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赤子のモーニングルーティン

我、赤子。生まれて6ヶ月が経った。

私の朝は、おむつの在庫を確認するところから始まる。
布団のすぐそばに、おむつのパックがずらっと並んでいる。
それを右端から順に、在庫状況をチェックするため叩く。

“ペシペシペシペシ”

まだ部屋が薄暗い。静かな部屋に私の荒い息遣いとおむつパックの音が響き渡り、ハーモニーを奏でる。

今日も問題なさそうだ。
まだ豊富に在庫を抱えている。

そうとわかれば、次に母上を起こさなくてはならない。

私が起きているのに起きないとは、さぞかし疲れているのだろう。

だが、私には関係のないことだ。

まず、母上の顔の上にある“髪の毛”とやらを引っ張る。

「うぅぅっ」

おや、私の指に何本か髪の毛が絡みつく。
うめき声をあげたものの、母上はまだ起きない。

ならば、仕方ない。
おむつの在庫確認で鍛え上げた張り手を頬にくらわすまでだ。

“ペシンペシンペシンペシン”

母上、起きるのだ、私はもう、起きているであろう?

「いっ、いっ、いっ」

痛いなら起きればよいものを。
これでもまだ起きぬと言うのか。

ふと、母上の隣に置いてある板に気を取られる。
何が楽しいのか、母上は日中、板を手に取り、ニタニタしていることがある。

そういえば、板の中に“じぃじ”や“ばぁば”がいたっけな。

私は板を手に取り、床に叩きつけた。

“ガンッ、ガンッ、ガンッ”

不思議だ...じぃじもばぁばも出てこない。

「スマホ…壊れちゃ…うぅ」

板を投げると、今度は母上の分身らしい物体が照明に照らされ輝いていることに気がついた。

母上は、なぜだかこれを触らせてくれないのだ。

母上の顔を乗り越え、それを目指す。
途中、お腹の下からうめき声が聞こえたような気がしたが、まぁ、気のせいだろう。

あぁ、あと少し、手を伸ばすが届かない。

私は思い切り足に力を込めて、母上の頭を蹴り上げる。

...届いた!

喜びのあまり、透明な部分を舐めてしまった。
味はしない。
思いきり掴み、危ないものではないか、床に叩きつけて確認することにした。

“コンッ、コンッ、コンッ”

さぁ、そろそろくるぞ。

「あぁーやめてぇ、メガネはダメー、
壊れちゃうよぉー」

ようやく母上は目が覚めたようだ。

“おはよう母上

そして、おやすみ”

私のモーニングルーティン。
母上を起こして、二度寝をする。

今日も最高の1日になりそうだ。

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