラスボスと言っていいだろう。 ゲームがまるで下手くそだった私は、ラスボスを倒したことがほとんどない。 『ボス倒すのも一苦労だったのに、ラスボス倒せる体力はねぇ!かといって、負けてしまったら

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯13

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯12

          連絡から1時間が経過した頃、BARのドアが開いた。 白馬の王子様こと宮城さんは、私の大好物であるスーツとメガネを装備して、私の隣に来てくれた。 尊い。存在が尊すぎる。眼福すぎて宮城さんをつまみにラスティネイルをがぶがぶ飲んでしまいそうなくらい、幸せだ。 避けられてたと思ったが、本当に仕事が忙しかったらしい。 宮城さんは物腰が柔らかく、敵をつくらないような言い回しをする。そのため、“皆で飲みに行きましょう”も“あなたと二人きりでは飲みませんよ”という意味ではないらしい。

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯12

          赤子のモーニングルーティン

          我、赤子。生まれて6ヶ月が経った。 私の朝は、おむつの在庫を確認するところから始まる。 布団のすぐそばに、おむつのパックがずらっと並んでいる。 それを右端から順に、在庫状況をチェックするため叩く。 “ペシペシペシペシ” まだ部屋が薄暗い。静かな部屋に私の荒い息遣いとおむつパックの音が響き渡り、ハーモニーを奏でる。 今日も問題なさそうだ。 まだ豊富に在庫を抱えている。 そうとわかれば、次に母上を起こさなくてはならない。 私が起きているのに起きないとは、さぞかし疲れて

          赤子のモーニングルーティン

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯11

          さて、白馬の王子様を見つけたものの、あちらは対象となるお姫様にまったく気が付いていない。 よくある、よくある。待ち合わせ場所でこちらが気付いて手を振っているのに、いつまで経っても気付いてもらえないこと。 私は“私があなたのお姫様だ!”ということを王子様に伝えなければならない。 いっそクッパが私をさらってくれたらわかりやすい。でも、何回さらわれても学習しないピーチ姫のことを私はあまり好きになれない。 とにかく、なんとかアプローチして彼氏になって欲しい。 あの夜、フェイス

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯11

          高橋、投資はじめるってよ

          さて、平凡なアラサーこと高橋です。 今、私は絶賛育休中で赤子とのキャッキャウフフな幸せライフを過ごしています。こんな人生のボーナスステージのような時間を過ごしている私にはある不安があります。 この先、金、どうしよう。 育休をとっているのでお察しいただけると思いますが、あと半年もすれば会社員として復帰予定です。 ありがたいことに今は、子育てしながらお金をいただいていますが、復帰後に今まで通りの時間働けるかわかりません。 ましてや、正社員としてこのまま働けるかどうかもわ

          高橋、投資はじめるってよ

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯10

          基本の“さしすせそ”というと何を思い浮かべるだろうか。 パッと思いつくのは調味料だろう。 昔、家庭科の授業で自信満々に 「砂糖、塩、酢、醤油、ソイソース!」 と言い、かなり笑われたことがある。 好きです、醤油。 本当はお味噌だけれども、頭文字じゃないからいつも間違える。 恋愛にも基本の“さしすせそ”がある。 さすがですね 知らなかった すごい センスあるね そうなんだ おい、やすこ。そんなの古いぜ!と言う人もいるかもしれないが、先人の知恵は侮れない。 なぜなら私は

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯10

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯9

          BARのカウンター横に、重そうに見えてそこまで重くはない、そして店内が見えるガラス窓のついた、扉がある。 私はこの扉がよく見えるカウンターの端がお気に入りだ。 店内がよく見渡せるし、暇な時や構ってほしくないときは目の前の壁に整列してあるウィスキーボトルを左端から銘柄を暗記していく一人遊びをしていた。 その日、私は一人でイタリアンアイスティーを飲んでいた。 「BARでお茶かよ」 と言いたくなるだろうが、立派なカクテルだ。 アマレットという杏仁の味がするリキュールと烏龍茶の

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯9

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯8

          結論から言おう。 やはり婚活は停滞したままだ。 立てたスケジュールが絵に描いたお餅のようになりつつあった。 婚活を始めてそろそろ9ヶ月目に突入するところだ。 残り1年8ヶ月しかないが、2年4ヶ月しかないと焦っていたあの日と状況は何も変わっていない。 だが、BARでの出逢いは素敵なものだった。 リア充ってこういうことなのね、と胸を躍らせた。 雑誌の編集者、広告代理店や大手旅行会社の企画部勤め、ゲーム会社の社長、教育委員会の偉い人。 普通にぼーっと生活しているだけでは出会

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯8

          かつての死にたい私へ

          三浦春馬さんが亡くなった。自殺だった。 彼は同郷で歳も近く、 「へぇ、肥料の匂いが漂うこんな田舎でも、あんな都会風爽やかイケメンが、生まれるのかー」 と感動した記憶がある。 笑顔がとても素敵な役者さんだった。 同郷の親近感というものがあり、追っかけるほどのファンではなかったが、テレビのインタビューや出演作品で見かけると 「おっ、頑張ってるなぁ」 と気に留めるくらいは好きだった。 なので、訃報が受け止められなかった。 親族でも、友人でもない。 私が一方的に知っているだ

          かつての死にたい私へ

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯7

          「あなたは初対面の人に声をかけることができますか?」 私はNOである。 恥ずかしいし、そんな勇気のいることはできない。 「あなたは一人で食事に行けますか?」 やはりNOである。 いや、牛丼くらいならギリギリ行けるか。 なのに、BARには行けちゃうんだから不思議だ。 いやいや、前まではBARも行けなかった。 私は、車が一人一台ないと生活に困る田舎から、社会人になるタイミングで都会に出てきた。テレビもラジオもある、けどバスは来ねぇし、BARはねぇ。 そのくらいの田舎。

          バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯7