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『女王ヴィクトリア』第5話

S1E5「世紀の結婚」/ An Ordinary Woman

ここではTVドラマ『女王ヴィクトリア』のあらすじを追っています
そして世界史の流れを意識しながら
ヴィクトリア朝について語っています
  *ネタバレ注意*
主に人物関係メモ中心です
*****

1819年 5月24日 女王ヴィクトリア誕生
1830年 伯父にあたるジョージ4世逝去を受けての
    もう一人の伯父にあたるウィリアム4世即位
これでイギリスの次期王位継承者であると決定になります
(1830年~1850年代末   チャーティスト運動)

1837年 さらにウィリアム4世逝去を受けての即位
    ▽この年からドラマはスタートしています
そして
1838年      戴冠式
         イギリスシムラ宣言で
             アフガニスタンに対し宣戦を布告
1839年      寝室女官事件
     アルバート公訪問
         プロポーズ
    ▼この後から◆第5話◆では扱っている流れです
1840年 2月10日 結婚式
         新婚旅行
    ▲4か月程かという期間ですね 
*****

冒頭のシーンは
プロポーズの翌日なのか
女王ヴィクトリアとアルバート公の会話のシーンから始まります

いつもザクセン=コーブルク=ゴータ公子アルバートの
兄エルンスト公が気を利かして
女王ヴィクトリアのおつきの女官を連れ出して
二人きりになるようにしてくれるんですが ほんといいお兄様ですね
女官の方も自分の役割はよくわかっていますから すぐこれに従うわけです
こういう時は 目的が周知されてさえいれば
皆納得して臣下でなくても気持ちよく協力できるものですよねー

というわけで お兄様との絆が いろんな場面でわかり
結婚は嬉しいけど 別れの辛い気持ちもひしひしと伝わるのです

この回からはいつもの
(どうしよう……二人っきりにされてしまった……)
という空気がなくて 今は 早く二人きりになりたかったのが叶った
という雰囲気が現れていて 
もうほんと良かった良かったと嬉しくなる冒頭です

同じようにカップルが連れ立って歩いていても
その関係というのは案外わかるもので 
この辺り二人の演技はうまかったですね
段々一時も離れたくない という雰囲気になっていくのも素敵です

                  *

アルバート公は
ザクセン=コーブルク=ゴータ公国の君主の家系出身で
ドイツ中部地方にあった公国です
つまりドイツ人がイギリス王国に婿入りすることになるわけです

アルバート公と結婚の意志を確かめ合ったものの
すぐアルバート公はイギリス国内での待遇を気にします

これからは
実家には多分帰ることはなく 通信手段も手紙程度の時代で
外国で暮らしていかなくてはならないのに
身分保障や自由がまだ全く不明なので 当然不安なのです

自分の家を出て 外の世界だけで生きるということなので
万が一 伴侶の心変わりがあったり
伴侶に先立たれるといった思いがけないことで
何もかもなくすような不安定な立場では
安心して暮らせませんよね
現在でも同じような例はありうるのではないでしょうか

兄のエルンスト公は
自国で次期君主予定の立場ですから これらの心配はないわけです

レオポルド叔父様に
財産もない状態なのだから 宮廷での立場を確保するよう
念を押されていますね
側近・爵位・年金を心配しなければならないのだとわかります

そして王族のお財布事情も
いとこ同志のカップルの共通の叔父様である
ベルギー王レオポルド1世の事も
わかるので興味深い回になっているなと思いました
 
                  *

実はこのレオポルド叔父様も
ある意味微妙な立場で 長くイギリスで暮らした人でした

だから甥っ子の
イギリス王室との結婚話の世話人にもふさわしかったのですが
第4話でちらっと述べられているように
正にイギリス王族と結婚して 伴侶に先立たれてしまったのです

女王ヴィクトリアの
先王ウィリアム4世のさらに前は
ジョージ4世の時代でした

このジョージ4世は摂政時代が長く まだ摂政時代の頃
このプリンス・オブ・ウェールズは結婚して娘ができました

このシャーロット王女は後のレオポルド1世をお気に召して
1815年に結婚しました
しかし二人の子供は不幸にして死産で
まもなくシャーロット王女もなくなってしまうのです
(この時点でまだジョージ4世の摂政時代だったのです)

イギリス王室に婿入りした立場で
このレオポルド叔父様は程なく
イギリス王室の跡継ぎの父親の地位を名乗れなくなりました
そしてイギリス王族の伴侶も失ってしまったのです

こんなことってあるんですね!

