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バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯12

連絡から1時間が経過した頃、BARのドアが開いた。

白馬の王子様こと宮城さんは、私の大好物であるスーツとメガネを装備して、私の隣に来てくれた。

尊い。存在が尊すぎる。眼福すぎて宮城さんをつまみにラスティネイルをがぶがぶ飲んでしまいそうなくらい、幸せだ。

避けられてたと思ったが、本当に仕事が忙しかったらしい。
宮城さんは物腰が柔らかく、敵をつくらないような言い回しをする。そのため、“皆で飲みに行きましょう”も“あなたと二人きりでは飲みませんよ”という意味ではないらしい。
なんだ、避けられているのではないのか。

しかし、どうしたものか。
兎にも角にも、今宵もガンガン攻めるぞ!と言いたいところだが、次のステップに進む糸口が見つからない。

ふと宮城さんの携帯カバーが目についた。可愛い豚の絵が書いてある。クールな見た目とのギャップがすごい。

『可愛い豚さんですね』

「これは好きな絵描きさんの作品なんです。来週その絵描きさんが参加するフェスがあるんですけど、興味があるなら一緒に行きますか?」

こちらが拍子抜けするほどスマートな誘いを受けた。

宮城さんは、最初、私を恋愛対象として見ていなかった(と思う)。
なんの拍子か好きな歌手の話題になり、その話が盛り上がり、気が合う人として認識してくれたようだった。
そう、あの時たまたま調べた歌手の情報が非常に役に立った。期末試験でヤマが当てたときのような高揚感と、その歌手のこと調べておいて良かったという安堵感があった。

そして、ここからトントン拍子でことが動いていった。
どのくらいトントンしてたかというと、ひげじいさんをやろうとした瞬間に手がお膝にある状態。もう、本当にトントン。

翌週には二人きりでデザインフェスへ行き、
その次の週には彼の誕生日をお祝いさせてもらった。

雰囲気のいいレストランで、生演奏を聞きながら食事をして、ささやかだがプレゼントを渡すと「こんなことをしてもらうのは初めてだ」と喜んでくれた。

更に次の週。デートに誘われた。
3回目のデート。この日、私は告白されなくても、自ら告白をする心積りだ。

夜景のキレイなスポットで散歩をして、美味しいイタリアンを食べ、都心のBARでアルコールを...

浴びるほど飲んだ。

久方ぶりの告白をしようとする気持ちに緊張していたのもあるが、酒が美味しすぎた。完全なるおバカだ。

千鳥足を絵に描くと間違いなく私がモデルになるんじゃないかという本気の千鳥足で、宮城さんと公園を散歩することになった。

どうやら、告白は、してもらったらしい。
宮城さんも宮城さんだ。よくもこんな泥酔アラサー女に告白したものだ。

とにかく、白馬の王子様はついに乗馬訓練を終え、私を迎えに来てくれた。
あとは落馬せずにゴールするだけだが、さて、結婚はどうやったらしてもらえるのだろうか?

真面目なアラサーは、また、計画を書いた手帳とにらめっこする。

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