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バカマジメな私が逆ナンで結婚した話♯10

基本の“さしすせそ”というと何を思い浮かべるだろうか。

パッと思いつくのは調味料だろう。

昔、家庭科の授業で自信満々に
「砂糖、塩、酢、醤油、ソイソース!」
と言い、かなり笑われたことがある。
好きです、醤油。
本当はお味噌だけれども、頭文字じゃないからいつも間違える。

恋愛にも基本の“さしすせそ”がある。

さすがですね
知らなかった
すごい
センスあるね
そうなんだ

おい、やすこ。そんなの古いぜ!と言う人もいるかもしれないが、先人の知恵は侮れない。

なぜなら私はこの“さしすせそ”をこれでもかとばかりに使うようになってからBAR活がことさらスムーズになった。
もう、それはそれは、味をしめてから中毒症状がでるくらい、“さしすせそ”乱用者になった。

たいていの男性は、褒められることや興味を示してくれることに対して嫌な気分にはならないようだったし、私もカクテルをごちそうされることが多くなった。
運命の相手に使わない手はないだろう。

運命の相手こと隣の人とは、膠着状態のまま30分ほど経っていた。

私に話しかけるわけではなく、マスターと話すわけでもなく、携帯をいじっている。

唯一わかったことは、お酒が好きらしい。

初めて来た場所で、一杯目から癖のあるウィスキーをストレートで頼んでいた。

さて、何を切り口に話しかけるか。
会話が続かなかったことくらいでへこたれる私ではないのだ。

こんな時、美人のマスターが話をふってくれたりするのだが、今日はBARがいつになく賑わっており、マスターは忙しそうだった。

後ろの席は全て埋まっていた。
そして、さらに男性が1人入店したところだった。

「カウンターのみなさん、奥に一歩ずつ詰めていただけますか」

あぁ、美人なマスターよ。あなたは女神様か。
と、崇めたいくらいナイスタイミングで、隣の人との距離が近付いた。

隣の人の携帯が見えてしまった。
きれいな風景の写真をひたすら眺めているようだった。

『すごい素敵な風景ですね』

ダメもとで話しかけてみた。

「あ、携帯眩しかったですか?これ静岡の寸又峡ってところなんです」

『そんなきれいな場所があるんですね。寸又峡、知らなかったです。ご自身で撮影されたんですか?』

隣の人は初手の会話が嘘のように話してくれた。
写真を撮るのが好きで、休日は自分の足で色々なところを旅しているらしかった。

「撮った写真をフェイスブックにアップしてたんですよ」

『そうなんですね、見てもいいですか?』

そんなやりとりを経て、私はこう切り出した。

『写真をもっと見たいので、フェイスブックで友達になってもいいですか?』

合コンでコテンパンにされて、落ち込んでいた私からは想像がつかない行動だった。

男性に声をかけて、連絡先を聞く私。

平凡でドラマチックなことなんて私の人生に起こるはずないと思ってた。いや、思い込んでいた。

「いいですよ」

キター!はじめてのナンパ、成功じゃないか。

こうして結婚への第一歩がやっと、やっと、踏み出せたのである。

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