これでこのレオポルド叔父様の義理の父にあたる
後のジョージ4世は後継者をなくしてしまいました
王位継承者はジョージ4世の弟ウイリアム4世と決まっていくのです
さらにウィリアム4世の
次の王位継承者であった弟ケント公は亡くなっていたので
ケント公の娘ヴィクトリアが王位を継いだのでした

昔は死亡率が高いという事もありますし
自分の伯父様の子供たちが亡くなっていなかったら
ヴィクトリア公女はイギリスの女王にはなれなかったのです
そしてヴィクトリア女王の母方の家族は
昔からイギリス王室と非常に深い関係があったわけです

ここのお家だけでなくてヨーロッパ王室なんて皆親戚みたいなもんなんです

こうしてヴィクトリア女王の母方の
叔父レオポルドは伴侶を亡くした後も長くイギリスで暮らしました
結婚しても何が起こるか本当にわからないのを
身をもって体験した人ですし 説得力がありますね!
1817年に子供を亡くしてからも
身分保障と年金でずっとイギリスにいられたのです

その後ベルギーがオランダから独立したので これを受けて
1831年ベルギーの初代国王レオポルド1世になりました

なぜ長くイギリスにいたかの理由は 実は愛人がいたからなのですが
再婚については
王侯貴族は自由結婚ではないので条件が整わなかったのでしょうか
この愛人とは長く一緒にいて子供がいるという事実があるので
実際には事実婚の関係だと言えるでしょう

                  *

こういった愛人問題を
周りは女王ヴィクトリアに吹き込みます
もう大人になって結婚する年になったのだから仕方がないものの
自分の知らなかった家族の愛人問題が
自分以外のイギリス人達には有名な事だったのもショックですね

こうして議会は高額の年金の支出は渋るのです(叔父様のせいです)

しかし何とか叔父様の額には及ばないものの
側近・爵位・年金について
アルバート公に提示することはできたのです

愛人に年金を使いたいなんてとんでもない
アルバート公は ある程度の自由な立場としっかりした身分で
貴族院の議席をとって社会の役に立ちたかったので不満でした
真面目なアルバート公のこの不満も
愛人問題を気にする女王の不安も
よく話し合えて やっと二人は対等な気持ちになれたようで
無事結婚式は挙行されます

カップルがよく話し合うのがいかに大事か
これを結婚に躓いたと感じているメルバーン首相が話して聞かせる
のも説得力がありますねえ

このようにどーんーなー質問でも答えてくれる経験豊富な首相ですから
いつまでも側にいてもらって頼りにしたかったでしょうが
君主との関係にもほろ苦い終わりがやってきます

この他にもいろんな形の愛の関係が示される回になっています
側にいられる幸せやお互いが信頼し合っている安心できる関係について
大事にしていきたいなと改めて感じるエピソードがつまっています

                *

原題の An Ordinary Woman の意味は
「明日は普通の女性として結婚式に臨む」
と言う 実際には決して普通の女性ではなかった
女王ヴィクトリアの気持ちが表れているように思います

とはいえ荘重で感動的な結婚式でした

でもお式では威圧感のある冠ではなく花冠だったりして本当に可憐ですね
アルバート公へのいろんな配慮が感じられました 純白のドレスです!
ケーキをいただく頃には 親しい人たちでアットホームな雰囲気もあって
とっても幸せそうですね!
(叔父様は
 甥っ子の年金よりやはり愛人への慈善事業の方が大事みたいですが)

短いながらも
二人が本当に楽しい新婚旅行を過ごせたようで良かったです……

*****

(ああもうまたやきもきしちゃいましたよ)

https://www.imdb.com/title/tt5137338/
▲最新情報はIMDbデータベースで
https://www.mystery.co.jp/programs/victoria
▲現在シーズン1エピソードガイドが見やすい「AXNミステリー」Mystery

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