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連載百合小説《とうこねくと!》はじめまして、東子さま!(1)
みなさん、はじめまして。北郷恵理子です。
「神波東子です。これからよろしくね」
今日から、このお屋敷の主である奥さま──神波東子さまにお仕えすることとなりました。
「よろしくお願いいたします」
私は深々とお辞儀をします。顔を上げると、奥さまは優雅な笑みを浮かべていました。
黒いシースルーのブラウスに、ドット柄が入った藍色のスカーフ。黒のタイトスカートに黒タイツ。長い髪を後ろで縛って
連載百合小説《とうこねくと!》はじめまして、東子さま!(2)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
これから私が住むことになる2階のお部屋に荷物を置かせてもらい、私は1階の居間に通されました。フロアの真ん中に、4つの座布団が敷かれた大きめのテーブルがひとつ。テレビや戸棚があり、すぐそこには縁側もあります。
テーブルに向かいあわせで座る、東子さまと私。先程のこと──出会って数分での突然のキスもあり、私はさらに緊張して
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまvsパソコンvs私!?(1)
前話はこちらから↓
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「ねぇ、恵理子ちゃあん」
今、猫のように縁側に寝っ転がって、甘えたような声で私を呼ぶ奥さま──神波東子さまの付き人をやってます。
このお屋敷に来て、気づけば1週間が経とうとしています。東子さまとの生活は、私の中ではもうすでに自然なものになりました。
「どうしましたか、東子さま」
私は麦茶の入った2つのグラスとポット、おせんべい
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまvsパソコンvs私!?(2)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
東子さまとパソコンの戦いは続きます。
「それでは、インターネットで何か検索をしてみましょうか。ここにカーソルを合わせて、ダブルクリック……このマウスの左側を2回押してみてください」
「かーそるを合わせて、だぶるくりっく……」
東子さまは画面に覆い被さる勢いで前のめりになり、マウスを動かします。そして、ダブルクリック…
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(1)
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みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「恵理子! ホコリが残ってるわよ!」
今、鬼のような形相で、私の掃除した後をすみずみ厳しくチェックしている奥さま──神波東子さまの付き人をやってます。
どうやら東子さま、昨日のパソコン教室でのことをまだ怒ってらっしゃるようです……
「もっ、申し訳ございません……!」
ああ……東子さまをこんなに怒らせてしまって、私は何をしている
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(2)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
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翌日。東子さまと私は山間部の宿泊施設に向かいました。もちろん、私が運転手です。車内には、島谷ひとみさんの『ANGELUS -アンジェラス-』が流れています。車内の音楽はすべて東子さまのセレクトです。
「チェックインは15時よね」
「はい! ちょうど着きそうですね」
「陽子ちゃん、ちょっと遅れてくるみたいだから、宿に着い
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(3)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
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その後、お部屋に戻ってきた私たち。私は東子さまのお怪我の処置をしました。いざという時のために、大きいサイズの絆創膏を入れた救急箱を持ってきていて正解でした。
「ありがとう、恵理子ちゃん」
「いえ……傷口は痛みませんか?」
「ちょっとヒリヒリするけど……うん、大丈夫。ほんっと私ったらドジね」
ちょっと不謹慎だけど……そ
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(4)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
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翌朝、7時。
「東子さーん、恵理子ちゃーん、朝ですよー!」
「んん、ふわぁ……」
陽子さんの明るい声で、私は夢からさめます。
(うう……頭が痛い……)
昨日の夜は東子さまに日本酒をいっぱいすすめられましたし、それがまたとっても美味しいものですから、思わず飲み過ぎました。
「ん……ううぅ……」
地の底から這い上がっ
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(5)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
朝ごはんを食べ、9時を過ぎたあたりから、東子さまは回復してきたようです。
「東子さま、お身体の具合はいかがですか?」
「うん、もう大丈夫よ。ごめんなさい、迷惑かけちゃって」
「よかった……」
「恵理子ちゃん、これは……」
陽子さんはまだ戸惑っています。私は何も言えませんでした。
「黙っててごめんなさいね、陽子ちゃん」
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまがフルートを吹けば(6)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
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私たちは、白樺林に囲まれた離れにやってきました。
「今日はお日さまが気持ちいいわねぇ」
そうおっしゃって気持ちよさそうに伸びをした東子さまは、お屋敷から持ってきたフルートを組み立て始めました。東子さま、学生時代には吹奏楽部でフルートを吹いてらっしゃったそうで、今でも趣味で吹いているそうです。その演奏を聴くのは、私は初
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまの、裏切りのキス……?(1)
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みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「やーんもう可愛いっ! 可愛すぎるわぁ! もふもふ~!」
自宅の中庭で、まるで子供のように無邪気に秋田犬の赤ちゃんとふれ合っている奥さま──神波東子さまの付き人をしています。
「あーん! 何でこんなに可愛いのよキミは~っ! もふもふもふむふふ~っ♪」
……もふもふと言いながら「むふふ」とこぼしているのを、私はもちろん聞き逃しません
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまの、裏切りのキス……?(2)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
「う~ん、なんて可愛いの! 食べちゃいたいわねぇ~! むふふふふ~♪」
……東子さま、秋田犬の赤ちゃんを抱きかかえたまま、もはや「もふもふ」を忘れて「むふふ」と怪しげに笑っているだけになってしまっています。
「東子さまーっ! 飼い主さまがお見えになりました!」
私は、中庭ではしゃぐ東子さまに声をかけました。すると……
連載百合小説《とうこねくと!》東子さまの、裏切りのキス……?(3)
みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
前回のお話はこちらからどうぞ。
私と東子さま、西村さんと西條さんは、居間のテーブルに向かい合って座りました。そして、テーブルの上には……
「はぁん、美味しいっ……!」
東子さま待望の、キンッキンに冷えた期間限定夏みかんプリンアラモード、サマースペシャル……。先程の恥じらいはどこへやら、東子さまはその期間限定プリンにほっぺたを落として喜んでいます。