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「他者の苦しみを描く権利は誰にあるのか?」今年話題の1冊YellowFace

「他者の苦しみを描く権利は誰にあるのか?」今年話題の1冊YellowFace

今年5月に出版されると同時に35万冊が売れた、まさに今年話題の1冊を読みました。
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中国系アメリカ人Athenaは特大ヒットを記録し続けるベストセラー作家で、白人のJuneは辛うじて処女作の出版はできたものの全く売れないままスランプに陥った作家。

同じ大学で出会い、付かず離れずの距離で付き合いを続けていた2人でしたが、Athenaはある不幸な事故で死亡。たまたま事故現場に居合わせたJune

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明日、また明日、そして明日こそ、きっと世界は少しはくらいはマシなはずだ

明日、また明日、そして明日こそ、きっと世界は少しはくらいはマシなはずだ

昨年、英語圏の多くの読者が「今年のベストブック」に選書していた「Tomorrow And Tomorrow And Tomorrow 」読みました。
本のタイトルはシェイクスピアの「マクベス」に出てくる『トゥモロースピーチ』から来ていて、人生の中で成功していられる期間は短く、ピークが過ぎるとまるで何も成し遂げられなかったかのように忘れ去られる…というような内容。読了後、移り変わりの激しいゲーム業界

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監視社会がビックビジネスを成功させた未来。

監視社会がビックビジネスを成功させた未来。

ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ちの元ジャーナリストRob Hartの代表作「The Warehouse 」を読みました。最初の7割がジョージ・オーウォル(1984)、最後の3割がレイ・ブラッドベリ(華氏451度)、という感じで大変面白かったです。

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世界は疫病により荒廃。失業者が爆発的に増え、異常気象が悪化し「 Cloud 」という会社が支配的な力を持つようになりました。 地球最大規模

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助け合えない私たちが目指すものとは|「おいしいごはんが食べられますように」

助け合えない私たちが目指すものとは|「おいしいごはんが食べられますように」

名久井直子さんの装丁に惹かれて購入した「おいしいごはんが食べられますように」は今年の芥川賞を受賞。それは「口にしにくいことを言葉にしてくれてありがとう」という最高な一冊でした。

どこにでもいそうな人たちのありふれた日常が急に事件になる。

「女性」というものはこうあるべき、「仕事」というものはこうするべき、「ごはん」というものはこう食べるべき、という誰が決めたのかすら分からないルールが延々と積み

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